シューマン交響曲全集 ヴォルフガング・サヴァリッシュ/シュターツカペレ・ドレスデン(1972年) アイキャッチ画像

クラシック音楽の醍醐味が聴き比べ。同じ曲でも演奏家が違うとこんなにも違うものなのかと驚かされてばかりで、私も管弦楽曲はなるべく色々な指揮者やオーケストラで聴くようにしています。そしてようやくドイツ出身の指揮者ヴォルフガング・サヴァリッシュ (1923年-2013年)を紹介するタイミングになりました。歌劇場の首席指揮者や音楽監督を歴任した他、ウィーン交響楽団スイス・ロマンド管弦楽団、そしてフィラデルフィア管弦楽団のオーケストラのシェフにも就いたサヴァリッシュ。日本でもNHK 交響楽団の桂冠名誉指揮者も務め、生で演奏する機会を耳にしたファンも多いでしょう。

ヴォルフガング・サヴァリッシュ (Wikipediaより)
ヴォルフガング・サヴァリッシュ (Wikipedia より)

「いぶし銀」指揮者の一人

この頃取り上げているオトマール・スウィトナーフランツ・コンヴィチュニークルト・ザンデルリングもそうですが、今回のサヴァリッシュも「いぶし銀」指揮者としてレコード芸術2021年10月号で紹介された指揮者。上記3人は旧・東ドイツの指揮者ですが、サヴァリッシュは旧・西ドイツのいぶし銀指揮者として記載されていて、「カペルマイスター的伝統の最後の継承者的な存在」として「サヴァリッシュの主なレパートリーは、フルトヴェングラーの伝統、すなわちドイツの初期ロマン派から後期ロマン派の音楽にあった。一方、その演奏スタイルは作品構造の明晰さ、音響のバランスやオーケストラ声部の冷静なコントロールによって特徴付けられる。」と書かれています。

今回紹介するのはそのサヴァリッシュの代表的な録音、ロベルト・シューマン交響曲全集です。1972年9月に聖ルカ教会でシュターツカペレ・ドレスデンとセッション録音したもの。以前、ベルナルト・ハイティンクロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のシューマンの全集を紹介した際にオススメに入れたのがサヴァリッシュ盤で、私は図書館で借りたCD で聴いて良いなと思い、その後様々な演奏家のシューマンを聴き比べてきたのですが、重厚すぎる音響に違和感があったり、優雅すぎる音楽だとまた違う。結局はサヴァリッシュ盤が強く思い出に残っていて、今回CD を買い直しました。

現在2種類が流通していて、輸入盤のCD 2枚組は4つの交響曲と「序曲、スケルツォとフィナーレ」Op.52がカップリングされています。もう一つは国内盤のSACD ハイブリッドの3枚組で、こちらにはさらに劇音楽「マンフレッド」Op.115 の序曲が追加されています。私は輸入盤CD で聴いています。

どちらも交響曲のトラックの順番が第1番→第4番→第2番→第3番の順。交響曲第4番が改訂されて出版されたのが4つ目とはいえ、オリジナル版が作曲されたのが第1番と第2番の間の時期という経緯を踏まえたトラック順になっていると考えられます。

このアルバムの3つのポイント

シューマン交響曲全集 ヴォルフガング・サヴァリッシュ/シュターツカペレ・ドレスデン(1972年)
シューマン交響曲全集 ヴォルフガング・サヴァリッシュ/シュターツカペレ・ドレスデン(1972年)
  • サヴァリッシュの代表的な録音
  • ドレスデンのいぶし銀
  • 侘び寂びと香り

みずみずしさと侘び寂び

驚くのはみずみずしさと侘び寂び、そして適度な軽さ。第1番「春」を例にとっても第1楽章のみずみずしさや、第2楽章のラルゲットでの侘び寂びのある美しさには心打たれます。この時期のドレスデン独特の響きも相まって、唯一無二の演奏になっています。また、第4番の第3楽章スケルツォでは、シャキシャキとしたレタスのような新鮮さが見事。

シュターツカペレ・ドレスデンのシューマンの全集はこれ以外にもジュゼッペ・シノーポリ (1992ー93年)、クリスティアン・ティーレマン (2018年)の録音もあり、特にシノーポリのは評判も高いですが、このサヴァリッシュとの録音もいつまでも色褪せないでしょう。

みずみずしさと侘び寂び、そして適度な軽さもあるサヴァリッシュとシュターツカペレ・ドレスデンのシューマンの交響曲全集。私の愛聴盤です。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:ヴォルフガング・サヴァリッシュ
シュターツカペレ・ドレスデン
録音:1972年9月1-12日, ドレスデン聖ルカ教会

Apple Music で試聴可能。

特に無し。

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