このアルバムの3つのポイント
- ハイティンク&コンセルトヘボウ管には当時珍しかったライヴ録音
- スッキリとしたバランスの整った第九
- ライヴらしからぬ落ち着きとライヴならではの熱さ
ハイティンク/コンセルトヘボウ管の1980年のライヴ録音
ベルナルト・ハイティンクは当時、首席指揮者を務めていたロンドン・フィルハーモニー管弦楽団と1974年から1976年にベートーヴェンの交響曲全集を録音した。ハイティンクは同時にアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(1988年以降の名称はロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)の首席指揮者も務めていたのだが、自身初のベートーヴェン交響曲全集をコンセルトヘボウ管よりも先にロンドン・フィルで行ったことは興味深い。コンセルトヘボウ管とは1985年から1987年に掛けて録音しており、こちらは日本でレコードアカデミー賞を受賞するなど、名演の誉れが高い。
ただ、膨大な録音があるベルナルト・ハイティンクには、コンセルトヘボウ管との1980年の第九のライヴ録音もある。今でこそRCO Liveなど、オーケストラの自主レーベルがライヴ録音をリリースするのが当たり前になっているが、当時はハイティンクはもっぱらスタジオ(セッション)録音がメインで、ライヴ録音なんて本当に少なかった。
タワーレコード限定で20年ぶりに再販売
ハイティンクは当時、フィリップスレーベルに所属しており、ロンドン・フィルやコンセルトヘボウ管との録音もフィリップスからリリースされていた。2007年にフィリップスのクラシック部門がデッカの傘下に入ることになり、2009年からはフィリップスのロゴも使用停止となりデッカのロゴでリリースされるようになった。クラシック音楽のレコード会社では、人気のあったレコーディングを10年くらい経ったら再発売することもよくあるのだが、フィリップスの音源も90年代後半や2000年代初頭にフィリップスレーベルで再発売されていたが、2010年代以降にそうしたCDは軒並み売り切れ、廃盤となった。そして全てがデッカで再発売されているわけではなく、特にハイティンクの録音は評価が高いのに廃盤で聴けない、ということも多々あった。
例えば、1981年〜1984年のコンセルトヘボウ管とのシューマンの交響曲全集。4曲とも完成度が高い全集は名盤として音楽専門誌でも紹介されていたのだが、私は廃盤のためCDを入手することができなかった。2013年にタワーレコードが限定販売として再リリースしてくれたので、ようやく聴くことができたのだが、これ以外にもハイティンクの録音はタワーレコードが力を入れて再リリースをしてくれている。ブルックナーの交響曲第7番(1978年)、第8番(1981年)や、この1980年のライヴ録音もそうだ。
ライヴ盤らしからぬ落ち着きとライヴならではの熱さ
ハイティンクはライヴでもスタジオ録音のときとアプローチを変えていない。テンポはゆったり取っているし、勢い重視というよりも冷静に音の一つ一つの響きを精緻におり紡いだ感じ。ハイティンクならではのバランス感覚がはっきりと分かる。前半はややパワーや凄みには欠ける中庸な感じがするが、最後のほうでは熱さが出てきている。
第2楽章はコンセルトヘボウ管の名技が聴き所。長く続くユニゾンでも高い集中力で一糸乱れぬアンサンブルを聴かせてくれる。
第3楽章は文句無しに絶品。
第4楽章などは、ライヴ盤とは思えないほどの整ったバランス。楽器のそれぞれの音の強弱が緻密に整えられ、立体的に聴こえる。声楽とコーラスが入っても情熱的に突っ走ることなく、あくまで一歩引いた冷静沈着な音楽を作っている。コーラスがただうるさいだけの演奏も少なくない中、このバランス感覚は素晴らしい。
まとめ
ハイティンクならではのバランス感覚を堪能できる第九。珍しいライヴでの演奏も面白い。そしてあくまで作品が主人公で、変な個性を入れたりしないハイティンクの演奏は安心して聴ける。
オススメ度
ソプラノ:ジャネット・プライス
アルト:ビルギット・フィニレ
テノール:ホルスト・ラウベンタール
バス:マリウス・リンツラー
アムステルダム・コンセルトヘボウ合唱団
指揮:ベルナルト・ハイティンク
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音:1980年10月16-19日, コンセルトヘボウ(ライヴ)
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特に無し。
受賞
特に無し。
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