このアルバムの3つのポイント
- 鬼才クルレンツィスとムジカエテルナによるベートーヴェン・チクルス第2弾
- アルバムに交響曲第7番の1曲だけという強気
- 固定概念を覆す、軽やかで舞うようなアンサンブル
鬼才クルレンツィスとムジカエテルナによる最新のベト7
ギリシャ出身の指揮者、テオドール・クルレンツィス。今のクラシック音楽界で話題になって&物議をかもしている鬼才の指揮者が手兵のムジカエテルナとベートーヴェンの交響曲全集を開始しています。
以前の記事で第1弾の交響曲第5番「運命」を紹介しました。確かに今までに聴いたことがない新しい「運命」で、ベートーヴェンはこうあるべきという固定概念にとらわれない斬新な演奏でしたね。
そして第2弾が2021年4月にソニー・クラシックスからリリースされました。
強気のリリース
録音時期は「運命」と同じです。「運命」が2018年7月31日〜8月4日で、交響曲第7番が2018年7月31日〜8月8日ですので。
クルレンツィスとムジカエテルナの録音は、「運命」が31分、交響曲第7番が41分。両方合わせて1枚のCDに余裕で収まります。
ただ、ソニー・クラシックスも強気なのか、聴衆の反応を見て、なのか、わざわざCD1枚ずつの販売とし、リリース時期を1年間もずらしています。
2017年〜2019年に録音されたアンドリス・ネルソンス指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のベートーヴェン交響曲全集は、レコードアカデミー賞交響曲部門を受賞し、音楽雑誌のリーダーズチョイスでも1位に選ばれるなど日本では音楽評論家からも音楽ファンからも大人気でした。
ウィーンの伝統的なベートーヴェンの演奏と、対極にあるのがこのクルレンツィス&ムジカエテルナの取り組みでしょう。
ちなみに、ベートーヴェンの交響曲第7番は、「ベト7」という略称で呼ばれることもあります。社会的にフィーバーした「のだめカンタービレ」のドラマでも、指揮者の千秋先輩が「ベト7」を指揮していましたね。
軽やかで舞うように
「運命」も斬新な演奏でしたが、クルレンツィスとムジカエテルナのこの交響曲第7番も斬新です。間違いなく、ベートーヴェンの最新解釈です。
第1楽章の冒頭からふわっと浮き立っています。音が、軽い。これまでの重々しいベートーヴェンの音を期待していると肩透かしを喰らいます。
ムジカエテルナは元々、室内楽オーケストラだったということもあって、こういう軽やかで緻密なアンサンブルを得意とするのでしょう。
ドイツのオーケストラが重厚感を持たせて、欧米の名門オーケストラがシンフォニックな響きで、ウィーンフィルがウィーンならではのローカルなハーモニーで演奏してきたベートーヴェンの交響曲が、このクルレンツィスとムジカエテルナの手に掛かると軽やかでスッキリとした響きの交響曲に代わりました。
第2楽章では、これまでに聴いたことのないゾクゾク感があります。高密度のアンサンブルで、高弦の美しさの下で、低弦とティンパニがリズムを刻みます。
しがらみに囚われない
ただ、これはこれで良いと私は思います。長らくクラシック音楽を聴いていると、ベートーヴェンは「こう演奏すべき」という固定概念が、どうしても付いてしまいます。
だから、「決定盤はこれ」という議論になり、「この演奏は〇〇には及ばない」とか「〇〇を超えた」とかいう議論になってしまいます。
クルレンツィスとムジカエテルナの演奏を聴いていると、「こういう解釈もあるのか」と驚かされます。
ソニー・クラシックスにはガッカリ
だからこそ、ソニー・クラシックスのCDの注釈にはガッカリしてしまいます。
CDの帯にこう書かれています。
これでは、過去の演奏家が交響曲第7番の真実にたどり着けなかったと読み取れます。そんな往年の演奏を否定するような文章を、レコード・レーベル自身が書いてはダメでしょう。
クルレンツィスのファンであっても、この一文にはイラッとします。
まとめ
テオドール・クルレンツィスとムジカエテルナのベートーヴェン・チクルス第2弾。これまでに聴いたことのない斬新な解釈で、軽やかで舞うようなアンサンブル。固定概念を覆す新たなベートーヴェン像を提案しています。
オススメ度
指揮:テオドール・クルレンツィス
ムジカエテルナ
録音:2018年7月31日-8月8日, ウィーン・コンツェルトハウス
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【タワレコ】名作の最新解釈!クルレンツィス&ムジカエテルナ~ベートーヴェン:交響曲第7番試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
新譜のため未定。
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