チェリビダッケとミュンヘンフィルによるショスタコーヴィチ
本日紹介するのは、名指揮者セルジュ・チェリビダッケ (1912年-1996年)とミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団によるショスタコーヴィチのアルバム。
チェリビダッケは録音嫌いで有名でしたが、ミュンヘンフィルが記録用に遺していた音源があり、それがチェリビダッケ没後しばらくしてワーナー・クラシックスからリリースされています。その集大成がチェリビダッケ・ミュンヘン・イヤーズ (2018年発売)。今回紹介するのもこの中の1枚です。
ショスタコーヴィチの交響曲2つを録音して、1990年2月の交響曲第9番、1994年5月〜6月の交響曲第1番、そしてカップリングでバーバーの弦楽のためのアダージョ (1992年1月)も含まれていて、全てライヴ録音です。
19歳の若書きの交響曲を81歳のベテランが指揮
交響曲第1番は音楽院の卒業制作として作曲され、完成した1925年7月はショスタコーヴィチがまだ19歳のとき。それに対して、指揮するチェリビダッケは演奏時1994年5月で81歳。19歳の若書きの交響曲を81歳のベテランが指揮する展開に。チェリビダッケはやや遅めのテンポ (チェリビダッケの用語だと『スピード』)で、他の指揮者だと加速させるところでもグッと手綱は抑えたまま。丁寧なアーティキュレーションでブルックナーを指揮するときと同じように旋律の掛け合いを重要視しています。特にトラック1の3:13あたりのフレーズではよく感じます。
パート間の受け渡しが巧みな第9番
チェリビダッケはリハーサルでも楽器のパート毎の旋律の受け渡しにこだわっていましたが、この第9番でも感じます。第1楽章の第1主題では、第1ヴァイオリンが軽快なリズムで演奏し、フルートがバトンを引き継ぎます。再び第1ヴァイオリンが受けてから、今度はオーボエが出てきて、低弦によるピチカートを境に第1ヴァイオリンがリードするのですが、パート間の受け渡しに巧みさを感じます。他の奏者の演奏をよく聴くようリハで度々指示してきたチェリと、それが文化として定着しているミュンヘンフィルの絆を感じますね。
第2主題では、トロンボーンがミ♭ラ♭の完全4度を吹くのですがフォルテッシモでも尖った響きにさせずにミュンヘンフィルらしい柔らかい響き。くまのプーさんのような大らかさを持って吹いています。それに応えるピッコロは小鳥のように軽やかでキャラクターの違いが絶妙です。ソ連の当局から「第9番」の交響曲として期待されたのに、ショスタコーヴィチが嘲笑うかのような軽い曲を書いたのですが、チェリビダッケは軍楽隊のような第2主題を実にパロディ豊かに演奏させています。テンポもゆったりとしていますし、アーティキュレーションも丁寧に付けるチェリビダッケ。
アンドリス・ネルソンスがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した2024年の来日公演を聴いたのですが、テンポを加速させてヴィルトゥオーソ的な演奏をしていたのがネルソンス。同じ曲でも解釈がだいぶ違います。
ショスタコーヴィチの2つの交響曲を、独自の解釈でパート間の受け渡しを意識。これはチェリビダッケとミュンヘンフィルにしかできない演奏でしょう。
オススメ度
指揮: セルジュ・チェリビダッケ
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
録音: 1990年2月9日 (第9番), 1992年1月15, 17, 19, 20日 (バーバー), 1994年5月31日, 6月2, 3日 (第1番), フィルハーモニー・イン・ガスタイク (ライヴ)
プロデューサー: トルステン・シュライアー (第9番)
録音エンジニア: ピーター・アーバン (第9番)
リマスタリングプロデューサー: ヨハネス・ミューラー
リマスタリングエンジニア: スヴェン・メヴィッセン
マスタリングエンジニア: クリストフ・スティッケル
スポンサーリンク
廃盤のため無し。
試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特になし。





コメントはまだありません。この記事の最初のコメントを付けてみませんか?