このアルバムの3つのポイント
- エレーヌ・グリモー×アンドリス・ネルソンスの2012年のブラームスのピアノ協奏曲録音
- バイエルン放送響とウィーンフィルという理想のパートナーとの協演
- カラフルな色彩のするグリモーのピアノ
生で2回聴いたエレーヌ・グリモーのブラームスのピアノ協奏曲第1番
私はエレーヌ・グリモーがピアノ独奏を務めたブラームスのピアノ協奏曲第1番を2回、生で聴いています。1回目は2006年10月2日に東京・渋谷のBunkamuraで行われたNHK交響楽団のオーチャード定期公演での演奏(BunkamuraのHPにプログラムが載っています)で、ヴラディーミル・アシュケナージ指揮によるものでした。この時は私はまだCDでもブラームスのピアノ協奏曲を聴いたことが無かったので、予習も無しにいきなり45分の長丁場を聴いて、作品について理解しきれないまま終わってしまいました。ただ、それでも断片的にはグリモーの情熱的で力強いピアノに感動し、たのを覚えています。
そして2回目は2016年11月12日に米国ボストンのボストン交響楽団の定期公演で、こちらのFC2ブログの記事に詳細を書いていますが、アンドリス・ネルソンス指揮によるもの。この記事で紹介したように、ネルソンスは音楽監督を務めるボストン交響楽団と2016年にブラームス・チクルスで交響曲全集をライヴ録音で完成させていますが、そのチクルスでグリモーのピアノ独奏によるピアノ協奏曲第1番も演奏されたのでした。演奏会でのピアノ協奏曲第1番は、ボストン・シンフォニー・ホールに詰めかけた聴衆があまりの素晴らしさに第1楽章が終わると拍手が起こり、そして第3楽章の最後の音が鳴り止む前にフライングで拍手が鳴り響くという熱狂ぶり。私もこの2016年のボストンでの演奏が、これまで聴いたグリモーのブラームスのピアノ協奏曲第1番でベストな演奏だと思いました。
グリモー×ネルソンスの2012年のピアノ協奏曲録音
そしてエレーヌ・グリモーはアンドリス・ネルソンスとのコンビで2012年にブラームスのピアノ協奏曲全集を完成させています。第1番はバイエルン放送響との2012年4月のライヴ録音で、第2番はウィーンフィルとの2012年11月のセッション録音です。
息遣いも聞こえるライヴの第1番
ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 Op.15は、エレーヌ・グリモーがピアノ独奏を務めアンドリス・ネルソンス指揮のバイエルン放送交響楽団がオーケストラを担当しています。2012年4月のミュンヘンのヘラクレス・ザールでのライヴ録音で、ライヴならではの熱気があり、時折グリモーのものと思われる息遣いまでが聴こえます。
ブラームスのピアノ協奏曲第1番は重厚で情熱的な演奏が多いですが、グリモーとネルソンスの演奏はそこまで重厚感はありませんが、ピアノが力強く、とても色彩豊かです。第1楽章はハヤる気持ちを抑えつつ、ぐっと間を持たせた演奏で、クライマックスの第3楽章へとピークを取っておいています。第3楽章は冒頭からとにかくテンポが速い!ピアノに非常にキレがあります。
演奏後には聴衆からの温かい拍手とブラボーが鳴り響いています。ただ、2016年のボストンの公演を体験したときは、こんなものじゃないぐらいの熱狂ぶりでしたが。
セッション録音でじっくりの第2番
一方で、ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83はアンドリス・ネルソンス指揮ウィーン・フィルハーモニーによる演奏で、2012年11月のウィーン楽友協会・大ホール(ムジークフェラインザール)でのセッション録音です。第2番の曲想もあるのですが、こちらのほうがよりじっくりと細部まで洗練された感じがします。グリモーのピアノの細かい打鍵もクリアに聞こえ粗さがありません。オーケストラがウィーンフィルに変わったことで特に弦がしなやかで美しくなり、この曲にピタリと合っています。ライヴ録音ではないので、第1楽章のピアノのソロでも落ち着いた演奏です。
ただ、ピアノもオーケストラも確かにうまいのですが、あまり個性的ではなく平凡に聞こえる気がしなくもないので、印象には残りにくい演奏かもしれません。
まとめ
エレーヌ・グリモーのカラフルなピアノと、アンドリス・ネルソンス指揮バイエルン放送響・ウィーンフィルという理想のパートナーとの協演で聴けるブラームスのピアノ協奏曲全集。確かにうまい演奏だとは思いますが、この曲だったら他にオススメしたい名盤があるので、オススメ度合いとしては星3としておきます。
オススメ度
ピアノ:エレーヌ・グリモー
指揮:アンドリス・ネルソンス
バイエルン放送交響楽団(第1番)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(第2番)
録音:2012年4月, ヘラクレス・ザール(第1番, ライヴ), 2012年11月, ウィーン楽友協会・大ホール(第2番)
スポンサーリンク
試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
コメントはまだありません。この記事の最初のコメントを付けてみませんか?