このアルバムの3つのポイント
- オーストリア生まれのドイツの名指揮者、オトマール・スウィトナー
- シュターツカペレ・ベルリンの端正さ
- オーソドックスな響き
日本でも人気だったいぶし銀の指揮者、スウィトナー
父がドイツ人、母がイタリア人でオーストリア生まれのオトマール・スウィトナー(1922ー2010年)。シュターツカペレ・ドレスデンやシュターツカペレ・ベルリンの首席を務め、日本にも1971年に来てNHK交響楽団に客演し、72年には名誉指揮者になるほど人気を誇った指揮者でした。
こちらの記事で紹介したように2021年10月号のレコード芸術で「いぶし銀の名指揮者」の特集があり、ここに旧東ドイツのいぶし銀指揮者としてスウィトナーも載っていて、「その芸風は堅実で実直、奇をてらうことなく重厚に響かせる、まさしくドイツ的なものであり、同時にオーストリア風の温和さとまろやかさを持ち、厳しく鋭利になることはなかった。」と紹介されています。
丹精で几帳面な第九
スウィトナーはシュターツカペレ・ベルリン (ベルリン国立歌劇場管弦楽団)の音楽監督を1964年から90年まで務め、まさにオペラとオーケストラの両方で魅了していたのですが、ベートーヴェンの交響曲全集を1980年から84年にかけてベルリンのイエス・キリスト教会でセッション録音されました。
その中でも交響曲第6番「田園」は1981年度の日本のレコード・アカデミー賞「交響曲部門」を受賞した名盤として知られています。今回紹介するのは、第九。こちらはクラウス・テンシュテットのマーラーの第1番の記事と同様に、閉店セール中の古本屋で買ったアルバム。
第九の録音は数多く聴いてきましたが、このスウィトナー盤は堅実でオーソドックス。燃えるような白熱した演奏とは違うのですが、じわじわと良さが伝わってくる、安心して聴ける演奏だと思います。
シュターツカペレ・ベルリンなのでもっと重厚なサウンドかと思いましたが、オーストリアのオーケストラのような柔らかさを感じます。第1楽章も第2楽章も几帳面で丁寧に精緻なタッチで輪郭を描いていきます。第2楽章のモルト・ヴィヴァーチェでの4つの弦が追いかけっこをするようなフーガ風のところでは一つ一つの声部が濁らずクリアに重ねていきます。第3楽章ではじんわりとのどかで美しい旋律を最大限引き出しています。第4楽章の声楽・合唱が入るところも細かい弦のトレモロの上にコーラスを入れるところなど、精緻な立体構造で捉えているところが絶妙です。
まとめ
ドイツを代表するいぶし銀の指揮者オトマール・スウィトナーとシュターツカペレ・ベルリンによる第九。安心して聴ける一枚です。
オススメ度
ソプラノ:マグダレーナ・ハヨーショヴァー
アルト:ウタ・プリーヴ
テノール:エバーハルト・ビュヒナー
バス:マンフレート・シェンク
ベルリン放送合唱団
合唱指揮:ディートリッヒ・クノーテ
指揮:オトマール・スウィトナー
シュターツカペレ・ベルリン
録音:1982年6月12-19日, ベルリン・イエス・キリスト教会
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。
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