このアルバムの3つのポイント
- リッカルド・シャイーのマーラー交響曲全集の終盤の録音
- 99分という壮大なスケールで描くマーラー
- オランダのエジソン賞を受賞
リッカルド・シャイーのマーラー交響曲全集
昨日の記事でリッカルド・シャイー指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のマーラー交響曲第9番(2004年)のレビューを書きましたが、この勢いで同じコンビのマーラー交響曲第3番(2003年)についても書いてしまおうと思います。
リッカルド・シャイーは1986年にベルリン放送交響楽団(現ベルリン・ドイツ交響楽団)とマーラーの交響曲第10番を録音し、コンセルトヘボウ管の首席指揮者になってから1989年に交響曲第6番「悲劇的」を録音して全集を再開。2004年の第9番で最後を締めくくりました。
99分の壮大なスケール
シャイーとコンセルトヘボウ管が交響曲第9番の一つ前に録音したのが、2003年5月の交響曲第3番。マーラーの交響曲でも屈指の長さを誇る作品ですが、シャイーとコンセルトヘボウ管はなんと99分も掛かっています。
第1楽章が34分47秒、第2楽章が9分38秒、第3楽章が17分25秒、第4楽章が10分11秒、第5楽章が4分18秒、そして第6楽章が22分50秒。トータルで99分09秒です。特に第1楽章に時間を掛けて、じっくりと描いています。
マーラーを得意とするコンセルトヘボウ管ですが、この第3番でもスケールの大きな演奏を聴かせてくれます。ただまろやかなだけではなく、時にはハッとするような牙を剥くような荒々しさも出しています。
第2楽章ではシャイーは一つ一つのフレーズを丁寧に描いていきます。1980年代や90年代はまだまだ若さが残る指揮だったシャイーですが、2000年代以降は巨匠への道を歩んで一皮むけたような風格があります。
第3楽章では聴きやすい音楽を作っていません。尖った演奏をさせて、敢えて耳に残るようにシャイーは演奏させています。混沌と強音で奏でられるカオスが悲劇を際立たせます。
オーケストラに比べると歌は今一つ?
第4楽章ではメゾ・ソプラノのペトラ・ラング(Petra Lang)が登場。ヴァーグナーやマーラーの作品で高い評価を受けている歌手で、2005年からバイロイト音楽祭でもヴァーグナーの楽劇を歌っています。ただ、この第4楽章では歌声が暗くてあまり良い印象を受けません。
第5楽章では合唱と児童合唱が入るのですが、オーケストラ(コンセルトヘボウ管)の演奏に比べるとややレベルが落ちるかなと思いました。
締めくくりの第6楽章では穏やかに始まりますが、クライマックスでは荒々しく、マーラーが神と対峙しているかのような圧倒的なスケールを感じます。
まとめ
リッカルド・シャイーがコンセルトヘボウ管を指揮して99分にも及ぶ壮大なスケールで描いたマーラーの交響曲第3番。一つの一つのフレーズが丁寧に描かれていて、コンセルトヘボウ管のポテンシャルもすごさを感じます。
オススメ度
メゾ・ソプラノ:ペトラ・ラング
指揮:リッカルド・シャイー
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
プラハ・フィルハーモニー合唱団
オランダ児童合唱団
録音:2003年5月5-9日, コンセルトヘボウ
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
2005年のオランダのエジソン賞「管弦楽曲」部門を受賞。
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