だいぶ前のコンサートですが、まだ書いていなかったので今更ですが書きます。

7月にアラン・ギルバート指揮東京都交響楽団のブラームスの交響曲チクルスがありました。7/18と19に第1番と第2番がサントリーホールで、そして7/23と7/24に第3番と第4番が都響の本拠地での東京文化会館にて演奏されました。私は7/18と7/24の演奏会を聴いてきました。

ギルバートは2018年から都響の首席客演指揮者を務め、オケとの相性は良好。ニューヨーク・フィルとの交響曲第3番を聴いて予習すると、拍をしっかりと取っているのが伺えました。

午後公演のブラ1、ブラ2

まずは7月18日(金)の赤坂・サントリーホール公演から。平日の午後2時開演なので、仕事の有給休暇を取って聴きに行きました。

プログラムは

  • ブラームス: 交響曲第1番
  • (休憩)
  • ブラームス: 交響曲第2番

オケは第2ヴァイオリンが指揮者の右手にある対向配置で、ギルバートは指揮棒を持たず手だけの指揮、そして両曲とも暗譜でした。

序奏部ではヴァイオリンの高音とティンパニの強烈な打撃がよく聴こえるのですが、ヴィオラ、チェロの内声部があまり聴こえず。そしてコントラバスも弱めで重厚という感じもせず、透明感ある都響のサウンドとはいえ、スポンジがスカスカしたショートケーキみたいで「あれ?」と。

力強い激流で進み第1楽章提示部のリピートは省略して進んでいきます。第2楽章のコンマスによるヴァイオリン独奏は目立たないで和を重視する解釈からか、オケに埋もれてしまいます。イン・テンポで流れていく音楽ですが、第4楽章の再現部ではゆったりと間を置き、テンポを動かしたギルバート。そしてコーダで突然、都響がアメリカのオーケストラになったかと思うほど壮大に。4つの交響曲を通じて共通していたのですが、ギルバートは最後の楽章にクライマックスを持ってきてオケがフルパワーになります。ニューヨーク・フィルの首席指揮者もやっていたギルバートのエンターテイナーぶりを感じました。

休憩を挟んで、後半は交響曲第2番。ここでは第1楽章提示部の繰り返し有りで演奏。第2楽章はホルンとオーボエのソロがお互いを聴いてないのかな、ちょっと寄り添ってない感じがしました。第4楽章ではクライマックスを持ってきたギルバートがオケを壮大にドライブしていきます。

翌週は7月24日(木)夜の公演へ。場所は上野の東京文化会館。都響の本拠地ですね。プログラムは

  • ブラームス: 交響曲第3番
  • (休憩)
  • ブラームス: 交響曲第4番

まずブラ3ですが、第1楽章の冒頭で第1ヴァイオリンの中間列の奏者の音が小さくて第1列と6列だけしか聞こえなかったです。まだら模様なハーモニーになっていました。本調子ではなかったのですかね。文化会館は残響が少ないので、サントリーホールで聴くよりもドライな響きに。音が出ている間に消えていく、そんな儚げな響きでした。

ギルバートは一音一音を切って演奏させていて、予習したときに拍をしっかりと取っていたのが都響との生演奏でも感じました。第3楽章は映画「さよならをもう一度 (ブラームスはお好き?)」でも使用された印象的なメロディーですが、ギルバートは休符でしっかりと音を止めるので、余韻に浸らせてくれません。電車でうたた寝してしまってハッと目を覚ます、そんなちぐはぐな印象に。ここでも第4楽章はアメリカのオーケストラみたいにフルパワーに。

休憩を挟んでの後半のブラ4。第1楽章は1列目と2列目のヴァイオリンしか聞こえず、アンサンブルの調子は良くないのかなとここでも。透明感ある都響のサウンドは哀愁漂う第1楽章では合うと思っていたのですが、ギルバートは健康的に演奏させていたので予想は外れました。「ティ〜ラ〜 ターターン」という寄せては返す波のような提示部の第1主題は、休符をしっかりと取ることで「ティ〜ラ〜」「ターターン」と細切れで演奏され、ブラームスがまるでミニマル音楽のように思えてきました。

第2楽章でホルンが大きめな音で旋律を奏でるのですが、フルートが加わると静かになってしまって、ここ掛け合うところなのになぁ、と一人で拳を握りしめていました。第3楽章になるとカラフルな色彩になり、トライアングルがとにかくド派手。全てのハーモニーを凌駕する音量で鳴っていました。第4楽章ではギルバートらしくギシ、ギシと拍を強調して弾かせていましたが、トゥッティになると木管と低弦の音が聞こえなくなってしまうのが惜しい。高弦の美しさとティンパニーの荒々しさが強調されて、私の中ではビューティー&バイオレンスなブラームスでした。ヴィオラ、チェロ、コントラバスが相対的に小さめだったので、対向配置よりも標準配置にしたほうが良かったのでは?と思ったり。

評論家からは「ヒューマン」なブラームス

音楽評論家のレビューだと、「軽やかで人間的なブラームス」という評価。確かに重厚感はなく、健康的でしたね。

【日経新聞】アラン・ギルバート指揮都響 軽やかで人間的なブラームス (2025年8月7日)

ブラームスの交響曲チクルスで独創的な解釈を披露したギルバートと都響でした。都響の公式YouTubeチャンネルで、第2番第3番第4番のリハーサルの映像も観れます。

指揮: アラン・ギルバート
東京都交響楽団
演奏: 2025年7月18日, サントリーホール (第1番、第2番),
 2025年7月24日, 東京文化会館 (第3番、第4番)

Tags

コメントはまだありません。この記事の最初のコメントを付けてみませんか?

コメントを書く

Twitterタイムライン
カテゴリー
タグ
1976年 (21) 1977年 (16) 1978年 (20) 1979年 (14) 1980年 (14) 1985年 (14) 1987年 (19) 1988年 (15) 1989年 (16) 2019年 (22) アンドリス・ネルソンス (24) ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (86) ウィーン楽友協会・大ホール (60) エジソン賞 (19) オススメ度3 (81) オススメ度4 (122) オススメ度5 (160) カルロ・マリア・ジュリーニ (28) カール・ベーム (30) キングズウェイ・ホール (16) クラウディオ・アバド (24) クリスティアン・ティーレマン (18) グラミー賞 (29) コンセルトヘボウ (38) サントリーホール (16) サー・ゲオルグ・ショルティ (56) サー・サイモン・ラトル (23) シカゴ・オーケストラ・ホール (23) シカゴ・メディナ・テンプル (16) シカゴ交響楽団 (53) バイエルン放送交響楽団 (36) フィルハーモニー・ガスタイク (17) ヘラクレス・ザール (21) ヘルベルト・フォン・カラヤン (33) ベルナルト・ハイティンク (38) ベルリン・イエス・キリスト教会 (24) ベルリン・フィルハーモニー (33) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (68) マウリツィオ・ポリーニ (17) マリス・ヤンソンス (44) ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 (19) リッカルド・シャイー (21) レコードアカデミー賞 (26) ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 (46) ヴラディーミル・アシュケナージ (28)
Categories