鬼才クルレンツィスとムジカエテルナの革新的な「運命」(2018年)

ベートーヴェン交響曲第5番「運命」 テオドール・クルレンツィス/ムジカエテルナ(2018年)

このアルバムの3つのポイント

ベートーヴェン交響曲第5番「運命」 テオドール・クルレンツィス/ムジカエテルナ(2018年)
ベートーヴェン交響曲第5番「運命」 テオドール・クルレンツィス/ムジカエテルナ(2018年)
  • 鬼才クルレンツィスとムジカエテルナによるベートーヴェン・チクルス第1弾
  • アルバムに「運命」1曲だけという強気
  • 細部までこだわりを感じる革新的な演奏

クラシック音楽のCDはオンラインショップでもレビューが少ないです。超が付くほど有名な指揮者やピアニストが演奏したアルバムでも、リリースされて数年経ったものでもレビューが0というのも珍しくありません。

なので、商品ページに書いてあるレコード・レーベルやレコードショップの説明を見て、試聴してみて買うか買わないかを判断するようにしているのですが、発売元が書いてある説明は、買う気にさせるために良いことしか書いていないんですよね。私も買ってみてよく失敗しています。

また、「タワーレコード限定」とか、限定ものだとレビューが書かれることが多いのですが、たいてい星5つなんですよね。お蔵入りになった録音を再リリースしてくれたことに感謝、ということで、演奏自体の良し悪しはあまり書かれません。

そんな中、普通にどこでも買えるCDなのにレビューが多く付いているアルバムがあります。ギリシャ生まれでロシアを拠点に活動する指揮者テオドール・クルレンツィスと、そのパートナーのムジカエテルナというオーケストラが出したベートーヴェンの交響曲のアルバムです。

ベートーヴェン・チクルスの第1弾がこの交響曲第5番「運命」で、2020年4月にリリースされました。同時期に交響曲第7番も録音しているのですが、そちらは1年遅れの2021年4月にリリースされています。

「運命」のレビューでは「フルトヴェングラーやクライバーを超えた」という意見もあるほどで、だいぶ盛り上がっています。自分でも聴いてみたくなったので、半信半疑で買ってみることに。

ちなみに、私は音楽は勝ち負けでは無いと考えていますので、「〇〇を超えた」とか「〇〇には劣る」とかそういう表現は自分ではしないようにしています。

クルレンツィス/ムジカエテルナの「運命」のアルバムは、「運命」1曲だけしか収録されていません。80分以上も入る容量のCDに、わずか31分だけ。しかも半分以下の容量だからと言って安いわけではなく、値段は輸入盤が2,286円、日本盤が2,400円。普通のアルバム1枚の強気の値付けです。

実際に聴き始めると、冒頭から驚かされます。国内盤のBlu-spec CD2という高音質CDを聴いていますが、フレーズ毎に単調ではなくテクスチャが細かく、ディテールまではっきりと描かれています。

1小節ずつ、細かくデュナーミク、アゴーギグを施しています。

今まで見ていた大木 (たいぼく)の絵が、枝葉までくっきり描かれている、そんな印象です。

「運命」は重厚な響きの名演も多いです。ベルリンフィルやゲヴァントハウス管などのドイツの名門オーケストラだと重厚感がよく現れていますよね。ただ、このクルレンツィスとムジカエテルナの演奏はそういったベートーヴェンはこうあるべきという「固定概念」からは解放されていて、重厚感はそこまで感じません。

クルレンツィスもムジカエテルナも、ロシアを拠点にする指揮者とオーケストラであり、ベルリンやウィーンの演奏家ではないからこそ、こういう斬新なベートーヴェンが実現できたのだと思います。

ムジカエテルナは元々、古楽器も扱う室内楽オーケストラだったこともあり、この演奏でも細部までアンサンブルが合って凝縮した音を生み出しています。スタッカートでも鋭い切れもありますね。

こう聴いて第3楽章も満足気味に聴いていたのですが、第4楽章で私の中で暗雲が立ち込めました。「ああああ」と、うなり声のような低い声が結構聞こえてきます。クルレンツィスの声でしょうか。

「タタタタン」というところと楽器が奏でるのに合わせて、低い声が歌うように入ってくるので、正直、かなり不快です。

ただ、フィナーレはテンポが一気に上がって、怒涛のように巨大な渦を生み出しています。

話題になっていたので買ってみたテオドール・クルレンツィス/ムジカエテルナの「運命」。

これまでの固定概念の通り一遍には演奏せず、フレーズ毎に細かくデュナーミク、アゴーギグを施して、今までに聴いたことのない革新的な「運命」を聴けます。こんな演奏は初めて聴きました。

ただ、そこまで重厚感は無いので、ドイツのオーケストラが演奏する「運命」を好みの方には物足りなく聞こえるかもしれません。また、クルレンツィスのうなり声みたいなものが第4楽章で多く聞こえ、結構耳障りです。革新的な演奏なのは間違いないでしょうが、「運命」のベストかと言われると私は違うと思います。

オススメ度

評価 :4/5。

指揮:テオドール・クルレンツィス
ムジカエテルナ
録音:2018年7月31日-8月4日, ウィーン・コンツェルトハウス

iTunesで試聴可能。

特に無し。

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