このアルバムの3つのポイント
- クラウディオ・アバド80歳記念のライヴ
- アバド初のシューマン交響曲録音
- 若手の教育に力を入れたアバドと、一心同体のモーツァルト管の熱演
意外にもシューマンの交響曲を録音してこなかったクラウディオ・アバド
指揮者クラウディオ・アバドは幅広いレパートリーを持っていました。
ロベルト・シューマンについても、ピアノ協奏曲はマウリツィオ・ポリーニ/ベルリンフィル(1989年)やマレイ・ペライア/ベルリンフィル(1994年)、マリア・ジョアン・ピリス/ヨーロッパ室内管(1997年)などの録音がありましたが、意外にも交響曲については録音してきませんでした。
その時期が来たのは2012年11月。モーツァルト管弦楽団とのウィーンでの演奏会で、シューマンの交響曲第2番を演奏し、それをライヴ録音しました。
4つある交響曲で一番渋い第2番
シューマンは4つの交響曲がありますが、第2番は一番渋い作品と見なされています。交響曲第1番「春」はその名のとおりハツラツとした喜びに満ちていますし、第3番「ライン」は楽章ごとに曲想が異なる多様性が見事。第4番は最も情熱的で、この曲が一番演奏される回数が多いようです。
しかし、第2番は牧歌的で情熱的なところもそこまでありませんし、楽章の違いもそこまではっきりとしていません。ただ、私はこの第2番が一番好きですね。内省的な音楽ですが、じわーっとこみ上げてくるのが良いです。
アバドも初のシューマンの交響曲でこの第2番を選んだ理由として、「信じられないほど(音楽的に)豊か」だからだという。これはこのアルバムを聴いてみるとよく分かります。アバドは丹念に楽譜を研究して演奏に臨んだのが伝わってきます。
アルバムにはシューマンの交響曲第2番ハ長調 Op.61、劇付随音楽「マンフレッド」序曲Op.115、歌劇「ゲノフェーファ」序曲Op.81の3作品が含まれています。
アバドが力を入れたモーツァルト管弦楽団
モーツァルト管弦楽団はイタリアのボローニャを本拠地とするオーケストラで、2004年にクラウディオ・アバドによって設立されました。
名前に「モーツァルト」と付くのは、モーツァルトがボローニャに滞在して様々なものを吸収したというエピソードから由来しているそうです。
オーケストラのメンバーは18歳から26歳までの若手で構成され、音楽監督のアバドによって磨き上げられたユースオーケストラとして活躍しています。
アバドは他にも1976年にEUユース・オーケストラ(旧ECユース・オーケストラ)も設立していますし、若手への教育に熱を入れてきました。
シューマン作品の演奏は
ここで聴くシューマンは、レガートがよく効いていてとても聴きやすい演奏です。アバドもこの作品を丹念に解釈してきたことが伺えます。初めての録音とは思えないですね。
第4楽章ではほんのりと「熱さ」が加わって、アバドならではのスパイスが効いています。
モーツァルト管はユース・オーケストラで、演奏の経験値は少ないかもしれませんが、名門オーケストラにも匹敵する水準にあるのは間違いないでしょう。
強いて言うなら第3楽章アダージョでもう少し深みが欲しかったところではありますが。。健康的な美音なのですが、「慈愛」の要素も欲しかったです。
カップリングの「マンフレッド」序曲がこのアルバムで最も良い出来。アバドの持ち味である情熱と、劇的な作品がマッチしています。「ゲノフェーファ」序曲でも激しい曲想がうまいです。
まとめ
クラウディオ・アバドの初めての録音とは思えないほど、シューマンの交響曲の中から実り豊かな音楽を引き出した名演でしょう。残念ながらシューマンの交響曲はこの第2番だけしか録音されず、1年2ヶ月後にアバドは逝去されてしまいますが、これを聴くと他の3つの交響曲はどうだったんだろう、特に情熱的な第4番が聴きたかったと期待が膨らむばかりです。
オススメ度
指揮:クラウディオ・アバド
モーツァルト管弦楽団
録音:2012年11月, ウィーン楽友協会・大ホール(ライヴ)
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【タワレコ】クラウディオ・アバド/モーツァルト管 Schumann: Symphony No.2, Overtures – Manfred, Genoveva試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。2013年の米国グラミー賞「BEST ORCHESTRAL PERFORMANCE」にノミネートされるも受賞ならず。
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