このアルバムの3つのポイント

ショスタコーヴィチ&チャイコフスキー交響曲第6番ロ短調 マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団(2014年)
ショスタコーヴィチ&チャイコフスキー交響曲第6番ロ短調 マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団(2014年)
  • ショスタコーヴィチとチャイコフスキーのロ短調の交響曲第6番
  • マリス・ヤンソンスとバイエルン放送響のライヴ録音
  • 磨き上げられた極上のサウンド

今日はマリス・ヤンソンスバイエルン放送交響楽団のレコーディングを紹介します。ドミトリ・ショスタコーヴィチピョートル・チャイコフスキーというロシアの2大作曲家の交響曲第6番、しかも同じ調性のロ短調を収録したものです。

バイエルン放送交響楽団と「新世界より」を指揮するマリス・ヤンソンス(2014年)
バイエルン放送交響楽団と「新世界より」を指揮するマリス・ヤンソンス(2014年)

ショスタコーヴィチの交響曲第6番は、第5番と第7番「レニングラード」という有名な交響曲の間にあたり、あまり人気がないです。3つの楽章から成る曲ですが、第1楽章がラルゴのロ短調、第2楽章がアレグロのト長調、第3楽章がプレストのロ長調で、徐々にテンポが上がる構成で、第1楽章が最も長く、後半はバランスが悪く、短くあっさり終わります。ヤンソンスとバイエルン放送響の演奏でも第1楽章が15:41、第2楽章が6:21、第3楽章が7:47。脈絡のない楽章のつながりは、音楽批評家から「形式主義」と疑われるようになり、失敗したことに気付いたショスタコーヴィチは続く第7番「レニングラード」で起死回生を狙いました。

一方で、チャイコフスキーの第6番は「悲愴」という副題も付いていて、チャイコフスキー最後の交響曲としても人気が高く、オーケストラの定番中の定番の曲。

同じロシアの作曲家で、交響曲の番号も同じ、さらに同じ調性とは言え、タイプの異なるこの2作品を並べて1つのアルバムにするとはヤンソンスとバイエルン放送響も考えましたね。

ヤンソンスは2004年のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者就任直後にベートーヴェンブラームス交響曲第2番(どちらもニ長調)をライヴ録音していますが、こうした数字と調性のつながりにこだわりがあったのでしょう。

2013年春のヤンソンスとバイエルン放送響

2012年12月2日までベートーヴェン・チクルスで来日公演をおこなっていたヤンソンスとバイエルン放送響。翌年は2013年1月12日にパリのシャンゼリゼ劇場でメシアンのトゥーランガリラ交響曲を演奏した後は3月までこのコンビでのコンサートはなく、3月8日・9日のガスタイクでのベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番(ピアノ独奏はラン・ラン)、ベルリオーズの幻想交響曲、3月14・15日のガスタイクと23日のルツェルンでのブリテンの戦争レクイエムを演奏した後、ショスタコーヴィチの交響曲第6番を中心のプログラムを披露しています。

3月21日がヘラクレス・ザール、3月26日がアムステルダム・コンセルトヘボウでは前半がショスタコーヴィチの交響曲第6番、後半がプロコフィエフのロメオとジュリエットOp.64、ストラヴィンスキーの火の鳥 (1919年版)、そして3月24日がルツェルン・コングレスセンターでショスタコーヴィチの第6番とベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。3月29日のモスクワ、チャイコフスキー音楽院ではショスタコーヴィチの第6番とベルリオーズの幻想交響曲。

さらに2013年6月6日・7日のフィルハーモニー・イン・ガスタイクで前半がシューマンのチェロ協奏曲(ヨーヨー・マ)、後半がチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。そして8月3日のハンブルグ・ライスハレ、8月4日ザルツブルクの祝祭劇場で前半がショスタコーヴィチの第6番、後半がチャイコフスキーの第6番という「第6」プログラム。

このCDでは、録音日が3月18日から21日となっていますが、記録上では21日のみ、のショスタコーヴィチの6番と、録音日が6月4-7日となっていますが、記録上では6月6、7日の「悲愴」が収録されています。

ヤンソンスが「ドイツのオーケストラなのにショスタコーヴィチがこんなにうまく演奏できるとは」と驚いたのがバイエルン放送響。EMIでのショスタコーヴィチ交響曲全集では第6番が1991年にオスロ・フィルハーモニー管弦楽団と録音したものが収録されていましたが、2013年のヤンソンスの解釈はさらに精緻になっており、今回はさらにバイエルン放送響の自発性もあり、ライヴ録音とは思えない完成度の高さです。特に第1楽章ではゾクゾクとする雰囲気が終始漂っています。第2楽章ではスケルツォ風の駆け巡る音楽ですが、ここでもバイエルン放送響の響きが混じりっけ無しの澄み切ったサウンドで盛り上げます。第3楽章はショスタコーヴィチが愛したロッシーニの「ウィリアム・テル」のようなファンファーレが含まれていますが、ヤンソンスとバイエルン放送響は軽やかさとアンサンブルでの緻密さを併せ持ち突き進みます。完成度が高い演奏でしょう。

一方のチャイコフスキーの「悲愴」については、こちらで紹介した2004年6月のライヴ録音もありますが、それから9年経ってヤンソンスとバイエルン放送響の親密度は深化し、ヤンソンスの解釈はさらに精緻に、そしてバイエルンのハーモニーもより自然になってきています。第4楽章の弦のアンサンブルが実に美しく、そしてラインが揃っています。

ヤンソンス&バイエルン放送響の黄金コンビによる、ロシアの2大作曲家の交響曲第6番ロ短調。ヤンソンスとバイエルンの深化を感じさせる珠玉の1枚です。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:マリス・ヤンソンス
バイエルン放送交響楽団
録音:2013年3月18-21日, ヘラクレス・ザール(ショスタコーヴィチ, ライヴ)
2013年6月4-7日, フィルハーモニー・イン・ガスタイク(チャイコフスキー, ライヴ)

Apple Music で試聴可能。

特に無し。

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