このアルバムの3つのポイント
- 各国の賞を受賞した名盤中の名盤
- 旋律を引き出し、天国に昇るかのような美しさ
- メリハリの効いたシカゴ響のサウンド
名演が多いマーラーの交響曲第9番の中でも
グスタフ・マーラーの交響曲第9番は名曲中の名曲なので、名演、名盤も数多いです。
ベスト盤をどれか1つに決めるのも難しく、色々な演奏が「ベスト」だと思えてしまいます。
私も特に素晴らしいと思う演奏は、マリス・ヤンソンス/バイエルン放送響の2016年、ベルナルト・ハイティンク/バイエルン放送響の2011年、そしてクラウディオ・アバド/ルツェルン祝祭管の2010年(そのうちに記事を書きます)ですが、他にもレナード・バーンスタイン/ベルリンフィルの1979年のライヴをベスト・チョイスだという方も多いでしょう。
今回紹介するカルロ・マリア・ジュリーニが指揮したシカゴ交響楽団とのアルバムも、世界各国から賛辞を受けた名盤中の名盤です。
知られている限りでも、米国グラミー賞の1977年のBest Classical Orchestral Performance、米国の1977年の国際レコード批評家賞、スイスのモントルー国際レコード賞、1978年のドイツレコード賞(現エコー賞)、1978年のフランスの国際ディスク大賞を受賞し、日本でも1977年度のレコード・アカデミー賞交響曲部門を受賞しています。
音楽賞を1つ受賞するのも音楽家としてのキャリアに一度あるかないかというレベルなのに、このジュリーニ盤はこのアルバムだけでこんなにも受賞しているのです。
しかもドイツ、スイス、フランスのヨーロッパと、アメリカ、そして日本という違う地域から受賞したのはすごいこと。国によって好まれる演奏スタイルや響きが違ってくるのですが、このアルバムは国をまたいで喝采を受けているのですから。
黄金時代のシカゴ響
このマーラーの交響曲第9番は1976年4月のシカゴのメディナ・テンプルでの録音。
音楽監督を務めていたサー・ゲオルグ・ショルティと黄金時代を迎えていたシカゴ交響楽団が、ショルティと同じくらい蜜月の関係を築いていた首席客演指揮者のカルロ・マリア・ジュリーニと演奏したものです。
シカゴ響はショルティを「鷹」、ジュリーニを「鳩」のように演奏スタイルを変えて演奏していたと言われていますが、高いヴィルトゥオーシティを要求される圧巻の演奏はショルティとおこない、そして柔和なカンタービレが持ち味の演奏はジュリーニ、というそれぞれ名演をおこなってきました。
冒頭から伸びやかな旋律
さてこの演奏では、第1楽章の冒頭から伸びやかな旋律です。
オーケストラの演奏でも「歌心」が特徴がジュリーニらしく、テンポをゆっくり目にして旋律を引き出す演奏。また、何よりシカゴ響の出来が非常に良くて、金管やティンパニーのスケールも大きく、甘い旋律だけでなく、メリハリが効いた演奏になっているのが特徴です。
全楽章を通じてたっぷりとしたテンポ、丁寧な旋律の歌わせ方など素晴らしいです。
別格に良い演奏はやはり第4楽章。本当に天国にいるかのような、慈愛に満ちた悠久の世界が表現されています。
マーラーの特徴である倚音(いおん)があるので毒々しさが出るはずの音楽なのですが、ジュリーニが指揮すると美しさが打ち勝ち、ため息すら出てしまうような耽美的な演奏に仕上がっています。
まとめ
マーラーの交響曲第9番については数多くの録音がリリースされていますが、録音から40年以上経ってもなおこのジュリーニとシカゴ響の録音が第一級の素晴らしさを保っています。
適度にスケールを持ちつつも、この作品から旋律をここまで引き出し、究極の美しさを表現したのは他にはいないでしょう。
オススメ度
指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
シカゴ交響楽団
録音:1976年4月, シカゴ・メディナ・テンプル
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
1977年度レコードアカデミー賞「交響曲部門」(日本)
1977年グラミー賞「Best Classical Orchestral Performance」(米国)
1977年国際レコード批評家賞(米国)
1977年モントルー国際レコード賞(スイス)
1978年ドイツレコード賞(現エコー賞)(ドイツ)
1978年の国際ディスク大賞(フランス)
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