
60年代か80年代か、カラヤンの第九ベスト盤
ヘルベルト・フォン・カラヤンはベートーヴェンの交響曲を何度も録音しました。1回目の全集は英国のフィルハーモニア管弦楽団と1951〜55年に (こちらの記事で紹介しました)。2回目は60年代にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と。同じコンビで3回目が70年代、4回目が80年代と10年ごとのマイルストーンのように録音をおこなってきたカラヤンのベートーヴェン。映像作品もあり、第九に関しては1969年にベルリン・フィルハーモニーで撮影されたものがあります。
カラヤンの第九の名盤は1962年盤か、1983年盤かで分かれるところでしょうが、私はどちらもじっくり聴き込んだ上で62年盤を推したいです。前のめりとも言えるカラヤンの前進力、そしてフィルハーモニーではなくイエス・キリスト教会での録音なので音の密度が高いです。
評論家の吉田 秀和は不満だが
音楽評論家の吉田 秀和はこの録音に不満で、1963年に書いた『カラヤンのベートーヴェン』でこのように書いています。
『第九』では、特に終楽章が不十分で、合唱は平板だし、独唱者、特にテナーは、まるでカラヤンの音楽の音色ではないではないか。その中では第三楽章の多層的な多声部の扱いが例によって洗練の域に達しているけれども。それにひきかえ、第一楽章では、あのトスカニーニでさえ第二主題の入りをひどく巧妙に、まるで天来の妙想のように提出していたのに、カラヤンはそしらぬ顔でそれを避け、むしろ、そのあとのgとges交代とか対位法的な戯れのほうを楽しんでいる。
吉田 秀和, 藝術新潮1963年6月号『カラヤンのベートーヴェン』 (現在は河出文庫『カラヤン』として刊行)
2020年リマスターで蘇る名盤
2020年のベートーヴェン250生誕アニバーサリーに合わせて、ドイツ・グラモフォンが「ベートーヴェン100プレミアム」をリリース。この62年盤のアルバムもオリジナル・テープからリマスターし、MQA-CD × UHQCD としてハイレゾ音源で蘇りました。
全体的に前のめりな第1楽章。録音なのに息がつかなくなるほどの圧倒的な提示部。第1楽章を聴き終えて緊張から解放されたかのように思わず「ふぅ」とため息をついてしまいます。音符が生き生きと踊り出すような第2楽章。そして光が差し込むような第3楽章。第4楽章ではイエス・キリスト教会ならではの残響を感じます。トラック5の10:50あたりで教会の高い天上に浮遊するかのような澄み切った歌声は、後のフィルハーモニーでの録音では聴けない (流れていく)のでこのアルバムならではのポイントです。
オススメ度
ソプラノ: グンドゥラ・ヤノヴィッツ
アルト: ヒルデ・レッセル=マイダン
テノール: ヴァルデマール・クマント
バス: ヴァルター・ベリー
指揮: ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン楽友協会合唱団 (指揮:ラインホルト・シュミット)
録音:1962年10月8-9日, 12-13日, 11月9日, ベルリン・イエス・キリスト教会
プロデューサー: エルザ・シラー
録音プロデューサー: オットー・ゲルデス、オットー・エルンスト・ウォラート
バランスエンジニア: ギュンター・ヘルマンス
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。






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