このアルバムの3つのポイント
- 5つのバッハの鍵盤協奏曲
- バッハに注力するピアニスト、バーラミの
- シャイー&ゲヴァントハウスの熱さ
年末に聴きたくなるバッハ
年の暮れが近付いてくるとベートーヴェンの第九が聴きたくなるものですが、私はなぜかヨハン・ゼバスティアン・バッハ(略してJ.S.バッハ)が聴きたくなります。クリスマス・オラトリオやマタイ受難曲、ロ短調ミサ曲あたりを聴いているうちに、気付いたらウィンナ・ワルツ(ニューイヤーコンサート)の季節が来ている、そんな感じです。
今日はバッハの中でもピアノ協奏曲を紹介したいと思います。バッハの協奏曲は厳密にはチェンバロ協奏曲で、チェンバロ(ハープシコード)のために書かれた作品ですが、現代のピアノで演奏する場合はピアノ協奏曲とも呼ばれます。
ゲヴァントハウス管とバッハ
今回紹介するのは、ドイツの歴史あるオーケストラ、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団による演奏。指揮者イタリア出身で、当時首席指揮者(カペルマイスター)を務めていたリッカルド・シャイーです。
シャイーがオランダの名門ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者を2004年に退き、2005年から着任したのがゲヴァントハウス管。就任を決めた理由の一つに、バッハを日常的に演奏するオーケストラだからと語っていたシャイー。実際にシャイーがカペルマイスターになってから、レコーディングでもブランデンブルク協奏曲(2007年11月)、マタイ受難曲(2009年4月)、クリスマス・オラトリオ(2010年1月)とバッハの大作に意欲的に取り組んできました。
ちょうど2007年から2009年にシャイー初となるベートーヴェンの交響曲全集を完成させた辺りで勢いに乗るゲヴァントハウス管とのコンビ。
35歳の若さで首席指揮者に就任したコンセルトヘボウ管時代では、まだ成長途上にあったシャイーだけに、前任のベルナルト・ハイティンクと比較され窮屈な思いをしましたが、ゲヴァントハウス管に移ってからは古豪オーケストラを蘇らせたと称賛された熱血漢シャイー。夢中に取り組んだのがバッハでした。
イラン出身のピアニスト、ラミン・バーラミ
そしてピアノ協奏曲の独奏を務めたのが、イラン出身のピアニスト、ラミン・バーラミ。1976年生まれでイラン革命のために父親が投獄されてしまい、11歳でヨーロッパに移住し、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ音楽院、イーモラ国際ピアノ・アカデミー、シュトゥットガルト音楽演劇大学で学んでいます。
録音を検索するとひたすらバッハの作品に取り組んでいることが分かります。バッハ弾きと言えばグレン・グールドが思い浮かびますが、ラミン・バーラミはまさに現代のバッハ弾きと言えるでしょう。
バーラミがシャイー指揮ゲヴァントハウス管と2009年5月20日と21日にバッハのピアノ協奏曲第2番〜4番を、5月28日と29日に第1番と5番をそれぞれライヴ録音しています。
草書体のように
バーラミのバッハは柔らかくてモダン。あまり個性を出さないオーソドックスな演奏ですが、5つのピアノ協奏曲とも、草書体の文字のようにスラスラと速いテンポで流れていきます。
特に第1番は驚くほど速いです。ゲヴァントハウス管が熱血漢シャイーと共に重厚なハーモニーで急流を作り、それにバーラミのピアノも一気呵成に流れていきます。単調とも言えるかもしれませんが、この速さで押し切ったからこそ見えてくる世界もあって新鮮。
第2番や4番では滑らかな打鍵とカラフルな音色で魅せてくれ、そして第5番のバロックらしい作品でもレガートな演奏。
グレン・グールドは録音していますが、バッハのピアノ協奏曲はレコーディングが本当に少ないです。そこにゲヴァントハウス管というバッハゆかりのオーケストラによる演奏で、現代のバッハ弾きが取り組んでくれたことに感謝。
まとめ
バッハゆかりのオーケストラで、バッハに傾倒したシャイーのゲヴァントハウス時代のレコーディング。バッハのスペシャリスト、バーラミによる滑らかでカラフルなピアノで聴く1枚。
オススメ度
ピアノ:ラミン・バーラミ
指揮:リッカルド・シャイー
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
録音:2009年5月20, 21日(BWV1053ー1055), 5月28, 29日(BWV1052, 1056), ゲヴァントハウス(ライヴ)
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。
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