モノラル時代に思いを馳せて
ハイレゾ音源が当たり前のように聴けるようになっていて音質の面では間違いなく現代のほうが上ですが、演奏家の「味」はそうはいかないもの。たまには巨匠と言われた演奏家の録音も聴きたくなりますね。今回は紹介するのは今から70年以上前のものです。
ドイツ出身の巨匠ピアニスト、ヴィルヘルム・バックハウスは、「鍵盤の獅子王」と呼ばれたほど強靭な打鍵とテクニックの持ち主でした。
オーストリア出身の名指揮者カール・ベームとモーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスでピアノ協奏曲の録音も遺していますが、今回紹介するのは1953年6月のブラームスのピアノ協奏曲第1番。

当時のウィーンフィルはデッカ・レーベルと契約していたので、この録音もデッカから出ています。ゾフィエンザールを使う前のものなので、レコーディング場所はムジークフェラインの大ホール。ステレオではなくモノラル録音になります。
フーガの構築美
第1楽章第1主題での高弦の悲痛さや、低弦とのフーガをくっきりと浮かび上がらせた解釈は後のベームの再録音では感じなかった今回の特徴。ただ、セッション録音ならでは楽器の緻密さや残響まで考慮したテンポの取り方はベームならでは。
ゾフィエンザールだったらもっと一音一音がくっきり聴こえただろうとは思いますが、本拠地ムジークフェラインでの演奏はウィーンフィルの音が一つに混ざり合うようです。
バックハウスのピアノはビロードのように滑らかで、モノラル録音なのでモヤが掛かっているような感じもありますが、鍵盤の獅子王とはイメージの違うロマンティックさを感じます。アダージョでの心の吐露や、第3楽章でのスリリングな展開を耳にすると、音質はややいまいちでも一聴する価値が大いにある録音だと思います。
オススメ度
ピアノ:ヴィルヘルム・バックハウス
指揮:カール・ベーム
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1953年6月, ウィーン楽友協会・大ホール
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。
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