このアルバムの3つのポイント

ブルックナー交響曲第7番 カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1976年)
ブルックナー交響曲第7番 カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1976年)
  • ベーム×ウィーンフィルの安心して聴けるブルックナー
  • 柔らかさと自発的な響き
  • 理想的なハーモニー

オーストリア出身の名指揮者カール・ベームは、20世紀を代表する指揮者の一人です。特にドイツ=オーストリア音楽に定評があり、アントン・ブルックナーは限られた曲しか指揮しませんでしたが、演奏はどれも高評価です。

ベームのブルックナーと言えばウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのものが人気ですが、ウィーンフィルがかつてデッカ・レーベルと契約していために1970年9月の交響曲第3番「ヴァーグナー」と1973年11月のブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」はデッカでのレコーディングとなり、1976年2月の交響曲第8番の録音と今回紹介する1976年9月の交響曲第7番はベームが契約していたドイツ・グラモフォンとの録音です。

ウィーンフィルと517回のうち30回も演奏したブル7

ウィーンフィルは過去のコンサートをアーカイブとしてWeb で調べられるようになっていますが、ベームとの演奏会は517回ありました。その中でブルックナーの交響曲第7番は1942年8月21日のザルツブルク音楽祭、12月19日20日のムジークフェライン、1943年6月4日のラジオコンサート1953年3月7日8日のムジークフェライン、1955年8月21日のザルツブルク音楽祭1958年7月30日のザルツブルク音楽祭1962年6月23日24日のウィーン音楽祭、1964年9月6日のルツェルン公演、1965年9月12日のリオデジャネイロ公演、9月18日のブエノスアイレス公演、1967年2月13日のグラーツ公演、2月14日のリンツ公演、2月16日のカールスルーエ公演、2月20日のヴッパータール公演、2月23日のニュルンベルク公演、5月17日のプラハ公演、1968年9月3日のコペンハーゲン公演、9月7日のベルリン公演、1969年5月21日のザルツブルク音楽祭、9月18日のヘント公演、1970年5月9日10日のムジークフェライン、1974年8月5日のザルツブルク音楽祭、1976年9月25日26日のムジークフェライン、1977年8月17日のザルツブルク音楽祭、9月4日のアテネ公演、と実に30回も演奏しています。

まさにベームの十八番とも呼べる作品ですが、意外にも録音は少なく、正規ではドイツ・グラモフォンでのセッション録音の他、1953年3月7日のライヴ録音もAltus からリリースされています。

ウィーンフィルとブルックナー

ブルックナー生前から関わりがあり、交響曲第3番(第2稿、第3稿)、第8番などで初演をおこなったウィーンフィルはこの作曲家とつながりが深く、ブルックナーを喜ばせるだけではなく、第3番の初稿では演奏不可能として初演を拒否したり、第2稿の初演では練習不足もあって失敗し、意気消沈させるなど、ブルックナーに酸いも甘いも経験させたゆかりのあるオーケストラ。

こちらの記事で紹介したように名指揮者ベルナルト・ハイティンクが2019年8月のインタビューで「ウィーン・フィルは特別です。例えばブルックナーの交響曲でも音色と方向性がすばらしくて大好きなんです。」と語るほど、ウィーンフィルのブルックナーには特別感があります。

誰が指揮してもウィーンフィルのブルックナーはほぼ評価が高く(例外は情熱がほとばしりすぎたクラウディオ・アバドぐらい?)、交響曲第7番についても何度も録音していて、1965年10月のゲオルグ・ショルティとの劇的なレコーディング1986年6月のカルロ・マリア・ジュリーニとの録音1989年4月のヘルベルト・カラヤン最後のレコーディング2019年8月のベルナルト・ハイティンクの最後となったザルツブルク音楽祭ライヴなどがあります。

中でもベームとの演奏はオーソドックスで定評があります。晩年の来日公演ではベーム・ブームを引き起こしたほどですが、ブラームスなどのセッション録音は面白味がないとも評されるベーム。ただ、このブル7は30回も演奏会で指揮したウィーンフィルとのまさに阿吽の呼吸。セッションとは思えないほど表情豊かです。

ウィーンフィルの美音を活かし、第1楽章では実に伸び伸びとしています。弦も心地良いですし、木管もふくよか。提示部第1主題ではチェロによる主旋律がmf (メゾ・フォルテ)の指示ですが、ベームはこれをf (フォルテ)ぐらいの音量で弾かせています。続く第1ヴァイオリンに旋律が引き継がれると輝きを増します。第2主題でのフルートとオーボエが際立っているのが特徴です。そして金管も柔らかくて自然豊かな演奏を聴かせてくれます。

第2楽章でもウィーンフィルの柔らかくて自発的な響きで聴き手を魅了します。スケルツォの第3楽章でも安定した運びでベームは音楽が自然に生まれてくるかのように進めていきます。第1楽章や第2楽章に比べると構造的に不思議なつながりをしている第4楽章でも、ベームのタクトではこう進むべきという確たる信念があるように無理なく進んでいきます。

ベームとウィーンフィルによる唯一無二のブルックナー。オーソドックスで安心して聴けるアルバムです。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:カール・ベーム
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1976年9月26日-28日, ウィーン楽友協会・大ホール

iTunesで試聴可能。

特に無し。

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