パーヴォ・ベルグルンドの3度目のシベリウス交響曲全集

今回紹介するのは、フィンランド出身の指揮者パーヴォ・ベルグルンド (1929年4月-2012年1月)とヨーロッパ室内管弦楽団とのシベリウス交響曲全集。

Finlandia レーベルがオリジナルレーベルで、現在はワーナーが販売しています。

2012年にタワーレコード限定企画盤が出て、最新リマスター+SACD化されて2026年1月に再リリースされています。私は前者のディスクで聴いています。

シベリウス交響曲全集 パーヴォ・ベルグルンド/ヨーロッパ室内管弦楽団 (1995-97年)
シベリウス交響曲全集 パーヴォ・ベルグルンド/ヨーロッパ室内管弦楽団 (1995-97年)

過去2回はオケの力量に不満のベルグルンド

CD にベルグルンド自身のコメントが載っていますが、ボーンマス交響楽団と1回目、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団と2回目の全集を完成させていましたが、オケの力量に不満。「しかし、今までの2度の全集は両方とも、オーケストラの演奏技術に関して、完璧に満足というわけではありません。」と語っています。フィンランド放送交響楽団から全集録音の提案がされたそうですが、ヨーロッパ室内管と初めてリハーサルをしてコンサートに臨んだ際に、「私がシベリウスの交響曲を新たに録音するために求めていた相手が、まさしく彼らだと確信したのです。」ということ。

ヨーロッパ室内管は、年間150日の契約で、ソリストや他の楽団、アンサンブルで本業があるメンバーが集まってきます。

録音順だと、1995年9月にロンドンのワトフォード・コロッセウムで第4番、6番、7番が、続いて1996年12月にオランダのナイメーヘン市庁舎で第5番が、そして1997年10月に同じくオランダのヒルフェルスムにあるRFOホールで第1番から3番を収録しています。ちなみにRFOホールはオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の本拠地です。

研ぎ澄まされたヨーロッパ室内管のサウンド

ベルグルンド自身が「このオーケストラのサウンドは、他のいかなるシベリウス録音に比べても異なっていて、研ぎ澄まされています。」と語っているように、ヨーロッパ室内管との演奏はクリア。そしてベルグルンドの解釈も「それほど暗く、くすんではいないのですから。」と語るように、フィンランド的ではなくなってベートーヴェンの延長のような古典的な解釈に変わっています。

モダンな響きと落ち着いたタクトで進む交響曲第1番

交響曲第1番から聴いてみましょう。第1主題は翼が生えるように大空に飛び立つようです。ヨーロッパ室内管のクセの無い、グローバルな響きで聴くシベリウス。オーボエによる第2主題も憂いはなく、やや淡白。情報量の多い展開部をベルグルンドはきっちりと弾き分け、再現部では第1主題で激しく燃えるよう。そしてハープの伴奏で熱を冷まし、金管セクションで重厚感はないですが中庸な響き。第2楽章では内海の波のように穏やかな第1主題、そしてアラベスクのようにフガートを丹念に織り成す第2主題。北欧のオーケストラだと透明感がある響きを持つ傾向がありますが、ヨーロッパ室内管はモダンできらびやかなサウンドで近代的な華やかさを添えます。シベリウス最初の交響曲ですが、第4楽章ではベテラン・ベルグルンドの落ち着いたタクトでゆったりと進んでいきます。

モダンなサウンドの交響曲第2番

交響曲第2番は第1楽章がかなり速いです。ベルグルンドは当時68歳ですが、第1主題を響かせる、というよりも疾走する感じ。室内管らしい精緻なアンサンブルを堪能できますが、さすがに速い。そして静まると共に速さが落ち着いたと思ったら、そのまま第2楽章へ。ここでもモダンなサウンドですが、鄙びた音が恋しくもなります。

交響曲第3番

前作が名曲すぎて捉えどころがない交響曲第3番では、ベルグルンドとヨーロッパ室内管はモーツァルトの交響曲を演奏するかのように精緻です。

交響曲第4番はグロッケンシュピールを使用

交響曲第4番の第4楽章はシベリウスがグロッケン (鐘)としか書かなかったので、鐘を使うかグロッケンシュピールを使うか解釈が分かれますが、ベルグルンドはグロッケンシュピールを採用。ただ、強調するのではなく、ほんのりと鳴らしています。同じフィンランド出身の指揮者オスモ・ヴァンスカが2026年3月に東京都交響楽団に客演したときはグロッケンシュピールの音が大きすぎてオケを食ってしまっていましたが、ベルグルンドはほどほど。

弦セクションを増やした交響曲第5番

これまで弦の増員をしていなかったベルグルンドですが、交響曲第5番は弦楽セクションの拡大が必要と考えたとのこと。ただ、室内管らしい小規模さのために木管がよく聴こえます。

白眉の出来の交響曲第6番

7つの交響曲の中でも最も美しい始まりをするのがこの第6番。ベルグルンドの3度目の交響曲全集の中でも白眉の出来。小刻みなリズムで刻む弦が加熱していく中を木管が羽ばたくように雄大。

重々しさよりも美しさの交響曲第7番

低弦が半音ずらして陰影を生み出す冒頭のフレーズ。フィンランド出身のピエタリ・インキネン読売日本交響楽団を指揮した演奏会では山鳴りのように表現したこの箇所を、ベルグルンドとヨーロッパ室内管は小細工無しのストレートな表現で進め、その後の美しい響きに重点置いています。

このアルバムはフランスで2つの音楽賞を受賞していますが、透明感ある響きが評価されています。一方で北欧っぽい鄙びた表情がなく、シベリウスが近代的、都会的になっています。フィンランド指揮者のベルグルンドですが、シベリウスをフィンランドのローカルに留めずにグローバルな作曲家として打ち出そうとした、そんな意志を感じる7つの交響曲。

オススメ度

評価 :3/5。

指揮: パーヴォ・ベルグルンド
ヨーロッパ室内管弦楽団
録音: 1995年9月, イギリス・ロンドン・ワトフォード・コロッセウム (第4, 6, 7番),
1996年12月, オランダ・ナイメーヘン市庁舎 (第5番),
1997年10月, オランダ・ヒルフェルスム・RFOホール (第1〜3番)
エグゼクティヴ・プロデューサー: ヤリ・ティエサロ
録音プロデューサー: ペッカ・サヴィヨキ
録音エンジニア: オノ・スコルツェ (第1, 2, 3, 5番), トニー・フォークナー (第4, 6, 7番)
アシスタントエンジニア: ヤープ・デ・ヨング (第1〜3番)

【タワレコ】シベリウス: 交響曲全集<2025年マスタリング><タワーレコード限定>

Apple Music で試聴可能。

1998年にフランスのディアパソン・ドール 賞 (Diapason d’Or)とショック・ド・ラネ 賞 (Choc de l’Année) を受賞。Wikipedia より

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