- 新進気鋭のドゥダメルのマーラー第9番初録音
- 音楽監督を務めているロスフィルとの初CD
- 意外にも丁寧な演奏と、第4楽章の別格の美しさ
新進気鋭のドゥダメル
グスターヴォ・ドゥダメルは1981年1月生まれのベネズエラ出身の指揮者。まだ20代の若さで、ロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督を務めたり、ベルリンフィルの大晦日のコンサートに出たり、と大活躍で、テレビ番組で嵐の松本潤から今会いたい人として紹介され、クラシック音楽界のみならず知名度が高い指揮者の一人だ。
ドゥダメルのような新進気鋭の指揮者がマーラーの交響曲、しかも第9番を指揮した録音が出たときは、私も期待半分、不安半分で取り敢えずCDを買って聴いてみたのだが、まだ31歳とは思えない落ち着いた演奏に意外に思ったものだった。
CDの説明によると、2009年から音楽監督を務めているロサンゼルスとの初CDらしい。初録音とは書いていないので、もしかしてこれよりも前の録音があるのかもしれないが、CDとしてリリースされたのはこれが初のようだ。2012年2月にロスフィルの本拠地、ウォルト・ディズニー・コンサートホールでのライヴ録音で、初CDにマーラーの、しかも交響曲第9番という大作を選んでくるあたりにドゥダメルの自信を感じる。
演奏時間は第1楽章が29:32、第2楽章が16:25、第3楽章が13:19、そして第4楽章が26:46で、トータル86分02秒。CD1枚に収まる長さは83分くらいまで。あと数分というところで、この録音はCD2枚組としてリリースされている。CD1枚のマーラーの交響曲第9番に収まる録音に慣れてしまうと、こうしたCDを入れ替える作業が非常に煩わしい。と言っても、一旦PCに取り込んでウォークマンに転送してしまえば入れ替えなくて良いのだが、同じフォルダに収まるようにアルバム名を変更してから入れないといけないので、少し手間は掛かる。
ドゥダメルの「どうだ」!?
さてこの録音を聴いた感想だが、マーラーの交響曲がカラフルに、健康的な音色で演奏されている。ここらへんにドゥダメルらしいフレッシュさを感じる。ただ、全体的に少し慎重になり過ぎたかもしれない。丁寧に演奏されてはいるのだが、まだマーラーの楽譜から現れる深みが足りない気がする。
第1楽章の冒頭は、そよ風のようにオケが奏で始める。それぞれの楽器が呼応するかのように、音が交じり合う。ここでのドゥダメルの指揮はとても慎重で、従来の「マンボ」などを指揮していたイメージとは異なり、緻密にコントロールをしている。ところどころ唸り声のようなものが聞こえるのだが、これはドゥダメルの「どうだ」という声なのだろうか。イヤホンだと結構はっきり聞こえるのでかなり気になる。
曲が進むにつれ音の迫力が増していくが、このスケールの大きさが素晴らしい。適度にルバートも掛けた指揮で、フレーズの合間合間でテンポが揺れる。こういうテンポの揺らぎも面白く感じる。
第2楽章、第3楽章ではこの指揮者のノリの良さがよく出ていると思う。特に第3楽章のロンド・ブルレスケでは踊るかのような生き生きとしたテンポで軽快に演奏されていく。
第4楽章は心地よいバランス感覚で、ゆったりと、しっとりと聴かせる。それぞれの楽器の持ち味を生かして音を正確にコントロールしている。天国に上るかのような美しい響きで、往年のカルロ・マリア・ジュリーニとシカゴ交響楽団の録音に近い。この楽章だけは特に素晴らしい。
まとめ
ドゥダメルのフレッシュさを感じるマーラー録音ではあるが、音色も健康的だし、深みはあまり感じられなかった。マーラーを演奏するにはまだ時期尚早だったのかもしれない。ただ、第4楽章の美しさは別格。
オススメ度
指揮:グスターボ・ドゥダメル
ロサンゼルス・フィルハーモニック
録音:2012年2月, ウォルト・ディズニー・コンサートホール(ライヴ)
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【タワレコ】マーラー:交響曲第9番(SHM-CD)試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
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