このアルバムの3つのポイント
- ヤルヴィとトーンハレ管のブルックナー後期交響曲録音第2弾
- トーンハレでの澄み切った響き
- 国際クラシック音楽賞 (ICMA) 2024の最優秀交響楽部門を受賞
トーンハレ管の51年ぶりのブル8
今回もパーヴォ・ヤルヴィとチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団のブルックナーの録音を紹介します。第1弾の第7番、第3弾の第9番は既に紹介しましたが、いよいよ第8番です。
2022年9月、トーンハレでのセッション録音で、トーンハレ管がこの曲を録音したのは2回目。1回目は当時首席指揮者だったルドルフ・ケンペとで1971年のもの。それから51年ぶりの録音だそうです。ヤルヴィにとっても2012年のフランクフルト放送交響楽団以来10年ぶり。その時と同じノーヴァク版第2稿による演奏。
ブックレットの写真を見ると第2ヴァイオリンが指揮者の右手にいる両翼配置。さらに木管は中央奥に配置し、ホルン・ヴァーグナーチューバはさらに左奥、トランペットも右奥。そしてティンパニーが正面最奥というフォーメーション。かっちりとした安定感のある音作りで、ホールいっぱいに広がった団員たちがトーンハレの響きを活かしています。
記念碑的な作品で「まさにブルックナー作品の頂点」
ブックレットでヤルヴィのコメントが載っていますが、翻訳すると以下の通りです。「交響曲第8番は記念碑的な作品です。他のブルックナーの交響曲よりも。」そして「”The Eighth is truly a pinnacle” (第8番はまさに頂点)」と述べています。
第1楽章ではゆったりと伽藍洞のように響きわたります。ハ短調で重厚感を期待する方にはこの演奏は軽いと感じられるかも。混じりっ気のない透明感がトーンハレ管の魅力です。この8ヶ月前の第7番の録音では第1主題を遅くして第2主題を足早にして変化をつけていましたが、この第8番の第1楽章は小細工無し。しかし第2楽章のスケルツォでは対比をつけて軽やかにイキイキと。清流のようにさらさらと透き通った流れ。トリオではたっぷりとして足を休めるかのようで、かわいらしさも感じます。
第3楽章も極上のサウンドでどこまでも澄み切っています。ヤルヴィの個性が感じるのは第4楽章冒頭。nicht schnell (速くならないで)と指示がありますが、ヤルヴィはここを煽るように進めます。「ロシアのコサック騎馬隊が迫りくる」というブルックナーの手紙の内容を実現しています。
まとめ
ヤルヴィとトーンハレ管によるブル8。どこまでも澄み切った響きで堪能させてくれます。
オススメ度
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
録音:2022年9月, チューリッヒ・トーンハレ
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
国際クラシック音楽賞 (ICMA) 2024にて“Best Symphonic Recording of the Year”を受賞。
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