このアルバムの3つのポイント

ブルックナー交響曲第9番 ジュリーニ/ウィーンフィル(1988年)
ブルックナー交響曲第9番 ジュリーニ/ウィーンフィル(1988年)
  • ジュリーニの最高の録音の一つ
  • ウィーンフィルの美音でロマンに流さないしっかりとした構築
  • オランダのエジソン賞を受賞

以前の記事でも紹介したが、イタリア出身の指揮者、カルロ・マリア・ジュリーニは、1984年に夫人の病気のためにロサンジェルス・フィルハーモニーの音楽監督を退任し、それ以降は演奏活動をヨーロッパ内に制限し、特定のオーケストラのポジションには就かず、フリーの指揮者として活躍した。

ジュリーニは1980年代中盤からウィーンフィルとともにブルックナーの交響曲第7番、第8番、第9番を録音したが、その全てが素晴らしい出来。今回紹介する第9番は1988年6月のウィーン楽友協会・大ホール(ムジークフェラインザール)でのセッション録音で、ウィーンフィルの良さを存分に引き立たせた名演。

ジュリーニはシカゴ響と1976年にブルックナーの交響曲第9番を録音している(FC2ブログ記事)が、そちらはシカゴ響の持ち味である金管楽器のスケールの大きなサウンドと、透明感ある弦の音色で、引き締まった演奏になっているのが特徴であった。今回紹介する録音では、オケがウィーンフィルに替わり、官能的な弦、柔らかい金管と木管の豊かな音色が表れている。また、私はまだ聴いていないが最晩年の1996年9月のシュトゥットガルト放送交響楽団とのライヴ録音もある。

ジュリーニとウィーンフィルはこの第9番でメリハリを効かせた演奏を行っている。例えば第1楽章。晩年のジュリーニと言えばゆったりとしたテンポが特徴だったが、ここではやや速め。聞こえないぐらいの静かさで始まり、レガートで通奏低音を滑らかにつなげる。そしてクレッシェンドして現れる第1主題は、見事な弦のトレモロの上に主題が乗っかっていて、こんなに立体的な演奏は初めて聴いた。しかし単なる軟弱な演奏ではなく、音楽は巨大な渦となって最大限の力を持って下降していく。ジュリーニはイタリア出身の指揮者ではあるが、流れるような音楽ではなく、ドイツ音楽らしいカチっとした音楽を作る指揮者であったが、その特徴がこの演奏でもよく表れている。メリハリが絶妙だ。

第2楽章ではティンパニーのスケール感があり、単に柔らかい音楽には決してさせない。この楽章はアメリカのオーケストラやベルリンフィルあたりだと金管がうるさすぎてしまうこともあるのだが、ウィーンフィルの金管は爆音になることが無いので安心して聴ける。

第3楽章はいかにもジュリーニらしい歌心に溢れている。冒頭から弦の美しい響きが実に見事。少し遅めのテンポだが、この音楽がいつまで続いて欲しいと願ってしまうほど極上の美しい世界。

スケールある骨組みを構築しつつも、ブルックナーの音楽の美しさを極限まで引き出した、ジュリーニの名演。数あるジュリーニの録音の中でも、シカゴ響とのマーラーの交響曲第9番と肩を並べる、彼が残した最高の録音の一つと言っても過言ではないだろう。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1988年6月, ウィーン楽友協会・大ホール

iTunesで試聴可能。

1990年のオランダのEdison Klassiekの交響曲部門を受賞。

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