- ヤンソンス/バイエルン放送響が得意とするドイツ・オーストリア音楽
- まろやかな音楽に加わるほんのりとした熱さ
- 重低音の響きもしっかり
シューベルトが作曲した「大きい」ほうのハ長調交響曲
「ザ・グレート」。
フランツ・シューベルトが作曲した交響曲にはハ長調の作品が2つある。作品の規模が「大きい」ほうのハ長調交響曲が第8番(以前まで第9番と言われていた)D944で、「ザ・グレート」という愛称で呼ばれるようになった。シューベルトの作品の中でも特に長大で力強く、この呼び名がしっくり来る作品である。
シューマンが発見し、メンデルスゾーンが初演
この「ザ・グレート」はシューベルト最晩年の1825年から1826年に作曲されたが、生前は演奏されることはなかったようだ。そして埋もれてしまったこの交響曲を、同じく作曲家のロベルト・シューマンがウィーンのシューベルトの自宅を訪問し、死後もそのままになっていた机から発見し、盟友の作曲家&音楽家フェーリクス・メンデルスゾーンに送り、メンデルスゾーン指揮のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団が1838年3月に初演を行った。今から振り返ると大作曲家ばかりですごい時代だ。
マリス・ヤンソンスとバイエルン放送交響楽団による2018年の演奏
バイエルン放送交響楽団(BRSO)と首席指揮者マリス・ヤンソンスは2018年2月、ヘラクレス・ザールでの「ザ・グレート」をライヴ録音した。バイエルン放送響のこの作品の録音には、設立間も無い頃の1958年のオイゲン・ヨッフムとの録音(FC2ブログ記事)や、1993年の晩年のカルロ・マリア・ジュリーニとの録音(FC2ブログ記事)がある。天国的な長さと言われるシューベルトのこの作品と、透明感のあるオーケストラの響きが実にマッチしていた。
ヤンソンスとバイエルン放送響のこの録音は演奏から6ヶ月後の2018年8月にリリースされた。ウィーンフィルのニューイヤーコンサートは演奏してから3週間ぐらいでリリースされているがあれは異例中の異例。クラシック音楽の録音は演奏されてからだいたい1年後ぐらいでリリースされるのが一般的。だから半年で出たのにはかなり驚いた。
まろやかでほんのりと熱い
第1楽章冒頭のホルンのソロから引き込まれる。大き過ぎず小さ過ぎずの絶妙な音量でふくよかな音色で聴かせるのだ。バイエルン放送響なので透き通った響きを想定していたが、低音の弦やティンパニーも素晴らしい音質で聴こえ、ほどよい重厚さ。また、「激しい」というわけではないのだが、特に第4楽章ではほどよく「熱」がこもっている。後期ロマン派の音楽に聴き慣れているとシューベルトの作品は素朴さを感じるものだが、ヤンソンスの熟成された音楽作りとバイエルン放送響のうまさはここでも活きている。
コロナ禍や煮え切らない政治に対する癒やし
新型コロナウイルスの影響で、2020年の春には大規模な外出自粛、夏休みには帰省や旅行は控えて、とそして秋にGO TOが本格化したと思ったら冬休みはまた旅行や帰省の自粛依頼。そしてまたこれから迎える成人の日の三連休でも、成人式は各地で中止となり、東京都は三連休はステイホームで、との呼び掛け。終わりが見えないコロナ禍の影響や、それに対して思い切った対策ができないで後手後手になってしまっている今の日本の政治。鬱憤ばかり溜まってしまうのだが、そういうときこそ音楽が癒やしてくれる。
このヤンソンスとバイエルン放送響の「ザ・グレート」は、のどかで牧歌的な良い味を出しながら、やや熱の込もった血潮を感じる。こういう情勢だけにリピートで聴きたい1曲。
まとめ
これまで「ザ・グレート」の録音はどれがベスト盤なのか決められないでいたのだが、このヤンソンス/バイエルン放送響は繰り返し聴いている1枚。私の中ではベストだ。
オススメ度
指揮:マリス・ヤンソンス
バイエルン放送交響楽団
録音:2018年2月1, 2日, ヘラクレス・ザール(ライヴ)
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【タワレコ】シューベルト: 交響曲 第8番 ハ長調 D944「グレート」試聴
iTunesで試聴可能。
また、BRSOのサイトにて動画の視聴可能。
受賞
特に無し。
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