※2021/01/30 初稿、2026/01/10 更新

チャイコフスキーを何度も録音したカラヤン
2026年が始まりました。
1月1日のウィーンフィルのニューイヤー・コンサートでヤニック・ネゼ=セガンが初登場ながら圧倒的な盛り上がりで始まった今年のクラシック。アンコールのラデツキー行進曲で観客席を巡回して聴衆と同じ目線で手拍子をする。新しいニューイヤーのスタイルでマンネリ化を打破。ウィーンっ子も大喜びでしたね。
さて新年はカラヤンから始めようとしていたのですが、なかなか筆が進まず10日目にしてようやく書けました。ウィーンフィルとの晩年のチャイ4です。
ヘルベルト・フォン・カラヤンはチャイコフスキーを得意とし、交響曲全集も完成させていますし第4番から第6番の後期交響曲は何度も録音をおこなっています。第4番は、正規録音でも6回録音おこなっていて、その最後となったのが今回紹介する1984年9月のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのセッション録音です。
晩年のウィーンフィルとの関係
1980年代中盤になってくると、カラヤンは音楽監督を務めていたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との軋轢が顕在化してきて、それから距離を置くようにウィーンフィルとの演奏、録音が増えてきます。特に最晩年にかけては、1989年4月にベルリンフィルのポストを辞任して新たな出発を果たそうとする中で、同じく4月にブルックナーの交響曲第7番をウィーンフィルと演奏し、ライヴ録音もおこなっています。そして7月にザルツブルク音楽祭でウィーンフィルとヴェルディの歌劇「仮面舞踏会」を上演する予定でしたが、リハーサルをおこなった翌日に突然の死去を迎えたカラヤン。「仮面舞踏会」では代理の指揮者を立てていなかったので、誰がカラヤンの代わりを務められるのか関係者は奔走しましたが、サー・ゲオルグ・ショルティしかいないということで、主役のテノール歌手のプラシド・ドミンゴの直談判によりショルティが指揮することになりました。そのエピソードについてはこちらの記事に書いています。
他にもウィーンフィルとは1987年のニューイヤー・コンサートに初登場した他、ブルックナーの第8番、1985年のドヴォルザークの「新世界より」も録音しています。チャイコフスキーの交響曲第4番ヘ短調はその前年に録音されたものです。
「明るくなった」カラヤンの音色
ベルリンっ子でカラヤンとベルリンフィルの生演奏を幼いときから聴いていて、カラヤンのアシスタントも務めた指揮者のクリスティアン・ティーレマンは晩年のカラヤンは「音色が明るくなっていった」とインタビューで表現していました。ティーレマンが求める重厚感と相まみえないところですが、その明るさが特に感じるのがこのチャイ4。
第1楽章の冒頭からホルンとファゴットによるフォルテッシモの強烈なファンファーレが炸裂するのですが、これが運命のモチーフと言われるもので、全曲を有機的につなげています。1976年のベルリンフィルとの録音 (こちらの記事で紹介)では猛々しく尖った印象がありましたが、オケがウィーンフィルに代わったことで角が取れ、ホルン、トランペット、トロンボーン、チューバの金管セクションがまろやかな響きになっています。第1主題でもカラヤンが晩年が求めた明るい音色になり、逆らえない絶望的な運命のはずが、どこか幸福感がある温かいメッセージに聴こえます。第2主題ではお互いに語り合うように木管が旋律を呼応し、柔らかい弦セクションがそれをヴェールで包むかのよう。これがウィーンフィルの響きですね。
第2楽章ではウィーンフィルの持つ魅力が全開で、冒頭のオーボエの主題が素晴らしいですし、ハーモニーになったときの美しさも良いです。第3楽章のピチカートも波のようなうねりがあります。
第4楽章は強烈な響きとテンポの緩急がドラマティックです。祝祭的な序奏に続いてやや小走りに進む第1主題。晩年のカラヤンから「Schnell! (速すぎる!)」とよく言われたとエフゲニー・キーシンやアンネ=ゾフィー・ムターがドキュメンタリーで語っていましたが、この第4楽章に関しては速めのテンポを取っているカラヤン。そして第2主題でも生きる喜びを感じるような明るさがあります。1分31秒から第1主題の変奏展開に入りますがガラッと空気が変わってオーボエがしおらしくて物悲しい旋律を奏でます。ホルン、トロンボーンに続いて3分15秒あたりから始まる第2主題の変奏展開ではフォルテッシモの頂点を作り、壮大に鳴り響きます。
音だけに集中して目を閉じてベルリンフィルを指揮してアンサンブルが縦に揃ったシンフォニックさを生み出した旧録音と、目を開けて指揮するようになってウィーンフィルから血の通った温かみのある演奏との聴き比べもぜひオススメです。
オススメ度
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1984年9月, ウィーン楽友協会・大ホール
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。






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