このアルバムの3つのポイント
- ウィーンフィルとバーンスタインの「エロイカ」ライヴ録音
- 濃厚でゆったりとした葬送行進曲
- 交響曲全集がレコード・アカデミー賞の大賞を受賞
ウィーンフィルと交響曲全集をライヴ録音したバーンスタイン
1つ前の記事でウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるベートーヴェンの第九交響曲の録音を紹介しました。そこでレナード・バーンスタイン盤は最も熱量が高いと書いたのですが、まだ他の交響曲を紹介していなかったことに気付き、今回もバーンスタインのアルバムについて書きます。同じくベートーヴェンの「エロイカ」、交響曲第3番「英雄」です。
1978年1月にウィーン国立歌劇場でフィデリオを指揮したバーンスタイン。ウィーンでの熱狂的なバーンスタイン・フィーバーを感じる映像ですが、ウィーンフィルとベートーヴェンの交響曲全集もライヴ録音で進めていました。1978年2月に「英雄」を演奏しています。
かつて小学館から「ウィーン・フィル 魅惑の名曲」という冊子が刊行されれて、2週間に1回CDが入ったムックが届き全50回、約2年間の息の長い購読となりました。その第4回が「英雄」を取り上げていて、CDに選ばれたのがバーンスタインとのもの。この記事のトップにある写真はそのときのもので、今でも持っています。
濃厚でゆっくりとした葬送行進曲
第1楽章は「英雄」の持つ勇ましさとロマンティックさを併せ持った演奏。2小節の序奏は短めに、しかし力強く、そして伸びやかな提示部の第1主題が続きます。バーンスタインだからといって熱量が高いわけではなく、この楽章は割と抑えめ。第2楽章と第4楽章に重きを置いている印象です。提示部の短い第2主題はうっとりとするような美しさ。トラックの3分10秒あたりから第1主題に戻っていますが。ドイツ・オーストリアの慣習だと省略される提示部の繰り返しを、バーンスタインは楽譜どおり守っています。
個性的なのは第2楽章の葬送行進曲。悲しみを引きずる重々しい足取りのような、かなりゆっくりとしたテンポにしています。オーボエも第1ヴァイオリンもチェロも丁寧に旋律を奏でます。行進を表す3連符も弱いながらも存在感がある演奏。濃厚なハーモニーで全楽章を通じてバーンスタイン際立っています。
葬送行進曲の後の第3楽章はスケルツォ。第1楽章と同じ変ホ長調に戻りますが、バーンスタインとウィーンフィルは弦がスタッカートで刻むリズムをはっきりと出しつつ、フォルテッシモでは分厚いハーモニーで第1楽章の雄大さを彷彿とさせるようにしています。トリオのホルン三重奏は柔らかく温かい響き。フォルテでの襲いかかるような激しさとのトリオの静の対比が見事。
バーンスタインは勝利で終わるような音楽が得意だと思います、この第4楽章のフィナーレでも冒頭からバーンスタインらしさが全開。とてもイキイキとしています。トレモロで始まる第2主題がややテンポが速め。そして「プロメテウスの創造物」から引用したとされる主題はうっとりとするように美しいです。コーダは圧巻でプレストに入ると暴風のように勝利のファンファーレで吹き飛ばしていきます。
まとめ
バーンスタインがウィーンフィルと録音したベートーヴェンの交響曲全集から、エロイカを紹介しました。ゆったりとした濃厚な第2楽章の葬送行進曲、イキイキとした第4楽章のフィナーレなど、バーンスタインらしさが出ています。
オススメ度
指揮:レナード・バーンスタイン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1978年2月4-6日, ウィーン楽友協会・大ホール(ライヴ)
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
交響曲全集が1980年度の日本のレコード・アカデミー賞の大賞及び交響曲部門を受賞。1981年の米国グラミー賞の最優秀オーケストラ・パフォーマンスにノミネートされるも受賞ならず。
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