このアルバムの3つのポイント

ポリーニ&アバド DG録音全集
ポリーニ&アバド DG録音全集
  • ポリーニ/アバド&ベルリンフィルのコンビによるブラームスの協奏曲
  • ライヴ演奏のほとばしる情熱
  • 重厚感とスピード

近代最高のピアニストの一人、マウリツィオ・ポリーニはブラームスのピアノ協奏曲全集(といっても2曲だが)をドイツ・グラモフォンレーベルで3回録音してきた。

回数第1番第2番
1回目カール・ベーム指揮
ウィーンフィル
1979年
クラウディオ・アバド指揮
ウィーンフィル

1976年
2回目クラウディオ・アバド指揮
ベルリンフィル
1997年
クラウディオ・アバド指揮
ベルリンフィル
1995年
3回目クリスティアン・ティーレマン指揮
シュターツカペレ・ドレスデン
2011年
クリスティアン・ティーレマン指揮
シュターツカペレ・ドレスデン
2013年
マウリツィオ・ポリーニのブラームスのピアノ協奏曲録音

ポリーニのピアノも、大理石のように硬くて透明感のあるタッチの1回目、程よく丸みを帯びて力強い2回目、そして円熟味を増した3回目、とそれぞれに違いがあり、時代時代毎にポリーニの演奏スタイル・解釈になるほどと感じさせてくれる。

今回紹介するのは2回目に録音した全集で、盟友クラウディオ・アバドと、彼が首席指揮者を務めるベルリンフィルとのもの。アバドは協演者が多く、ピアノでもマルタ・アルゲリッチやアルフレート・ブレンデルとも協奏曲を演奏、録音してきたが、ポリーニとのコンビは一味違うと言っていいだろう。シカゴ響とのバルトークのピアノ協奏曲全集や、シェーンベルクのピアノ協奏曲、ノーノの作品など名演揃いで、特に近代音楽で一つの頂点を極めたと言える。また、古典派・ロマン派でもベートーヴェンのピアノ協奏曲全集、シューマン、そしてこのブラームスのピアノ協奏曲で録音を行っており、幅広い。

このブラームスのピアノ協奏曲は1995年と1997年のもので、どちらもライヴ録音。スタジオ録音とはまた違う熱気を感じられる。

ピアノ協奏曲第1番はアバドとベルリンフィルが1997年4月にウィーン演奏旅行をした際にウィーン楽友協会でライヴ録音されたもの。1991年にウィーン国立歌劇場の音楽監督を辞任したアバドにとって、ウィーンフィルの本拠地である楽友協会は古巣に帰ってきた気分だったのかもしれない。

ベルリンフィルらしく冒頭から重厚な響きで、そしてアバドらしくパッションに満ちている。絵の具の1つ1つの色をはっきり分けておらず、混ぜ混ぜにしているような感じなので少し輪郭がボヤっとした印象もあるが、それにしてもほとばしる熱情がすごい。

長い序奏の後にポリーニのキレがあるピアノが加わるが、打鍵には温かみがある。冷たいと言われたキャリア初期(1970年代)の特徴は薄れ、丸みを帯びた感じがする。ペダルはやや多めだが、高音や弱音の旋律まで美しいのがポリーニらしい。ただ、ライヴとは言え1997年のデジタル録音にしては音質がイマイチな感じで、ところどころボヤっとした響きになってしまう。会場で聴けた聴衆にはもっと感動的に聴こえたはずだろうが、少なくともこのレコーディングを聴く限りではちょっと距離を感じる。

第2楽章も慈愛に満ちてレチタチーヴォに富む美しい演奏だし、第3楽章は特に熱いパッションを感じる。

ピアノ協奏曲第2番は第1番に比べるとヴィルトゥオーソ性は抑えられていて、オーケストラとピアノの音色が融合するところに深みがある作品である。これはベルリンフィルの本拠地フィルハーモニーで1995年12月にライヴ録音されたもの。

柔らかいホルンのハーモニーで始まり、ポリーニの慈愛に満ちたピアノがそっと寄り添う感じ。この曲ではアバドの有り余る情熱が曲の足を引っ張ってしまっている印象。素朴が売りなのに派手派手しく厚化粧をしてしまったという表現だろうか。ベルリンフィルらしい重厚さはここでも健在。

この曲でも録音の質が若干イマイチなところがあり、大音量のところほど音が突っ張る感じが気になってしまう。

まとめ

ポリーニ、アバド&ベルリンフィルというドイツ・グラモフォンが誇る黄金トリオでのブラームスのピアノ協奏曲で、重厚感と情熱が溢れている。音楽賞を特に受賞していないのが意外なのだが、ブラームスのピアノ協奏曲、特に第1番を初めて聴くファーストチョイスには良いと思う。

オススメ度

評価 :3/5。

ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ
指揮:クラウディオ・アバド
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1997年4月, ウィーン楽友協会・大ホール(第1番, ライヴ)
1995年12月, ベルリン・フィルハーモニー(第2番, ライヴ)

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iTunesで試聴可能。

特に無し。



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