このアルバムの3つのポイント
- ザンデルリング壮年期のブルックナー
- コンヴィチュニー時代のゲヴァントハウス管の響き
- ゆったりとした包容力
ザンデルリングを聴き込んで2週間
以前の記事でレトロな演奏にハマっていると語って、1961年のフランツ・コンヴィチュニー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のブルックナーの交響曲第5番の録音を紹介しました。タワーレコードが企画しETERNA のオリジナルテープからベルリン・クラシックスが復刻させたもので、往年のゲヴァントハウス管の響きが高精細に蘇って驚いたものでした。
あれから2週間ほど聴き込んできたのが、本日紹介するアルバム。同じくベルリン・クラシックス×タワレコ、そしてゲヴァントハウス管の演奏で、指揮はクルト・ザンデルリング (1912年9月〜2011年9月)。
ザンデルリングはドイツ出身の指揮者で、ベルリン交響楽団 (1960ー77年)やシュターツカペレ・ドレスデン (1964ー67年)の首席指揮者やフィルハーモニア管弦楽団 (1972年ー)の首席客演指揮者、名誉指揮者も歴任しています。
ただザンデルリングと言われてもピンとこない方も少なくないと思います。日本語のWikipedia のページでも「活動の中心が旧東(ドイツ)側主体であったこと、録音に積極的でなかったためにメジャー・レーベルの録音が少ないことから、実力がなかなか知られなかった。」とあるほどです。私は聴いてみるとすぐに魅力に引き込まれ、シベリウスやショスタコーヴィチなどの録音にもすぐに手を広げてしまいました。
往年のゲヴァントハウス管を指揮した1963年の録音
今回紹介するのはザンデルリングが1963年6月にゲヴァントハウス管とセッション録音したブルックナーの交響曲第3番「ヴァーグナー」。採用されるスコアの版は圧倒的に第3稿が多いのですが、最近は2020年11月のクリスティアン・ティーレマンとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ではカットされすぎて意味不明になってしまった第3稿、そしてヴァーグナーの影響が濃くてブルックナーが自分を見失った第1稿の間である第2稿を選ぶ動きもあります。
ザンデルリングは1889年版の第3稿のスコアを使用していて、ブルックナー晩年の大作である交響曲第8番の手法が取り入れられてより壮大になった版。このゲヴァントハウス管とのスケールの大きな演奏だと第3稿が一番良かったのだと感じました。
スケールのある包容力
このザンデルリングとゲヴァントハウス管の演奏は一言で言うと包容力があります。ブルックナーの第3番がこれほどまで包み込むようなスケールのある作品だと改めて気付かされました。特に第2楽章アダージョは格別です。
第1楽章では11分44秒あたりでテンポをぐっと落として語りかけるようにしたり、第2楽章では最後の通奏低音をかなり長くしたり、第4楽章はトレモロをガシガシ弾くかと思ったら、牧歌的なフレーズではゆったりとして実に気持ち良く、さらに14分35秒からのコーダの圧倒感といったら。
リッカルド・シャイーが復活させ、アンドリス・ネルソンスが引き継いだ今のゲヴァントハウス管のサウンドは重厚で荒々しさもありますが、この60年代のコンヴィチュニー時代のゲヴァントハウス管の響きは筋肉質でもありながらとんでもない美しさも持っていて、すごい面白いです。
音質は致し方なし
ただ、音質面ではややマイナス。タワレコの商品説明でも「現況での最善の復刻であることを予めお知らせいたします。」とあるとおり、マスターテープに傷があるのか、音質が安定しないところがあります。
第1楽章の冒頭では金管がやや強すぎる感がありますし、第3楽章の入りでは、クレッシェンドして音が少しこもる感じがします。不思議なのは第4楽章の9〜10秒あたりで急に二段階ぐらい音量が大きくなるところで、滑らかなクレッシェンドで来たのが急にガッタンと溝ができてしまったような音質になってしまっています。
まとめ
ザンデルリングが壮年期にゲヴァントハウス管と録音したブルックナーの第3番。包容力があってスケールが大きくまた細部のこだわりが感じるアルバムです。
オススメ度
指揮:クルト・ザンデルリング
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
録音:1963年6月24-27日, ライプツィヒ・ハイラント教会
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。
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