このアルバムの3つのポイント
- シカゴ響とショルティの黄金期の演奏
- ドラマティックな幻想交響曲
- 米グラミー賞で三冠を受賞
黄金時代の録音にもう一つの名盤
今回紹介するのは、サー・ゲオルグ・ショルティ指揮シカゴ交響楽団のエクトル・ベルリオーズの幻想交響曲。1972年5月にイリノイ州のクラナート・センターで録音されたものです。
ショルティのシカゴ響は1970年代前半にクラナート・センターでの録音を多く行っていますが、1971年5月のマーラーの交響曲第7番「夜の歌」や1972年5月のベートーヴェンの第九、ヴラディーミル・アシュケナージとのベートーヴェンのピアノ協奏曲全集など、米国グラミー賞を受賞した録音ばかり。その中でもこの「幻想交響曲」もグラミー賞の「ベスト・クラシカル・アルバム」を含む三冠を受賞した名盤です。最優秀オーケストラ、器楽、合唱などの部門から1つだけ選ばれるベスト・クラシカル・アルバムになる時点で二冠を取っていることになりますが、さらにこの録音はデッカの敏腕オーディオエンジニアだったケネス・ウィルキンソン(Kenneth Wilkinson)がグラミー賞の最優秀技術賞(Best Engineered Album, Classical)も受賞していますので、三冠です。
ショルティとシカゴ響の初期の録音は他にもマーラーの交響曲第5番や第6番「悲劇的」、第8番「千人の交響曲」などもあって名盤揃いですが、受賞歴で言うとこの幻想交響曲はその代表とも言えるでしょう。
このアルバムには幻想交響曲Op.14と、同じくベルリオーズの序曲「宗教裁判官」Op.3が収録されています。私は2007年にリリースされた20世紀の巨匠シリーズ「サー・ゲオルグ・ショルティの芸術 Vol.1」で聴いていますが、残念ながらCDではこの録音は廃盤になってしまっています。
なお、ショルティとシカゴ響の幻想交響曲は、1992年ザルツブルクでのライヴ録音もあります。
鳴らし切ったオーケストラと溢れる躍動感
幻想交響曲は第1楽章:夢と情熱、第2楽章:舞踏会、第3楽章:野の風景、第4楽章:断頭台への行進、第5楽章:魔女の夜宴の夢の5楽章から成る曲です。ベルリオーズが26歳だったときに作曲されたもので、ベルリオーズ自身がある女優に狂おしいほどの恋をして失恋したときの体験を音楽化したもので、若い芸術家が自殺を図るも死に切れず仮眠状態になり様々な夢を見た、というのがベルリオーズ自身が寄せたこの曲の説明です。
ショルティとシカゴ響は、第1楽章の序奏でたっぷりとロマンティックに描き、アレグロに入ると活き活きとします。ショルティらしくリズムは正確に刻んでいて、アンサンブルでのトゥッティでもキレがあってオーケストラが一団になっています。
第2楽章では渦巻くような低弦のトレモロが劇的な効果を生み出しています。ワルツに入ると本当に美しい。
第3楽章では静から動への変化が激しいですが、特にクライマックス(8分17秒〜)でのスケールの凄まじさに驚かされます。第4楽章の断頭台は不気味な中にもキビキビとした動きがあり、最後の第5楽章では様々な情景を見事に描き分けています。
まとめ
ショルティとシカゴ響の初期の代表的な録音。タイトで精緻なアンサンブルでオーケストラを鳴らしきった名演です。
オススメ度
指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
シカゴ交響楽団
録音:1972年5月, クラナート・センター
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廃盤のため無し。
試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
1975年米国グラミー賞「ベスト・クラシカル・アルバム」、最優秀オーケストラ部門及び最優秀技術部門を受賞。
コメント数:2
学生オケで演奏した思い出深い曲です。当時「お手本」として近場のショップの、狭いクラシックコーナーの、限られた選択肢の中から、なけなしのお金で購入したのは、デュトワ&モントリオールと、アバド&シカゴでした。どちらも好きな演奏でした。このショルティ&シカゴの演奏も、自分のイメージにドンピシャでした。第1楽章の序奏部分から一気に世界に引き込まれました。第2楽章の華やかさの中で、恋人のテーマが出てきたときの切なげな感じもよかった。第3楽章コールアングレとオーボエの対話にはただただ聴き入りました。第4楽章はシカゴ響のために書かれたのではと思うほど。最終楽章は後半の低弦から始まるロンドの迫力とキレがすごいと思いました。Apple Music のリンクのアルバムで、一緒に入っていた小品集も良く「宗教裁判官」はブラスに圧倒されました。「セビリアの理髪師」は、コミカルでウィットに富んだメロディーが楽しい。バッハの「アリア」が一服の清涼剤。そしてガンガン来るアメリカ企画もの「星条旗よ永遠なれ」「アメリカ国家」「がんばれ、シカゴベアーズ」と続きましたが、演奏時間トータル 84分って、お得ですが、1枚に詰め込みすぎでは?と心配になりました。
懐かしいレコードジャケットに出会えました。このLPレコードを購入したのは中学生の時。小遣いをためて、確か購入価格は¥2,300だったと記憶しています。
タスキって言うんですか?帯に「おそろしい幻想だ、これほど・・・」と言う文言が、半世紀近く経った今でも脳裏に刻まれています。ヘタなデジタルより良い音だと思います。無論、演奏は最高。私としてはミュンシュ?です。