このアルバムの3つのポイント
- マリス・ヤンソンスとバイエルン放送響のストラヴィンスキーの『春の祭典』と『火の鳥』のライヴ録音
- 驚くほどクリアな音質で緻密に重なるハーモニー
- むき出しにした凶暴さとスケール
幻となった2018年のマリス・ヤンソンスの来日公演
2018年11月に予定されていた、首席指揮者マリス・ヤンソンスとバイエルン放送交響楽団の来日公演ですが、ヤンソンスの体調不良により、日本公演を含むアジア・ツアーの指揮者はズービン・メータに変更となりました。
マーラーの交響曲第7番、ストラヴィンスキーのバレエ音楽『春の祭典』、ピアニストのエフゲニー・キーシンとの協演によるリストのピアノ協奏曲など、3日間で豪華なプログラムを行う予定でしたが、初日のマーラーの交響曲第7番はモーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」とマーラーの交響曲第1番「巨人」へと変更され、2日目と3日目は据え置きに。
その幻となったヤンソンス&バイエルン放送響の来日公演に合わせてリリースされたのが、ストラヴィンスキー『春の祭典』、『火の鳥』の2曲のアルバム。
バレエ音楽『春の祭典』(1947年版)
『春の祭典』は2009年1月のミュンヘンのフィルハーモニー・ガスタイクでのライヴ録音。2010年代のヤンソンスの演奏はしっとりとした音楽でしたが、2000年代は爆発するような激しいところもありました。
バイエルン放送響らしい透き通ったサウンドですが、速いパッセージも難なく乱れることがない精緻さはさすがです。トラック11の「選ばれし生贄への賛美」では、ゆったりとしたテンポですが個々の楽器が織物のように重なり合います。
「乙女たちの踊り」、「敵の部族の遊戯」、「大地の踊り」では不協和音の弦の強烈な響きをむき出しにして狂暴さを出しています。ブルックナーの牧歌的な作品を演奏していたときとはあまりにも違う雰囲気に驚かされます。
1945年版を使った『火の鳥』
カップリングされている『火の鳥』は2016年11月のヘラクレス・ザールでのライヴ録音。R.シュトラウスの「アルプス交響曲」(2016年10月13-15日)やマーラーの交響曲第9番(2016年10月20-21日)の翌月の演奏です。
晩年のヤンソンスとあって、ビロードのように滑らかさが増しています。楽譜を深く読み込んできたヤンソンスは、ここでも魔術師のように色彩豊かに描いていきます。クリアな音質で細部まで良く聴こえます。
驚いたのはトラック24の「凶悪な踊り」。冒頭の一撃が突然、大音量でやって来るので、最初に聴いたときは心臓が止まるほどびっくりしました。続くトラック25「子守歌(火の鳥)」は一転して贅沢な美しさで堪能してくれます。
まとめ
音の魔術師、マリス・ヤンソンスが名パートナーのバイエルン放送響を指揮してライヴ録音した2曲のストラヴィンスキー。クリアな音質で細部まで緻密に重なりハーモニーが見事です。凶暴さをむき出しにし、心臓を震えさせる迫力もり、一筋縄ではいかないストラヴィンスキーの魅力を伝えてくれます。
オススメ度
指揮:マリス・ヤンソンス
バイエルン放送交響楽団
録音:2009年1月14-16日, フィルハーモニー・ガスタイク(『春の祭典』, ライヴ),
2016年11月14-17日, ヘラクレス・ザール(『火の鳥』, ライヴ)
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
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