このアルバムの3つのポイント
- 20世紀前半を代表する指揮者、ウィレム・メンゲルベルクとコンセルトヘボウ管のベートーヴェン
- 厚塗りのポルタメント、デュナーミク
- 歴史的な全集
20世紀前半の巨匠指揮者の一人、ウィレム・メンゲルベルク
20世紀前半のクラシック音楽界をリードした指揮者と言えば、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、アルトゥーロ・トスカニーニ、ブルーノ・ワルターなどの名前が挙がるでしょう。その中にウィレム・メンゲルベルクも入るでしょう。
1895年から1945年の長期間、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者を務め、1922年から1930年にはニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督も兼任しています。
1871年生まれ、1951年死没のメンゲルベルクは今年2021年が生誕150周年のアニバーサリーで、再び脚光を浴び始めています。
タワーレコードがナイスな企画
レコード・ショップのタワーレコードは単にCD・DVDなどを販売するだけではなく、独自の企画盤も多数リリースしています。廃盤になって入手困難なレコードも、タワレコが企画して限定販売していることも多々あります。
メンゲルベルクについては、2015年のタワレコのヴィンテージコレクション(品番#PROC-1893)で、メンゲルベルクによる1940年のベートーヴェンの交響曲全集がリリースされました。
音質は良くはないです
「1977年にLPで発売された際のアナログ・マスターを、ハイビット・ハイマスタリング(192kHz、24bit)による新規のデジタル化によってリマスターしたもので、従来のものよりも鮮明さが増し、ノイズが低減したことにより、近くで聴くような臨場感ある演奏が迫ってくる」というタワレコの説明だったので、私も2015年に買ってみましたが、音質は、ぶっちゃけ良くないです。
曲によっては、リールの回転音のようなものが聞こえたり、ブツブツと途切れる音もしたり、こもったような音質だったり。
たしかに現代の演奏では聴けないような、濃厚な味付けがされたベートーヴェンで、当時の時代ならでは演奏が聴けるのは貴重なこと。
トラック冒頭の「コツコツ」
曲によっては、楽章の冒頭で「コツコツ」という音がします。どうやらメンゲルベルクは、「さぁ始めるぞ」という合図で譜面台を指揮棒でコツコツ叩いてから指揮を始めていたそうです。解説を読まずに聴いたとき、分からなくて「冒頭から何かノイズがあるぞ?」と思ったものでした。
交響曲第3番「英雄」だけセッション録音
この交響曲全集は、どれも1940年にコンセルトヘボウ管弦楽団と演奏したものですが、第3番以外はライヴ録音です。第3番もライヴで収録されたそうですが、一部の録音に失敗したと言われていて、テレフンケンが所有していた音源を追加して交響曲全集としてまとめられました。
と言っても、第3番「英雄」だけ音質は良くないですね。特に第1楽章は冒頭から音が詰まってしまっています。
自由さ、濃厚なロマン
メンゲルベルクのこの全集には、現代では聴けない自由さや濃厚なロマンがあります。たまにはこういう古い演奏を聴くのも新しい発見があって面白いですね。
交響曲第9番 ニ短調 Op.125 「合唱付き」
味付け濃いめのドュナーミク
波のように揺らして、自由に演奏されています。強めのドュナーミクが効いていて、これを聴いた後だと後世のカール・ベームやヘルベルト・フォン・カラヤンなどの演奏が斬新に聴こえてきます。
めちゃくちゃ駆け足の第4楽章
第4楽章冒頭は驚きました。駆け出すように半音階の下降音の演奏が速いです。とろけるように優雅な第九の主題が奏でられます。大胆な省略をおこない、演奏は終盤へ。歌が入ると逆にものすごくゆっくりになります。
まとめ
現代では聴けない自由・ロマン漂う演奏で、得るものは多いとは思います。ただ、音質が悪すぎるのでオススメはしづらいアルバムです。
オススメ度
指揮:ウィレム・メンゲルベルク
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音:1940年4月14日(第1番), 4月18日(第5番), 4月21日(第2番, 第6番), 4月25日(第4番, 第7番), 5月2日(第9番), 11月11日(第3番), 11月28日(フィデリオ序曲), コンセルトヘボウ(第3番以外はライヴ)
スポンサーリンク
試聴
特に無し。
受賞
特に無し。
コメントはまだありません。この記事の最初のコメントを付けてみませんか?