このアルバムの3つのポイント
- ハイティンクとウィーンフィルのブルックナー・チクルスの最初の録音
- ウィーンフィルの美音
- 自然体の境地
ハイティンクとウィーンフィルの幻のブルックナー交響曲全集
オランダ出身の名指揮者、ベルナルト・ハイティンク(1929-2021)はアントン・ブルックナーの指揮者として定評があります。首席指揮者を長年務めたロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と交響曲全集を完成させた他、後期交響曲(7番から9番)を再録音しました。
さらにウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とブルックナー交響曲全集の企画を始めましたが、全集プロジェクトは頓挫してしまい、第3〜5番、8番と「テ・デウム」だけが録音されました。その中でも1988年12月の交響曲第3番「ヴァーグナー」や1995年1月の交響曲第8番は音楽賞も受賞しています。
また、それ以後も世界各国のオーケストラとブルックナーを演奏し、引退した2019年の最後のザルツブルク音楽祭ではウィーンフィルと交響曲第7番を演奏しました。
今回紹介する1985年2月の第4番「ロマンティック」はウィーンフィルとのブルックナー・チクルスの最初の録音となったものです。
空気のように自然体
ウィーンフィルの「ロマンティック」と言えば、1973年11月のカール・ベームとの録音があまりに名盤。最近ではウィーンフィルとブルックナーの交響曲全集を進めているクリスティアン・ティーレマンが2020年のザルツブルク音楽祭で指揮した「ロマンティック」がベームとは違うアプローチの劇的な演奏を生み出していました。
その点でハイティンク&ウィーンフィル盤はベーム盤に近いです。演奏はあくまでも自然体で、第1楽章から透き通るようなウィーンの美音で牧歌的に演奏されていきます。晩年になるとハイティンクはますます自然体になっていき、ときには行き過ぎて「無気力」と言われてしまう声もありましたが、この1985年の時点でハイティンクの自然体のスタイルが定着していたと言えます。
第2楽章のアンダンテ・クワジ・アレグレットでも、伸び伸びとしたウィーンフィルの楽器の響きが穏やかで癒やされます。第3楽章スケルツォ&トリオでは、2楽章までのゆったりとした雰囲気から一転してテンポにメリハリを効かせます。第4楽章フィナーレではこれまで溜めてきた力を一気に放出。テンポはがっちりとゆったりとしていますが、雄大に奏でられます。クライマックスでのじわじわと息の長いクレッシェンドで焦らずに頂点を作り出し(21分17秒あたり)、金管が声高に勝利の雄叫びを上げるようにしてフィニッシュ。トータルで69分ぐらいの長丁場ですが、最後まで聴き応えがあります。
まとめ
ハイティンクとウィーンフィルのブルックナー・チクルスの第1弾。自然体でウィーンの音色が美しい「ロマンティック」でした。
オススメ度
指揮:ベルナルト・ハイティンク
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1985年2月, ウィーン楽友協会・大ホール
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
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