このアルバムの3つのポイント
- サイモン・ラトルのロンドン響音楽監督就任コンサートのライヴ録音
- ストラヴィンスキーの三大バレエ曲を一気に
- ラトルらしいドライブ
2017年9月からロンドン響の音楽監督に就任したラトル
2018年6月にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を退任したサー・サイモン・ラトルは、その前年の2017年9月から並行してロンドン交響楽団の音楽監督に就任していました。首席指揮者ではなく、クラウディオ・アバド(1983ー88年在任)以来の音楽監督というポジションでの待遇でした。
しかし、2020年までの任期を3年伸ばし、良好な関係に思えたロンドン響とのコンビでしたが、期待とは裏腹にこちらの記事で紹介しましたが、2023年でロンドン響のポジションから降りて、以後は終身桂冠指揮者になる予定とのこと。コロナ下で演奏活動が制限された中、ラトルは祖国イギリスよりも、家族が今暮らしているドイツ・ベルリンでの暮らしを優先したいとの意向で、ベルリンに近いミュンヘンのバイエルン放送交響楽団の首席指揮者に2023年から5年間の任期で就任する予定です。
2017年9月の演奏会が今頃
以前FC2ブログで紹介しましたが、ラトルがロンドン響に就任したときの9月14日のバービカン・ホールでの演奏会は、”This is RATTLE (これがラトルだ)” というタイトルでBlu-ray・DVDの映像作品が2019年9月にリリースされていて、現代作品にエルガーのエニグマ変奏曲を組み合わせたプログラムでとても完成度の高いものでした。
ラトルとロンドン響の最近の演奏では、2020年12月のクリスチャン・ツィメルマンとのベートーヴェンのピアノ協奏曲全集がこちらの記事で紹介したとおり、2021年7月という早さでリリースされています。
ラトルとロンドン響の新録音がリリースされたということで早速買ってみたのが、今回紹介するストラヴィンスキーの三大バレエ組曲。ただ、演奏時期が2017年9月21日と24日で、DVDになった演奏会の翌週で、音楽監督就任コンサートの一環としておこなわれた演奏です。何で5年前のものが今頃新譜としてリリースされるのか、よく分かりません。
さらに斬新になったラトルのストラヴィンスキー
収録されているのは「火の鳥」(1909-10年)、「ペトルーシュカ」(1947年改訂版)、「春の祭典」(1947年改訂版)です。
ラトルのストラヴィンスキーと言えば、2012年11月のベルリンフィルとの「春の祭典」ライヴ録音が日本のレコード・アカデミー賞を受賞し、米国グラミー賞でのノミネートされる好評でした。また、音楽監督就任前のロンドン響と2015年1月に「春の祭典」を演奏したものがBlu-ray・DVDの映像でリリースされています。
ラトルにとって十八番と言える「春の祭典」ですが、この2017年9月の演奏では、ちょっと「うーん」と思うところもあります。ベルリンフィルとのときでは安心して聴けたのですが、ここでのラトルは技巧的過ぎる気がします。音量の急激な変化や、急加速や急ブレーキを伴うようなスタイルで、映画007「慰めの報酬」の冒頭のカメラワークみたいに、私は乗り物酔いするような気分になりました。ラトルの音楽監督としての意気込みが、これまでとは違う演奏にこだわったのでしょうか。オーケストラがロンドン響だけに、こうしたモダンな音楽はピタリとハマるのですが、「春の祭典」だけはちょっといただけないかなと。
「火の鳥」も全体的に弱音に寄り過ぎてモヤモヤしていますし、第4曲の「火の鳥の踊り」では色彩感は素晴らしいのですが、ドライブモードに入れて急に突っ走る感じもします。第5曲以降はうっとりとするような官能さがあって良いなと思いました。ややせっかちに始まる「ペトルーシュカ」も違和感がありました。
私が最近になってようやくストリーミング配信のサブスクリプションを始めたのは実はこのCDアルバムを買ったのがきっかけでした。楽しみにCDを購入して初めて聴いたときに「うーん」とショックを受けたので、今後はCDを買うリスクを減らそうと思い、まずはサブスクで聴いてから良いと思ったものだけ買おうと決意してサブスクに入ることにしました。
まとめ
サイモン・ラトルのロンドン響への音楽監督就任時の斬新なストラヴィンスキー。
オススメ度
指揮:サー・サイモン・ラトル
ロンドン交響楽団
録音:2017年9月21, 24日, バービカン・ホール(ライヴ)
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
新譜のため未定。
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