このアルバムの3つのポイント
- ポリーニによるショパンのピアノ・ソナタ集
- 正確なコントロールと圧倒的な力強さ
- オランダのエジソン賞と日本のレコード・アカデミー賞受賞!
ポリーニによる1回目のショパンのピアノ・ソナタの録音
現代を代表するピアニストの一人、マウリツィオ・ポリーニ。1960年にショパン国際コンクールで優勝してから様々な演奏史を塗り替えてきたような偉大な演奏家ですが、ショパンについても着実に録音をおこなってきました。21世紀になってから、ショパンの主要作品の再録音もおこなっていて、ピアノ・ソナタ第2番は2008年3月、第3番は2018年5月に再録音をしていますが、1回目の録音が1984年9月のもの。ピアノ・ソナタ第2番Op.35と第3番Op.58を一気に録音したアルバムで、日本のレコード・アカデミー賞とオランダのエジソン賞をダブル受賞した名盤です。
大理石のように固くて透明だったポリーニのピアノも80年代以降は少しずつ丸みが出てきて、この時期はデジタル録音ということもあり、1983年から87年にかけてのシューベルトの後期ピアノ・ソナタ集や1989年のリストのピアノ・ソナタなど私も愛聴しているアルバムが多いです。
私はこのショパンのピアノ・ソナタを2002年にリリースされたNew Super Best 101と、2016年リリースのドイツ・グラモフォン録音全集の2種類持っていますが、デジタル録音なので音質は良いです。
完璧なコントロールと力強さ
ショパンのピアノ・ソナタは技巧だけではなく詩情も求められる作品ですが、ポリーニのこの演奏は理想的でしょう。
ピアノ・ソナタ第2番「葬送行進曲付き」。Grave (重々しく)で始まる序奏は左手でレ♭ミミのオクターブをフォルテで弾くところから始まりますが、他の演奏家ではここで極端にテンポをゆっくりにして溜めを効かせる演奏もある中、ポリーニは力強い打鍵の後にさらっと進みます。そしてDoppio Movimento (2倍の動きで)ではギャロップのように駆け巡ります。ペダルを効かせてレガートに音をつないでいきます。80年代のポリーニの特徴はレガートに滑らかになったところにあると思いますが、低音をしっかりと鳴らしてショパンの作品に潜む強靭さを出しつつも、隠れた歌を引き出すところがうまいです。楽譜どおりDoppio Movimentoのリピートを守り、繰り返しをおこなっています。第2楽章のスケルツォは正確なリズムで力強く演奏していきますが、Piu lento (今までより遅く)に移ると、儚い旋律を美しく歌っています。第3楽章の「葬送行進曲」はLento (遅く)の指示ですが、ポリーニは基本テンポが速いので、ここでも少し速めに感じます。そして無休音楽のような第4楽章は、風が渦のように舞うようにさらに速めのテンポで流れていきます。この終楽章は今までで聴いた演奏よりも曲の意味を理解できたように思えます。
壮大な第3番
そしてピアノ・ソナタ第3番は滑らかで音楽が自然に流れていきます。第2番に比べるとこちらの演奏のほうがよりドラマティックに富んでいて、第3楽章での儚さや第4楽章での息もできないほどの緊張感が見事です。
まとめ
現代最高のピアニストのポリーニによるショパンのピアノ・ソナタ集。圧巻です。
オススメ度
指揮:マウリツィオ・ポリーニ
録音:1984年9月, ヘラクレス・ザール
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
1986年度の日本のレコード・アカデミー賞「器楽曲部門」及び1987年のオランダのエジソン賞「器楽ソロ部門(INSTRUMENTALE SOLORECITALS)」を受賞。
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