このアルバムの3つのポイント
- ヘルベルト・フォン・カラヤン×ベルリンフィルのシェーンベルクの初期の2大傑作の録音
- カラヤン美学の境地
- ベルリンフィルの機能性
ヘルベルト・フォン・カラヤンとベルリンフィルによる新ヴィーン楽派作品
1973年から74年にかけて、ヘルベルト・フォン・カラヤンとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団は、シェーンベルク、ベルク、ヴェーベルンの作品を一気に録音しました。この時期は、マーラーの交響曲を初めて録音したことで話題になった第5番やメンデルスゾーン(1971年)・シューマン(1971年)の交響曲全集など、あまり演奏しなかった作曲家に積極的にチャレンジしました。
今回紹介するのは、シェーンベルクの「浄夜」または「浄(きよ)められた夜」とも呼ばれる作品Op.4と、交響詩「ペレアスとメリザンド」Op.5が収録されたCD。どちらもシェーンベルクの初期の作品で、後期ロマン派の官能的な美しさが見事ですが、後のシェーンベルクの無調や12音音楽の作品を知った後でこの初期の作品に戻ると、まるで絵画でキュビスムを生み出したピカソが初期の頃に「青の時代」、「バラ色の時代」と呼ばれる写実的な絵を描いていたことを思い出させるかのように、シェーンベルクもこういう時代があったんだなぁとしみじみ感じます。ヴァーグナー、マーラー、R.シュトラウスが好きな私としては、シェーンベルクもこの初期の作品が一番好みです。
カラヤン美学の境地、シェーンベルクの「浄夜」
さてこのカラヤン指揮ベルリンフィルによるシェーンベルクの「浄夜」は1973年12月に録音されました。本当に美しくて、さすがカラヤンですね。ここまでの美しさを引き出せるのは他にはマリス・ヤンソンスぐらいな気がします。ヤンソンスもカラヤンに師事したことがあるので、カラヤン美学が引き継がれていると感じるところもたまにあります。
交響詩「ペレアスとメリザンド」
カップリングされている「ペレアスとメリザンド」は「浄夜」の1ヶ月後の1974年1月の録音。なぜか「浄夜」に比べると音質が悪いのですが、ここでもカラヤンの研ぎ澄まされた感性とベルリンフィルの機能性を感じます。シェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」が日本で初演されたのは1972年1月になってからのようですが、初演を聴いて間もないの日本の方にとって、カラヤン×ベルリンフィルのレコーディングを聴いてどう思ったのでしょうか。
まとめ
ベルリンフィルの機能を活かして、近代曲でもこんなにすごい演奏ができるんだぞと示しているようなカラヤン美学の境地を感じさせる演奏です。
オススメ度
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1973年12月(浄夜), 1974年1月(ペレアス), ベルリン・フィルハーモニー
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
コメント数:1
これは本当に圧倒的としか言いようがありませんね。メータやジョナサン・ノット、ブーレーズなどを聴きましたがカラヤンの説得力はダントツ。この作品は凡庸な指揮者ほど訳の分からない結果となるのだと思います。
カラヤンに唯一対抗出来るとすれば、ラサール弦楽四重奏団によるもの(実際は6人で演奏しています)。シンプルが故に原曲のエッセンスだけを抽出している印象。実に味わい深く凄みすら感じさせてくれる演奏です。
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