
久しぶりにフルトヴェングラーを
ヴィルヘルム・フルトヴェングラーが指揮した演奏を聴くのは毎回が新しい発見。以前、1951年11月のベルリンフィルとのシューベルトの「ザ・グレート」の録音を紹介しましたが、あまり紹介していなかったことに気付いて今日はフルトヴェングラーを。
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したチャイコフスキーの交響曲第4番の録音です。1951年1月のセッション録音で、ムック本によればフルトヴェングラー唯一のチャイコ4のレコーディング。ポケットスコアを見ながら聴いたらこれがまたすごい演奏です。
これがまた個性的
第1楽章から個性的。冒頭の運命の主題は気品高く、まるで鼻歌まじりに上機嫌。驚かされるのがここから第24小節のリテヌートからしっとりした表情に変化し、esspresivo (表情豊かに)では切々と訴えるようです。ワルツのテンポなのですが、フルトヴェングラーは夜想曲のようにゆったりと進めます。そして46小節でフォルテッシモで木管が入るのですが、フォルテの弦のほうが支配的。威嚇するかのように押し出して練習番号B に突入します。55〜60小節ではフルートとオーボエ、そしてクラリネットとファゴットのペアが共鳴。67小節からクレッシェンドなのですが、ここから音質が悪くなってしまうのが惜しい。。
練習番号E で突然の平穏さを生み出し、クラリネットとファゴットが楽園の世界を描きます。続くディミヌエンドとリタルダンドで完全な静けさへ。そこにクラリネットによる提示部第2主題なのですが、第1主題との対比が見事。ロ長調に切り替わる134小節からは澄み切ったようになり、161小節のフォルテフォルテッシモの推進力のすごさ。
193小節からの展開部では音質が曇ってしまい、躍動感が薄くなってしまうのですが、トランペットの3連符の小気味良いリズム。210小節から魔法のようにテンポを動かし、そして226小節でフルート、クラリネットのソロ。ここは音質も良いです。さらに262小節でヴァイオリンとヴィオラのジェットコースターのような速さでフルトヴェングラーの世界へ入り、278小節で最高潮へ。283小節の再現部でトロンボーンとチューバが強烈。そして静まり返ってから294小節から第2主題の再現部へと移行します。338小節のAllegro con anima では動き出す生命のよう。365小節の木管によるコラールが崇高です。396小節にある繰り返し記号は省略して進み、412小節からのコーダは圧倒されます。
聴き終えて立ち上がれなくなる衝撃
第2楽章はオーボエのソロが実に物悲しい。チェロのgrazioso (優雅に) が表情たっぷりです。70小節からのディミヌエンドで儚げになり、126小節からの中間部はヘ長調に変わり、低音に重心が移ります。ここは穏やか。166小節のトランペットはフォルテッシモなのですが、音質が良くなくてふにゃっとした音に聴こえます。199小節で再び変ロ短調になり、254小節から弱音になるにつれテンポも落としていくフルトヴェングラー。274小節で極端に遅い世界に、ファゴットのソロが儚げに訴えます。そのまま消え入るようにピチカートのピアノピアニッシモで終わり。この終わり方は交響曲第6番『悲愴』の終楽章みたいですね。
そして第3楽章は弦はずっとピチカート。ヘ長調のAllegro なのですがどこか明るさを感じない調べで、133小節でようやく木管が入り色彩が出てきます。オーボエとファゴットがゼンマイ仕掛けのような世界で『くるみ割り人形』の雰囲気が。185小節でピチカートの弦に合わせてクラリネットの響きに切れを持たせています。
いよいよ第4楽章。力強くて完全燃焼するフルトヴェングラーの魅力がたっぷり。60小節で変奏に入り、乙女のような柔らかさへと変わります。149小節では付点リズムに特徴があり、199小節では第1楽章の運命のテーマが完全な形で露出します。239小節からは信じられないほどのアッチェレランド。そして256小節からのコーダではこれぞフルトヴェングラーと言いたいほど信じられない圧倒感。聴き終わってもしばらく立ち上がることができないほど、衝撃を受けました。
まとめ
1951年の録音でお世辞でも音質は良いとは言えないところもありますが、フルトヴェングラー唯一のチャイ4ですし、何よりもこんな強烈な演奏はこの指揮者ならではでしょう。
オススメ度
指揮:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1951年1月4-10日, ウィーン楽友協会・大ホール
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。







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