このアルバムの3つのポイント

ブルックナー交響曲第7番 パーヴォ・ヤルヴィ/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 (2022年)
ブルックナー交響曲第7番 パーヴォ・ヤルヴィ/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 (2022年)
  • パーヴォ・ヤルヴィとトーンハレ管のブルックナー後期交響曲録音の第1弾
  • 対向配置と透明感
  • リニューアルされたトーンハレの響き

1つ前の記事パーヴォ・ヤルヴィ指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団のブルックナー交響曲第9番の録音を紹介しましたが、今回も同じコンビの第7番。ブルックナーの後期交響曲を録音するプロジェクトの第1弾でした。

スイスのトーンハレ管がブルックナーの交響曲第7番を初演したのは1924年のこと。1906年から49年まで長期にわたって首席指揮者を務めたフォルクマール・アンドレーエが、この作曲家の生誕100周年に指揮したものでした。遡って2022年1月。2019年から首席指揮者を務めるヤルヴィとトーンハレ管はこの曲を録音しました。トーンハレ管が本拠地とするコンサートホール、チューリッヒ・トーンハレが4年越しの改修工事を終えて再開したのが2021年9月。このブルックナーの第7番を聴くには新生トーンハレの存在が欠かせません。

同時期の演奏会でこの曲を演奏しているヤルヴィとトーンハレ管ですが、録音はライヴではなくセッション録音。CD のブックレットに添えてある写真を見ると、トーンハレの客席も取り外して広めにオーケストラを配置しているのが分かります。第2ヴァイオリンが指揮者の右手にある対向配置のスタイル。トーンハレ管はディヴィッド・ジンマン時代を除きこの伝統的な配置を取っています。

トーンハレ管のメンバーはオーケストラのホームページによると約20の国々出身のおよそ100名。世界都市チューリッヒらしい多彩な顔ぶれですが、かといってグローバル化された均質なオーケストラという感じはせず、フォルテでも柔らかいサウンドときめ細やかな繊細さが特徴。トーンハレのすぐ隣にはチューリッヒ湖が広がっていますが、このピクチャレスクな湖のような透明感があります。

交響曲第7番の第1楽章はヤルヴィの解釈もセンスを感じ、深呼吸をするかのようにゆったりと進む第1主題の提示と、それと対比的に足早に進行する第2主題の提示部。この速さでもホルンとトランペットの小気味いいリズムにオーボエとクラリネットがしっかりと旋律を引き出しています。第3主題は動きがあって色とりどり。

ベースはノーヴァク版

ブルックナー演奏で気になるのはどの版のスコアを使ったかなのですが、このアルバムには版の表記がありません。販売元のナクソス・ジャパンの説明では「今回は版の明記がされておりませんが、第2楽章での打楽器の使用を始め旧盤同様ノーヴァク版を基調としながらも、第4楽章冒頭の頻繁なリタルダンドなどは前回以上にイン・テンポで進められている印象」とのこと。第2楽章の練習記号W、トラック2の16:35あたりではシンバル、トライアングル、ティンパニが入っています。

第4楽章のクライマックスまで夢中になって聴いてしまったヤルヴィとトーンハレ管のブルックナー。追いかけ続けたいコンビです。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
録音:2022年1月, トーンハレ

Apple Music で試聴可能。

2023年4月のフランスのディアパソン・ドール (Diapason d’or)を受賞。

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