ブルックナー交響曲第8番 ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1979年6月4日 アイキャッチ画像

このアルバムの3つのポイント

ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ブルックナーDVD
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ブルックナーDVD
  • カラヤンとウィーンフィルの円熟時代の始まり
  • カラヤンこだわりのハース版のブル8
  • ブルックナーゆかりの聖フローリアン修道院での演奏

ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908-1989年)は幅広いレパートリーを持っていましたが、同じオーストリア出身の作曲家アントン・ブルックナーは生涯追い求めた存在でした。

交響曲第8番についてはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と1957年のEMI (現ワーナー)でのセッション録音、1966年5月の東京文化会館でのライヴ録音、同年6月のオランダ音楽祭@コンセルトヘボウでのライヴ録音、交響曲全集で最初にレコーディングした1975年1月と4月でのセッション録音、そしてウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とは1988年11月のセッション録音があります。またCD 化はされていないですがウィーンフィルとの1979年6月の聖フローリアン修道院での演奏会の映像もありますし、さらに1987年11月の録音は同時期に映像も撮影されてDVD化されています。

今回紹介するのは1979年6月の聖フローリアン修道院ライヴ。以前の記事でDVD 2のほうの交響曲第9番とテ・デウムを紹介しました。今回はそのDVD 1の交響曲第8番についてです。

ブル8 は50年代のベルリンフィルとのものはストレートすぎるし、全集の75年のセッション録音はシンフォニックに響かせようとテンポがややゆったりとして演奏会ならではのカラヤンの推進力が削がれている感じがしますし、最晩年の88年の録音は目を開いて演奏者のほうを見ているので人間味があり、倍管で響きのシンフォニックな響きを求めた集大成ではありますが、指揮も動きがこじんまりとしていて流れが滞り音楽的に弛緩するところがあります。カラヤンのブル8で満足しなかった私が、この1979年の映像を見て考えが変わりました。「カラヤンのブルックナーはこれだ!」と。

1978年から79年にウィーンフィルと注力したブル8

1964年にウィーン国立歌劇場の総監督を辞して喧嘩別れの状態となったカラヤンは以後ウィーンフィルとの活動をレコーディングとザルツブルク音楽祭だけに制限しています。

本拠地のムジークフェライン・ザールの演奏会で久しぶりに指揮したのが1978年5月7日と8日でこのときにはブルックナーの交響曲第9番とテ・デウムを演奏しています。そして7月29日、8月3日、8月15日のザルツブルク音楽祭ではブルックナーの交響曲第8番を演奏し、翌年も1979年5月12日、13日がムジークフェラインザールで演奏し、そして今回紹介するDVD の6月4日が聖フローリアン修道院で演奏でした。

つまりこのカラヤンのブル8は1978年から79年にウィーンフィルに客演して注力したときの集大成になります。

アントン・ブルックナーが生前にオルガニストとして活躍し、没後は遺体がその地下墓所に埋葬されたオーストリア、リンツにある聖フローリアン修道院Wikipedia ではザンクト・フローリアン修道院となっています。

確かに聖フローリアンでムジークフェライン・ザールに比べると音響は良いとは言えないでしょう。カメラワークも良くないです。映像の画角が狭くて、また、固定されたカメラもアングルが決まっているので楽器は見えるけど演奏者の顔が見えないこともあります。

それでもこの演奏はまばゆい光を放っています。

これぞカラヤンのブルックナー

演奏前の拍手無しでカラヤンが入場し演奏が始まります。また演奏後の拍手も無音にされているのですが、直後にスタンディングオベーションをしている人もちらほらいるので当時も相当の名演だったのは間違いないでしょう。

目を閉じて暗譜で指揮をおこない、ギリシャの彫刻のような引き締まった筋肉と美しさ。まさにカラヤンの頂点といえます。映像しかなくてCD 化されていないのが惜しいです。またカラヤンこだわりのハース版によるスコアなので、第3楽章でフォルテッシモとフォルテッシモの間をつなぐところで漂うような旋律が登場します。

かなり手前から撮影されたので引き伸ばすと画質は悪いのですが、ティンパニは2人います。通常は1人なのでカラヤンならではの増強が図られています。またトランペットも4人なので1人増やしています。これは1988年11月のウィーンフィルとの再録音でも同じでした。

極めつけは第1楽章の展開部の第1主題、映像では6:28あたりから始まるフレーズ。ヴァイオリンの高音のトレモロがキラキラとしたヴェールのように輝き、その上にホルン、続いてオーボエのコラールが響き、極上の美しさです。また第4楽章の再現部では第1楽章の第1主題が回想されるのですが、その際のカラヤンの表情が何とも苦痛そうなのですが、それが終わり静まるうちに穏やかな顔になるのが印象的です。

カラヤン壮年期に映像で遺されたブルックナーの8番。CD 化はされていないですが、カラヤンのブルックナーといえば私はこれをオススメします。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1979年6月4日, 聖フローリアン修道院 (ライヴ)

特に無し。

特に無し。

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