本とクラシック音楽の第5弾
書籍と合うクラシック音楽を紹介するこのコーナー、ついに第5弾です。
前回は【本とクラシック音楽】東野圭吾『容疑者Xの献身』とシューマン ピアノ協奏曲を紹介しました。この後に最新作『永遠の記憶』を読んだのですが、この『容疑者Xの献身』を読んでいたばかりだったのでエピローグの理解がすんなりでした。
さて、今回はフランソワーズ・サガンが書いた『ブラームスはお好き』(Aimez-vous Brahms?)と、ブラームスのヴァイオリン協奏曲です。

39歳女性と25歳男性の恋
この作品の主要な登場人物は3人。39歳女性のポール、その恋人の40歳過ぎの男性ロジェ、25歳の青年シモン。ポールはディスプレイ・デザイナーで、依頼をくれた富豪女性の息子がシモンです。シモンは初めてポールを見るなり一目惚れで、今の世ではストーカーのようにポールの身の回りに現れます。一方でロジェは浮気者。ポールという恋人がありながらも若い女性と関係を持ち、ポールに嘘を付き、ぞんざいに扱います。ただポールも浮気のことは気付いており、傷付くメンタルの中でシモンからの熱い想いに包まれていきます。最終的には年齢差の引け目からポールはシモンに別れを切り出し、「もう、私、オバーサンなの、オバーサンなの」と告げ、同棲していたシモンは家を出ていき、ロジェとよりを戻したポール。年齢差で叶わなかった恋を描いた作品。
「コンチェルト」はどれ?
シモンがポールに対して宛てた速達に「六時に、プレイエル・ホールでとてもいい音楽会があります。ブラームスはお好きですか? きのうは失礼しました」と書いたのがこの本のタイトルにもなっていますが、好きな女性をデートに誘うのに「ブラームスはお好き?」と聞いていました。
この演奏会ではブラームスのコンチェルトが演奏されたのですが、2曲のピアノ協奏曲なのか、ヴァイオリン協奏曲なのか、ヴァイオリンとチェロの二重協奏曲なのか、については正確に書かれていません。
ヒントとしては、文章にある曲の描写。
- (演奏会前に自宅でブラームスのコンチェルトのレコードを掛けて) 最初の出だしをロマンチックだと思い、終わりまでぼんやり聞いてしまった。
- ちょっと悲壮な、ところどころ、ちょっと悲壮すぎるコンチェルトだった
- オーケストラが勢いよく始まったとき、自分もそれについていった。が、音楽が少し弱まってくると、すぐに、かれは隣人たちのささやきや、二列前にいる紳士の禿頭の形や、そして、とくに、自分の怒りを意識しはじめた。
- バイオリンの一つがオーケストラの上にひときわ高く飛び上がり、はりさけるような一つの音符で絶望的に鼓動すると、ふたたび低くなって美しい旋律的な波のなかに沈み、他の楽器を蔽っていった。
オーケストラが勢いよく始まった、悲壮すぎる、という描写からピアノ協奏曲第1番Op.15のほうかなと最初考えたのですが、ピアノについての記述が一切ないのも不思議です。また、冒頭が悲劇的なOp.15だと、ロマンチックだとは感じないのでは、という疑問も。バイオリンがオーケストラの上に飛び上がるという表現から、ヴァイオリン協奏曲Op.77と私は推理しました。
ミルシテイン×ヨッフム指揮VPOの演奏で
ブラームスのヴァイオリン協奏曲の名盤は数多くありますが、『ブラームスはお好き』はずっと曇り空のようなすっきりしない世界。せっかくなので「悲壮すぎる」コンチェルトを聴いてみると合うと思います。
そこで、ナタン・ミルシテインのヴァイオリンで、オイゲン・ヨッフム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏です。情熱的に押すのでもなく、気品があるミルシテインのヴァイオリン。それにヨッフム&VPO のオケが「悲壮」とも言える厚みを持っています。Apple Music で試聴できます。
本とクラシック音楽、次もお楽しみに。





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