シューベルト交響曲第8番「ザ・グレート」 サー・ゲオルグ・ショルティ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1981年)

今回紹介するのはショルティの『ザ・グレート』。ショルティアンを自認する私でも、ショルティの数ある名盤でヴァーグナーの『指環』、マーラー、ベートーヴェン、バルトークなどはパッと出てくるが、シューベルトはなかなか出てこない。

可憐なシューベルトのイメージと、エネルギッシュなショルティが合うのか?とも

そんなときにレコード屋で出会ったのがショルティがウィーンフィルを指揮した『ザ・グレート』。

シューベルトでわざわざショルティを聴かないでしょうし、ウィーンフィルでシューベルトを聴くならまずはベームだろう。

しかしデッカレーベルのレジェンドシリーズでリリースされているし、再販売もされているアルバムだから人気はあるのだろうか。

そんなモヤモヤを抱えつつ聴き始めると、冒頭のホルンから「あぁ、ウィーンフィルの響きだ」と感じる。温かみがあって優しいホルン。さらに聴き進めると、これは意外な名盤なのでは、と思うように。

1912年10月生まれのショルティは1982年が70歳。それを記念したアルバムとしてシューベルトの交響曲『ザ・グレート』を録音することになり、オーケストラはウィーンフィル。かつて『指環』を全曲録音したパートナーと、録音場所のゾフィエンザール。1981年6月、ショルティはここウィーンに帰ってきた。

鋭角的に押し通したショルティが、1970年代後半から柔らかさを帯びてきて、この『ザ・グレート』でも第1楽章前半や第2楽章のアンダンテではそうした変化があってこそ。しかしショルティがただスコアをなぞるだけではもちろんなく、第1楽章では再現部に入ってからのスケールの大きさ、そして第3楽章スケルツォでは持ち前の正確なリズムでバリバリとオーケストラを鳴らし切っている。フィナーレ楽章の推進力はもはやシューベルトを通り越してベートーヴェンの交響曲第7番 (ベト7) を彷彿とさせる。『ザ・グレート』と言えばフルトヴェングラーの怪演 (1951年、ベルリンフィル)も思い出したのだが、これもシューベルトを型にはめないで解放した演奏だったからだろう。

繰り返しになるが、ショルティの『ザ・グレート』は知られざる名盤なのでは。

※なお、このアルバムはこちらの記事ですでに紹介していますが、久しぶりに聴いてまたもや感激したので、改めて感想を書いてみました。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1981年6月, ウィーン・ゾフィエンザール

Apple Music で試聴可能。

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