このアルバムの3つのポイント
- マリス・ヤンソンスとウィーンフィルのザルツブルク音楽祭でのコンサート
- ヤンソンスらしからぬ「熱い」演奏
- R.シュトラウス、ヴァーグナー、ブラームスのドイツ・ロマン派のプログラム
マリス・ヤンソンスとウィーンフィルの熱演
ザルツブルク音楽祭2012では、8月4、5日にマリス・ヤンソンス指揮ウィーンフィルとの演奏が行われ、そのライヴ映像がDVD/Blu-rayとしてリリースされている。ヤンソンスが得意とするドイツ・ロマン派のプログラムで、
- R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」
- ヴァーグナー:ヴェーゼンドンク歌曲集 (独唱:ニーナ・ステンメ)
- ブラームス:交響曲第1番ハ短調Op.68
の曲目であった。それでは順に観てみよう。
R.シュトラウス「ドン・ファン」
R.シュトラウスは、マリス・ヤンソンスが最も得意とする作曲家と言われているが、この交響詩「ドン・ファン」はこの日の演奏の中でもやはり格別。ヤンソンスらしからぬ「熱演」であり、冒頭から指揮振りがかなりアクロバティックである。
ヤンソンスらしいまろやかなハーモニーで醸し出されて、ウィーンフィルの柔らかな音色で溶け合う感じである。Blu-rayで観たのだが、映像も高精細でかなりきれい。ただ、音質が少しゴワつく感じでせっかくの美音がこもった感じで聞こえるし、強いトゥッティのところでは音割れしているのが惜しい。
ヴァーグナー「ヴェーゼンドンク歌曲集」
次はニーメ・ステンメのソプラノ独唱で、ヴァーグナーの歌曲。ウィーンフィルのふくよかで柔らかな美しいハーモニーと力強いソプラノのニーナ・ステンメの歌声の対比がはっきり。
ブラームス交響曲第1番
後半のブラームスの交響曲第1番では、ヤンソンスの指揮台に置かれた楽譜は表紙を向けたままついに開かれることがなかった。この曲を指揮し尽くしているからだろう、全楽章とも暗譜だ。
ウィーンフィルのブラームスの交響曲の演奏は、ブラームスが存命のときから初演を行うなど、旧くから演奏は数多いのだが、演奏の特徴としては柔らかで美しいハーモニーだろう。ベルリンフィルが演奏すると同じ曲でも迫力と圧倒的な演奏になるものだが、ウィーンフィルは曲の素朴さと内面を引き出すような演奏に仕上がることが多い。このヤンソンスとの演奏でも、第1番第1楽章の序奏から重々しさはなく、まろやかでな美しさが沸き立つような感じ。ウィーンフィルらしい。第2楽章や3楽章では木管が特に良い。第4楽章ではレコーディングの音質の悪さが足を引っ張ってしまっていて、ホルン、トランペット、トロンボーンの強音が聞きどころの箇所が音割れしてしまっている。惜しい。
ヤンソンスのブラームスと言えば、バイエルン放送交響楽団との交響曲全集があるが、そのときの第1番はゆったりとしたテンポでスッキリとした響きで軽やかさすら感じた。このウィーンフィルとの違いがまた面白い。
まとめ
2012年はニューイヤーコンサートでもマリス・ヤンソンスが指揮台に立ったし、夏のザルツブルク音楽祭でもこうして共演し、ウィーンフィルとの蜜月の年だった。こうしてヤンソンスの熱演が映像で残ってくれているのがありがたい。
オススメ度
ソプラノ:ニーナ・ステンメ(ヴェーゼンドンク歌曲集)
指揮:マリス・ヤンソンス
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
演奏:2012年8月4, 5日, ザルツブルク祝祭大劇場(ライヴ)
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