このアルバムの3つのポイント
- ヴァント最晩年のムジークハレ・ライヴ
- 慣れ親しんだ北ドイツ放送響と
- 慈愛に満ちた第8番
数あるヴァントのブルックナー
ブルックナーを得意としたドイツ出身の指揮者ギュンター・ヴァント(1912ー2002年)。録音についても数多く出しており、ケルン放送交響楽団との交響曲全集(1974ー81年)の他にも北ドイツ放送交響楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、NHK交響楽団などとのライヴ録音も多くます。
特に1982年から90年まで首席指揮者を務めた北ドイツ放送響とは退任後も良好な関係を築き、最晩年まで共演をおこないました。ヴァントの最後の演奏会で最後のレコーディングともなった2001年10月のブルックナーの交響曲第4番の演奏も、北ドイツ放送響とでした。
ブルックナーで最も人気の高い交響曲第8番についても、ヴァントの録音は数多くありますが、今回紹介するのは2000年4月30日〜5月3日にハンブルクにあるムジークハレ (現在の呼び方はライスハレ)での北ドイツ放送響とのライヴ録音。Profil レーベルの音源をAltus レーベルがライセンス化し、最新のリマスタリングをおこなって「不滅の名盤シリーズ」としてSACD ハイブリッドでリリースしているものです。
【キングインターナショナル】ギュンター・ヴァント 不滅の名盤[12]北ドイツ放送交響楽団編 ブルックナー:交響曲第3番&第8番
同時期の第8番の演奏としては、こちらの記事で紹介した2001年1月のベルリンフィルとのライヴ録音や、これから紹介する予定の2000年9月のミュンヘンフィルとのライヴ録音もあります。ヴァントらしく第8番のスコアはハース版の第2稿(1890年稿)で、解釈は同じながらもそれぞれのオーケストラの個性が出ていると思います。長年連れ添った北ドイツ放送響との演奏はまさに息の合ったコンビ。ヴァントのタクトに北ドイツ放送響が意図を汲み取って唯一無二の演奏をおこなっていきます。
慈愛に満ちた第8番
第1楽章から驚かされたのは、澄み切った世界。第1楽章の第1主題は戦うかのような力強い旋律ですが、ヴァントは肩の力を抜いて悟りを開くかのような境地で演奏していきます。第2主題では弦の美しさが光っていて恍惚な気分にさせてくれます。スタッカートのある第3主題も滑らかに穏やかに進み、音楽が溶け合うようです。慈愛に満ちた演奏といって過言ではないでしょう。
第2楽章もスケルツォは滑らかで、花開くかのような華々しさがあり、トリオでも豊かな響き。
第3楽章は奥深くて特に素晴らしいです。第4楽章はエネルギーに満ちていて、コーダでは長い長い旅路のクライマックスをゆったりと作り上げています。
ただ、欲を言えばミスがちょっと多いかなと。一発録音ではなく数回の演奏会の演奏をミックスしているとは思うのですが、第1楽章の9分27秒あたりや第4楽章の0分38秒で金管の連続音が滑ったりするなど全曲で3回ぐらいミスがありました。同時期のベルリンフィルとの第8番の演奏を聴くと、ミスらしいミスがないので、オーケストラのレベルの違いを感じます。
まとめ
ヴァント最晩年の北ドイツ放送響とのライヴ録音。長年連れ添ったコンビならではの息の合った演奏で慈愛に満ちています。
オススメ度
指揮:ギュンター・ヴァント
北ドイツ放送交響楽団
録音:2000年4月30ー5月3日, ハンブルク・ライスハレ (ライヴ)
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試聴
特に無し。
受賞
特に無し。
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