このアルバムの3つのポイント
- コンセルトヘボウ管創立100周年とハイティンク退任に合わせたベートーヴェン交響曲全集
- オーソドックスな解釈の直球勝負
- レコードアカデミー賞受賞
ベルナルト・ハイティンクの名盤の一つ、ベートーヴェン
2019年に指揮活動から引退され、2021年10月に逝去されたオランダ出身の指揮者ベルナルト・ハイティンク。こちらの記事に追悼文を書きましたが、世界各国のオーケストラと音楽ファンから愛された名指揮者でした。
今日はまだ紹介していなかったハイティンクの名盤を紹介したいと思います。ベタですが、ベートーヴェンの交響曲全集です。
オランダ・アムステルダムのコンサートホール、コンセルトヘボウが竣工した1888年、ここを本拠地とするロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(当時はアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団)も設立されています。そして1988年が創立100周年のアニバーサリーだったのですが、この年を節目に1961年から首席指揮者のポジションにいたハイティンクは退任し、イタリア出身のリッカルド・シャイーが後任を務めました。
そのタイミングに合わせて、1985年から87年にかけてハイティンクとコンセルトヘボウ管はベートーヴェンの交響曲全集を完成させています。ハイティンクにとってはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団との1974年〜76年の録音以来の2度目に全集となります。
ハイティンクの過去の録音はフィリップス・レーベルでのもので、今はデッカ・レーベルからリリースされていますが、廃盤になってしまったものも多く、なかなかCDで手に入りづらい状況でしたが、タワーレコードが限定企画として色々と復刻させてくれ、ベートーヴェンの交響曲全集はロンドンフィル盤もコンセルトヘボウ盤もどちらも独自CDで復刻し、現在も安定して供給しています。
特にコンセルトヘボウ盤は日本のレコード・アカデミー賞を受賞していて、ハイティンクの名盤の一つと言って間違いないでしょう。
オーソドックスな解釈と豊かなコンセルトヘボウ・サウンド
この全集はハイティンクらしいオーソドックスな解釈と、コンセルトヘボウ管の豊かな響きが特徴で、安心して聴ける全集と言って良いと思います。作品が主役という質実剛健なハイティンクの解釈は、ややもすれば音楽評論家の方から「凡庸」と言われるリスクはありますが、1988年度のレコード・アカデミー賞ではこの全集が交響曲部門を受賞。良いものは良い、と日本の音楽評論家からもお墨付きをもらったアルバムとなりました。昨今のレコード・アカデミー賞の受賞盤の決定のやり取りを読んでいると、新味に乏しいとノミネートにすらならないので、以前の判断基準とは違ってきている風潮は感じます。最近は私自身もAmazonやレコードショップのオンラインサイトでの多数の購入者のレビューのほうを参考にしたりしていますが。
ハイティンクの指揮も充実していた時期と言えるでしょう。1960年代や70年代は尖った演奏もありましたし、2000年代以降は逆に自然体な演奏へと変化していったハイティンクの指揮ですが、80年代、90年代は名演が多い時期でした。このベートーヴェンでも、隅々まで精緻に描きながらも、トゥッティは覇気があって豊かなコンセルトヘボウ・サウンドの魅力が引き出されています。
9曲の交響曲と「エグモント序曲」の収録で、私が一番良いなと感じたのは交響曲第7番。スケールもあり、みずみずしさもあり、冒頭で残響が漂うように長めなのもコンセルトヘボウらしいなと思います。第9番「合唱付き」もオーソドックスで良いです。
まとめ
オランダの名指揮者、ベルナルト・ハイティンクの名盤の一つ、1980年代のコンセルトヘボウ管とのベートーヴェンの交響曲全集を紹介しました。良いものは良い、ですね。
オススメ度
ソプラノ:ルチア・ポップ
アルト:キャロライン・ワトキンソン
テノール:ペーター・シュライアー
バス:ロベルト・ホル
指揮:ベルナルト・ハイティンク
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
オランダ放送合唱団(合唱指揮:ロビン・グリットン)
録音:1985年10月(エグモント序曲), 10月21-23日(第7番),
1986年4月14, 15日(第5番), 4月21-23日(第6番),
1987年3月13, 14日(第1番), 4月27-29日(第2番, 第3番, 第4番),
1987年11月4, 11日(第8番), 12月4-10日(第9番), コンセルトヘボウ
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
1988年度の日本のレコード・アカデミー賞の交響曲部門を受賞。
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