このアルバムの3つのポイント
- アルゲリッチとアバドの協演
- ルツェルン音楽祭2013春のライヴ録音
- レコード・アカデミー賞の大賞銀賞を受賞
晩年のアバドとオーケストラ
イタリア出身の指揮者クラウディオ・アバド(1933-2014年)は健康状態を理由に2002年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を退任してから、ルツェルン祝祭管弦楽団(2003年から芸術監督)やマーラー室内管弦楽団(1997年に設立)、モーツァルト管弦楽団 (Orchestra Mozart、2004年に設立)との関わりを深くしていきます。
特にルツェルン祝祭管はアバドの下で団員が新結成され、ヨーロッパの超一流の奏者が集まるドリーム・オーケストラに。ルツェルン音楽祭での演奏はアバド晩年の円熟味が味わえ、2003年から10年までのマーラーの交響曲選集のライヴ録音は最高の演奏の一つでしょう。
一方でモーツァルト管は2004年にアバドが設立したユース・オーケストラで、Wikipedia によると団員の年齢は18歳から26歳に制限されているそうです。アバドと2012年11月にシューマンの交響曲第2番をライヴ録音していて、アバド初にして最後のシューマンの交響曲録音となりました。
今回紹介するのはルツェルン音楽祭2013春でのマルタ・アルゲリッチとのモーツァルトのピアノ協奏曲第20番K466と第25番K503。2014年1月に亡くなったアバドにとっては最晩年の演奏の一つです。長年を協演を重ねたアバドとアルゲリッチの息の合った演奏で、音楽祭でも絶賛されたコンサートのライヴ録音で、日本のレコード・アカデミー賞の協奏曲部門と大賞銀賞を受賞しました。
協演の多かったアルゲリッチとアバド
ピアニストのアルゲリッチと協演の多かった指揮者がアバド。ショパンのピアノ協奏曲を始め、チャイコフスキー、プロコフィエフ、ベートーヴェン、など多く録音しています。
若かりし頃のアルゲリッチの溢れるパッションやアバドの情熱さがミックスされた演奏が多かったですが、このモーツァルトではより深みを増しています。第20番の第1楽章カデンツァでのアルゲリッチの即興的なピアノの特徴もありますが、緩徐部分のしっとりした演奏がこの作品に奥行きを出してくれます。
精巧なテクスチャ
驚くのはオーケストラの精巧なテクスチャです。第20番の冒頭を聴いてみると、弦が一様に演奏するのではなく、高弦と低弦で会話しているように演奏させています。まるでダイアログのようで、1974年のフリードリヒ・グルダとの協演でのアバド/ウィーンフィルの録音で単調すぎたオーケストラの演奏から、40年弱でアバド自身の解釈の変化もあるのでしょう。楽器の引き分けが非常に考えられています。
まとめ
アバド最晩年の指揮で精巧なテクスチャを聴かせるモーツァルト管と、盟友アルゲリッチのエスプリ溢れるピアノ。幸せなピアノ協奏曲の演奏でしょう。
オススメ度
ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
指揮:クラウディオ・アバド
ルツェルン祝祭管弦楽団
録音:2013年3月, ルツェルン・カルチャー・コングレスセンター(KKL、ライヴ)
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試聴
Apple Musicで試聴可能。
受賞
日本の2014年度レコード・アカデミー賞の大賞銀賞及び協奏曲部門を受賞。
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