- カラヤン晩年のドヴォルザークの交響曲2曲
- 生き生きとしたウィーンフィルの響き
- 楷書のような速弾きの第8番とじっくりと弾き込む第9番
1980年代後半のカラヤンとウィーンフィル
カラヤンは晩年の1980年代中盤から、ベルリンフィルとの軋轢もあり、ウィーンフィルに居場所を求めるように演奏、録音を増やしている。特に1989年4月にウィーンフィルと録音したブルックナーの交響曲第7番は、カラヤン最後のレコーディングになってしまったが、ウィーンフィルの美音を活かしきった「美しすぎるブルックナー」であった。
今回紹介するカラヤンのドヴォルザークの交響曲は、どちらもウィーンフィルとの演奏で、第8番が1985年1月、第9番「新世界より」が1985年2月、ともにウィーン楽友協会の大ホール(ムジークフェラインザール)での演奏である。
私はドイツ・グラモフォンから2011年9月にリリースされた「定盤」シリーズのCD(UCCG2060)で聴いているが、SHM-CDということもあって音質がかなり良くて細かい音まではっきりと聴こえる。最近リリースされたものではUHQCDで出ており、音質はもっと良くなっているようだ。それではカラヤンとウィーンフィルによる交響曲第8番と第9番「新世界より」を順に紹介していきたい。
速弾きで生き生きとした交響曲第8番
ドヴォルザークの交響曲第8番Op.88はボヘミアの旋律が豊かな曲であるが、このカラヤンとウィーンフィルの演奏は実に生き生きとしている。カラヤンの色々な録音を聴いているが、これほど音楽を演奏するのが楽しいと感じられる演奏は他には無いのではないだろうか。本当にハツラツとしている。
基本テンポはとても速く、カラヤンの指揮棒がグイグイとウィーンフィルを引っ張っている。カラヤンの美しさの結晶とも言うべきだろうか。ボヘミアらしいローカル性はあまり感じられないがグローバルなウィーンの持つ響きでドヴォルザークの作品を輝かせている。
第1楽章は全くトゲがなく、弦が爽やかに、木管と金管が柔らかく、心地よい響き。第2楽章は一転して余韻を残してゆったりとした演奏する。チェロやコントラバスの低弦が良い。特に聴いてほしいのが第3楽章。ウィーンフィル特有のヴァイオリンの美音が、ここで全開になる。第4楽章はトランペットが力強いのに、柔らかい。ここも力強く、激しく、そして速弾きで進んで行く。
ずっしりとゆったりとした足取りの「新世界より」
続く交響曲第9番「新世界より」Op.95は1985年2月の録音。第8番の後に第9番を聴くとまず驚く。テンポがあまりにも違いすぎる。確かに第8番はアレグロで、第9番はアダージョから始まるが、第8番であんなにサラサラと楷書のように速く力強く演奏していたのに、「新世界より」ではずっしりと、ゆったりとした足取りで進む。主題でもゆったりとしている。第2楽章に入ると、カラヤンらしい緩徐楽章の美しさがため息が出るほどにうまい。イングリッシュホルンが長いソロを演奏するが、さすがというべきうまさだ。第3楽章は冒頭がキラキラとしている。ここではゆっくりとしたテンポで丁寧に丁寧に弾かれている。第4楽章はこれまでと一転して、実に激しい。まるで今までの楽章が通過点だったかのように、カラヤンはこの最終楽章にピークを持ってきている。カラヤンの情熱がほとばしっている。
この録音は音楽之友社の「名曲名盤500」(2017年版)で「新世界より」の録音で第1位に選ばれた録音のようだ。うーん、そうだろうか。このCDだったら「新世界より」よりもテンポが速すぎるが第8番のほうが良いと思うし、私個人的には「新世界より」の中では2014年11月にマリス・ヤンソンスがバイエルン放送交響曲楽団を指揮したライヴ映像の「新世界より」が一番好きだ。
まとめ
カラヤンとウィーンフィルが残したドヴォルザークの交響曲の名曲。ウィーンの美音とカラヤンの力強さを感じる演奏。
オススメ度
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1985年1月(第8番), 2月(第9番), ウィーン楽友協会・大ホール
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受賞
特に無し。
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