来日リサイタルは10年ぶりのユジャ・ワン

先日はユジャ・ワンのピアノ・リサイタルを聴いてきました。世界最高峰のピアニストの一人である彼女の来日リサイタルは何と10年ぶり。協奏曲でのソリストは度々務めてきましたが、リサイタルとしてはかなり久しぶり。6/8の大阪ザ・シンフォニーホール、6/10の横浜みなとみらいホール、6/15の東京サントリーホールの3公演でした。

【カジモト】ユジャ・ワン ピアノ・リサイタル2026

サントリーホールのほうが近いので第一候補だったのですが、チケットぴあで発売初日に数分で東京も横浜もソールドアウト。主催のカジモトのサイトに移って東京公演を取れるかと思ったら、手続き中にソールドアウト。代わりに横浜公演のチケットを取れました。結果的にはものすごく良い席で聴くことができました。

横浜公演を聴く。曲目は当日発表。途中休憩無し、曲間の拍手も無し

このリサイタルは実にユニーク。曲目は当日発表するというもので、何を演奏するか分からない状態で「ユジャ・ワン」という期待値だけでチケットを購入しました。昨年11~12月のクリスチャン・ツィメルマン (紹介記事)も曲目未定でしたし、4月に来日したアンドラーシュ・シフも東京公演以外は曲目を明かさず当日発表するというスタイルでしたね。

そして5日前にカジモト・イープラスから来たメールでは、音楽のつながりを感じてもらいたいので、途中休憩は無し、曲間の拍手も無しで、という指示がありました。ユジャ・ワンのこだわりを感じます。

当日発表すると言っても、開演前に購入できる1冊千円のプログラムにも曲目は書かれていません。結局は事前情報が無いまま演奏を聴くことになったので、曲の説明とか作曲の背景とかを知らずに音楽を味わう、ということに。

あと、カーテンコールも含めて写真撮影NG が徹底されていたので、本人の写真は撮れていません。

満員のみなとみらいホールで

3公演ともチケット完売と大盛況でしたが、みなとみらいホールも満員。

開演前の横浜みなとみらいホール (2026/06.10)
開演前の横浜みなとみらいホール (2026/06.10)

曲目は上記のカジモトのサイトから3公演それぞれの曲目が書かれているリンクに飛べますが横浜公演では以下の曲目でした。

  • D.スカルラッティ:ソナタ へ短調 K.466 L.118
  • グラス:エチュード第6番
  • ショパン:ノクターン ハ短調 op.48-1
  • グバイドゥーリナ:シャコンヌ
  • ラヴェル:「鏡」から 鐘の谷
  • メンデルスゾーン(ラフマニノフ編):劇音楽「夏の夜の夢」 op. 61から スケルツォ
  • ラフマニノフ:前奏曲集op.23から 第4番 ニ長調 / 第5番 ト短調
  • アデス:オペラ《パウダー・ハー・フェイス》による演奏会用パラフレーズ
  • ラヴェル:ラ・ヴァルス

19時開演ですがアナウンスが長めで中々登場してこないので固唾を見守る聴衆の前に、ようやく鮮やかな紫色のドレスと金のハイヒールのユジャ・ワンが登場。特徴である短いお辞儀をすると19時15分からリサイタルが開始。暗譜ではなく、タブレットで譜面を表示してピアノの上に置いて見ながらの演奏。最後のラヴェルのラ・ヴァルスを弾き終えて20時15分まで、観客も途中の拍手をせずに流れを大事にするユジャ・ワンを見守っていました。

集中力を大事にするタイプで、曲間で客席から咳が聞こえるとユジャ・ワンは時間を置いて集中している様子で、物音が聞こえるとそれを見つめたりも。

どうしてもヴィルトゥオーソのイメージが強いですが、リサイタルでは詩情豊かな曲もいくつか披露してくれました。ショパンのノクターンは本当に心に染み入る詩情でこんな一面もあるのだなと思ったら、クライマックスではフランツ・リストばりにガンガン弾いてましたね。そしてフィナーレの『ラ・ヴァルス』では圧倒されました。

怒涛のアンコールではペルトコスキも登場

そこから怒涛のアンコールへと続きます。ルンルンな上機嫌でタブレットで楽譜をセットして次々に披露してくれます。

  • レクオーナ:スペイン組曲「アンダルシア」 から 第6曲「マラゲーニャ」
  • ブルーベック:トルコ風ブルー・ロンド
  • モーツァルト(ヴォロドス、サイ、ユジャ・ワン編):トルコ行進曲
  • マルケス:ダンソン 第2番
  • D.スカルラッティ:ソナタ ト長調 K.455 L.209
  • チャイコフスキー(S.フェインベルク編):交響曲第6番 ロ短調 op.74 「悲愴」から 第3楽章スケルツォ
  • ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 ホ短調 op.72-2(連弾)
  • ブラームス:ハンガリー舞曲第5番(連弾)
  • ピアソラ:リベルタンゴ(連弾)
  • シューベルト=リスト:糸を紡ぐグレートヒェン S.558-8
  • グルック(ズガンバーティ編):「オルフェオとエウリディーチェ」から メロディ(精霊の踊り)
  • プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番 変ロ長調 op.83「戦争ソナタ」から 第3楽章

アンコールで高揚している中、英語でユジャ・ワンがアナウンスして「友人のタルモが日本に来ているから皆さんにギフトを渡したい」と述べると、ホール1F左後ろの客席にいた指揮者のタルモ・ペルトコスキがステージにやってきたので、思わず「タルモー!」って叫んでしまいました。6月にフランスのトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団と来日公演をおこなっていたペルトコスキですが、この日は連弾3曲を披露。ピアノも一流ですね。1人用の椅子を2人で窮屈そうに座っていましたが、仲の良い感じが伝わってきました。スラヴ舞曲ではユジャ・ワンがさっとお辞儀して、ペルトコスキが通常通りの長めのお辞儀だったのですが、2曲目ではユジャ流のお辞儀を真似ていました。ペルトコスキが左の低音域、ユジャ・ワンが右の高音域を担当。ペルトコスキがグリッサンドで高音まで来たときは、ユジャ・ワンはぶつからないようにさっと手を引っ込めていたのですが、まるで餅つきのような阿吽の呼吸。ピアソラのリベルタンゴではペルトコスキの最後のお尻による打鍵も決まりました。

そして再び一人になって3曲をアンコール。21時頃に終えたのですが、休憩無しで2時間も弾き切り、しかも最後の最後に難曲であるプロコフィエフの「戦争ソナタ」の終楽章をノーミスで弾きこなすとは、本当にユジャ・ワンのすごさを感じたリサイタルでした。

今年は11月にマーラー室内管弦楽団を弾き振りしてブラームスのピアノ協奏曲第1番と第2番を演奏する予定なので、また日本でお目にかかれますね。

ピアノ: ユジャ・ワン
演奏: 2026年6月10日, 横浜みなとみらいホール

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