このアルバムの3つのポイント

R.シュトラウス 楽劇「ばらの騎士」 クライバー/バイエルン国立管(1979年)
R.シュトラウス 楽劇「ばらの騎士」 クライバー/バイエルン国立管(1979年)
  • ばらの騎士の定盤!
  • ジェットコースターのようなスリル
  • 指揮・オーケストラ・歌手・演出・舞台の全てが豪華

カリスマ指揮者、カルロス・クライバー。録音嫌いだったクライバーは、評判の割にあまりレコーディングの数は多くないのだが、彼が遺した演奏はどれも熱狂を持って受け入れられている。

今回紹介する「ばらの騎士」は、クライバーが何回も演奏した十八番の作品で、海賊盤も含めると録音も多い。バイエルン国立管で1972年4月20日に演奏したCDや1973年7月13日に演奏したライヴの正規盤CD、今回紹介する1979年の映像作品の正規盤、ミラノ・スカラ座と1976年5月4日に演奏したCD、アメリカのメトロポリタン歌劇場と1990年10月に演奏したCD、そしてウィーン国立歌劇場と1994年3月に演奏した正規盤DVDなどがある。

今回紹介するのは、2020年9月にユニバーサルミュージックからリリースされたDVD。「クラシックDVD名盤セレクション2020」というタイトルで、クライバー指揮のバイエルン国立管の1979年5月、6月の公演のDVDだ。2枚に分かれているのだが、どうせならBlu-rayでリリースして1枚に収めて欲しかったのというのが希望。

このオペラは3幕に分かれているのだが、カルロス・クライバーは聴衆からの拍手に迎えられてピットにスタンバイすると、拍手がまだ途中なのにいきなり指揮棒を振り上げて音楽を開始させる。1幕だけではなく3幕の冒頭全てだ。これがクライバー流なのだろうが、だいぶせっかちな感じがする。拍手をかき消すように、突然ジェットコースターのような演奏を始めるのだ。1978年の「フィデリオ」のときのレナード・バーンスタインは、演奏を始めようと思ったところに聴衆からの再びの熱い拍手で指揮棒を止めてまた挨拶をして、拍手が鳴り止むのを待ってから演奏を始めていた。同時期のカリスマ指揮者だが、バーンスタインのほうが大人な対応をしていたことが分かる。

拍手の途中でジェットコースターのように指揮をするカルロス・クライバー。(c) ユニバーサルミュージック
拍手の途中でジェットコースターのように指揮をするカルロス・クライバー。(c) ユニバーサルミュージック

第1幕はオクタヴィアンと、彼に燃え上がる恋をするヴェルデンベルク侯爵夫人の物語。ソプラノのギネス・ジョーンズが侯爵夫人を務めているのだが、衣装が胸を強調しすぎている。歌声は良いのだが、見ていて不快感すら感じる。全体的に衣装は豪華なのだが、現代の目から見るとフェミニン過ぎるところもある。

第1幕は侯爵夫人が目立ち過ぎて、主役のはずのオクタヴィアン(歌手はブリギッテ・ファスベンダー)が存在も歌も地味だ。

第2幕ではオクタヴィアンとゾフィーの出逢い。ゾフィー役はルチア・ポップ。二重唱ではルチア・ポップの高音の美しい歌声がすごい。R.シュトラウスらしい官能的な歌を聴かせる。

ばらの騎士 第2幕で二重唱を歌うオクタヴィアンとゾフィー
ばらの騎士 第2幕で二重唱を歌うオクタヴィアンとゾフィー。(c) ユニバーサルミュージック

第3幕では、オクタヴィアン、ゾフィー、ヴェルデンベルク侯爵夫人の終幕の三重唱がすごい。ゾフィーに自分の想いを告げたオクタヴィアン。それを最初は拒否しながらもついに受け入れたゾフィー。そしてそんな若い二人からそっと去っていく侯爵夫人。それぞれの複雑な思いが官能的な三重唱という形になっていく。

ばらの騎士の三重唱を歌うオクタヴィアン、ゾフィー、ヴェルデンベルク侯爵夫人。(c) ユニバーサルミュージック
ばらの騎士の三重唱を歌うオクタヴィアン、ゾフィー、ヴェルデンベルク侯爵夫人。(c) ユニバーサルミュージック

カルロス・クライバー得意の「ばらの騎士」の演奏で、映像もクリアに見られるし、歌手の歌声もクリアに聴こえる。このオペラの定盤と言って良いだろう。

オススメ度

評価 :4/5。

ヴェルデンベルク侯爵夫人: ギネス・ジョーンズ(ソプラノ)
オックス男爵:マンフレート・ユングヴィルト(バス)
オクタヴィアン:ブリギッテ・ファスベンダー(メッゾ・ソプラノ)
ファニナル:ベンノ・クシェ(バリトン)
ゾフィー:ルチア・ポップ(ソプラノ)
指揮:カルロス・クライバー
バイエルン国立管弦楽団
バイエルン国立歌劇場合唱団
演出:オットー・シェンク
演奏:1979年5月, 6月, バイエルン国立歌劇場(ライヴ)

【タワレコ】R.シュトラウス:楽劇≪ばらの騎士≫(DVD, 限定盤)

特に無し。

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