このアルバムの3つのポイント
- ショルティとシカゴ響のメンデルスゾーン
- 快速のテンポ
- シャキシャキとしたキレのある演奏
ショルティのメンデルスゾーンの交響曲は第3番と第4番だけ
幅広いレパートリーを誇ったサー・ゲオルグ・ショルティですが、フェリックス・メンデルスゾーンの交響曲については第3番 Op.56 イ短調「スコットランド」と第4番 Op.90 イ長調「イタリア」だけ録音しています。今回紹介するのは1985年4月、シカゴ・オーケストラ・ホールでのシカゴ交響楽団とのセッション録音です。
1985年と言えば10月にブルックナーの交響曲第9番を録音していますし、翌年1986年からは2回目のベートーヴェンの交響曲全集を開始していて、1969年から音楽監督を務めていたショルティとシカゴ響の黄金期が2周目あたりを迎えていて時期です。
私は2012年のショルティ生誕100周年のアニバーサリー・イヤーにリリースされた国内盤で聴いていますが、2017年に再度CDでリリースされましたがそちらも現在は品切れ。CDでは現時点で入手が困難なので、気になる方はApple Music などの配信で聴いたほうが良さそうです。
なお、「スコットランド」は1952年11月のロンドン交響楽団とのセッション録音、「イタリア」については1958年のイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団とのセッション録音や、1993年2月のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのライヴ録音もあります。特に「イタリア」については響きが柔らかく、ライヴなのでウィーンフィル盤のほうが私も好みです。
作曲は最も最後の第3番「スコットランド」
メンデルスゾーンは交響曲の出版順が作曲順と合っていないため、作品番号付きの5曲の交響曲のうち、第3番「スコットランド」は最も最後に作曲されたものです。1829年、まだ20歳のときにイギリスとスコットランドを訪れたメンデルスゾーンは、後の交響曲第3番の冒頭部分をスケッチしますが、その後10年以上作曲が中断され、完成したのは1842年になってからでした。なので、交響曲の順番としては3番目ですが、他の交響曲に比べると深みを増した印象を受けます。
ショルティとシカゴ響の演奏は冒頭を実に神秘的に、そして美しく演奏します。そして第1主題に入るとテンポはかなり速めでまるで快速電車のようにキビキビと進んでいきます。もう少し溜めがあっても良いのですが、いかにもショルティらしくて納得してしまいます。このアルバムでは第1楽章と第4楽章が2つのトラックに分かれています。木管の旋律が美しく始まる第2楽章では、リズムに厳格で細かい音符までオーケストラがピッタリと演奏していきます。展開部での活き活きとした演奏はシカゴ響ならでは。
イタリアで恒例のバカンスを取ったショルティ
ショルティはドキュメンタリー映像「人生の旅(Journey of a lifetime)」で毎年、夏にイタリアの別荘で長めのバカンスを取り、英気を養っていたことが伝えられています。イタリアを熟知しているショルティが「イタリア」を振るとどんな感じかと聴き始めると驚かされるのがテンポ。第1楽章のAllegro vivaceをこちらも快速電車のように猛進していきます。シカゴ響なのでテンポが速くてもハーモニーはしっかりしていますが、こちらも前回の記事で紹介したチャイコフスキーの「悲愴」のように、引き締まった響きでシンフォニックに演奏されていきます。
第2楽章の一転したしんみり感や第3楽章の優雅さも驚かされますが、第4楽章の「サルタレッロ」というローマで流行った舞曲を取り入れたPresto (急速に 、Allegro より速い)ではキビキビとして猛進していきます。色々な感想が渦巻くのですが、最初と最後の速さで圧倒されてしまいます。
まとめ
ショルティとシカゴ響によるメンデルスゾーンの2つの傑作交響曲。ショルティらしさとシカゴ響ならではの演奏でしょう。
オススメ度
指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
シカゴ交響楽団
録音:1985年4月, シカゴ・オーケストラ・ホール
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廃盤のため無し。
試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
コメント数:1
これにはついていけませんでした。自分がタンギングが苦手だったことを思い出してしまって、この速さはツライ感じです。。ショルティだけに、S なのか? と思ってしまいます。シカゴ響はさすがです。