晩年のスウィトナーとシュターツカペレ・ベルリンのブルックナー
今日紹介するのは、東ドイツの名指揮者オトマール・スウィトナーとシュターツカペレ・ベルリン (SKB)によるブルックナーの交響曲第7番 (ノーヴァク校訂版)の録音。1989年1月、ドイツにあるベルリン・イエス・キリスト教会でのセッション録音です。
以前の記事で1987年の交響曲第1番の録音を紹介しました。タワーレコード限定のCD でスウィトナー&SKB のブルックナーの第1弾でした。今回紹介するのは、同じくタワレコ限定の第2弾。2024年の最新マスタリング音源を使用しています。
アルバムのジャケット写真は全く魅力がなくてこれを見ても聴きたいとは思わないのですが、録音自体は一聴に値するもの。それにしても何でしょうね、少年?が砂浜に木で線を描いています。

最近、記事の執筆が停滞気味ですが、このブルックナーの7番は若葉が茂る林の中を吹く風のように颯爽としているこの演奏。新緑が鮮やかな初夏にこそ合うと思い、久しぶりの投稿です。
SKB は今ではクリスティアン・ティーレマンが率いてますます重厚なサウンドに進んでいますが、この時期のスウィトナーとSKB は軽やかさもあって気品がある音作り。このコンビによるブルックナーは重厚さとは違って、モーツァルトの延長にあるような自発的な音がします。
爽やかな風
冒頭のチェロの主旋律から独特で、重厚でもなく軽やかでもなく、爽やかな風が吹くようです。「ブルックナー霧」を表すヴァイオリンによるトレモロが、スウィトナーによるとヴァーグナーの『ローエングリン』の序曲のように、光が天から差し込んでくるかのような神聖なサウンドに化けます。セルジュ・チェリビダッケが1992年3月にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とこの曲をリハーサルしたときにはこのトレモロを「一人ひとりが異なった波長で弾きます。個々の奏者の波長がまばらになることで必要とされる密度が生まれてくる」と指示していましたが、スウィトナーの解釈ではトレモロを完全に一つに融合して輝きを生み出しています。
第1楽章の後半のコーダでは、突然爆発して新しい生命が誕生したかのような力強さも。そして第2楽章の葬送行進曲に入り、透き通るようなSKB の響き。スウィトナー時代のこの響きが私は好きです。まるで息付くように音楽が自然に運ばれていき、第4楽章のコーダでは行き過ぎたクレッシェンドとは無縁で、スウィトナーらしい中庸さで長い旅路を結びます。
オススメ度
指揮:オトマール・スウィトナー
シュターツカペレ・ベルリン
録音:1989年1月23-27日, ベルリン・イエス・キリスト教会
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。
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