このアルバムの3つのポイント
- ザンデルリングとベルリン響によるシベリウスの交響曲全集
- ドイツならではのシンフォニックさ
- 後期交響曲の侘び寂び
ザンデルリングのシベリウス
今回紹介するのは、ドイツの指揮者クルト・ザンデルリング(1912-2011年)とベルリン交響楽団(現ベルリンコンツェルトハウス管弦楽団)とのシベリウスの演奏。
以前の記事でベルリン響とのショスタコーヴィチの交響曲選集やライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団とのブルックナーの交響曲第3番のレコーディングを紹介しました。同じタイミングでシベリウスの交響曲全集も買っていたのですが、ずっと聴き込んでいてもなかなか表現する言葉が浮かばず記事に書けなかったもの。
なお、ベルリン交響楽団という名前のオーケストラはかつて2つありますが、ザンデルリングが1960年から1977年まで首席指揮者を務めたのは東ベルリンの「Berliner Sinfonie-Orchester」のほうで、現在のベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団です。
ザンデルリングは冷戦時代に東ドイツで活躍した指揮者ということもあり、同時代に活躍したオイゲン・ヨッフム、ヘルベルト・フォン・カラヤン、レナード・バーンスタイン、サー・ゲオルグ・ショルティ、ラファエル・クーベリックなどに比べると目立たないかもしれませんが、タワーレコードが独自企画盤でザンデルリングに注力しているので聴かれる機会は増えてきていると感じます。
2021年にシベリウスの交響曲全集が再リリース
今回紹介するシベリウスの交響曲全集も、タワーレコード企画盤としてSACDハイブリッド4枚組として2021年9月にリリースされたもの。残念ながら解説書はドイツ語による解説しか載っていなくて、日本語の読み物はCDの帯に少し書かれている程度。
ドイツ=オーストリアの音楽を得意としつつも、ユダヤ人ということでソ連に亡命したこともあり、ロシア音楽も軸としたザンデルリング。そして意外にもシベリウスの交響曲全集は、北欧の指揮者とは異なる独自のアプローチでザンデルリングの名盤として知られています。
シンフォニックさと後期交響曲の侘び寂び
シベリウスの交響曲全集は1970年から77年にかけて録音され、まさにザンデルリングが首席指揮者としてベルリン響と活動した集大成となっています。全てベルリンにあるイエス・キリスト教会でのセッション録音で、こもったような音質は気になるところもありますが、音が発散せずに凝縮するのが特徴。
演奏はシンフォニックで、重厚感もありますが、第2番第4楽章や第4番第1楽章のようにバッハを思わせるようなポリフォニーを感じさせたり、第3番第1楽章では生真面目さも感じさせます。
特筆すべきは第7番で、侘び寂びを出しつつも緩急をつけて清流のような澄み切った音が滞りなく流れていきます。この曲は色々聴き比べましたが、このザンデルリングとベルリン響の演奏が一番気に入っています。
まとめ
北欧の指揮者や演奏家と違うザンデルリングがベルリン響ならではのシンフォニックさで描いた独自のシベリウス。特に第7番の侘び寂びがオススメです。
オススメ度
指揮:クルト・ザンデルリング
ベルリン交響楽団 (現ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団)
録音:1970年11月11-14日(「エン・サガ」, 第3番),
1971年12月12-19日(悲しきワルツ, フィンランディア, 第5番),
1974年2月2日, 6月25-27, 30日, (第6番, 7番),
1974年9月11-13日, 18日(第2番),
1976年1月8-11日(第1番),
1977年5月11-12, 18日, 6月1日(第4番, 「夜の騎行と日の出」)
ベルリン・イエス・キリスト教会
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。
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