ブルックナー交響曲第5番 フランツ・コンヴィチュニー/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(1961年) アイキャッチ画像

このアルバムの3つのポイント

ブルックナー交響曲第5番 フランツ・コンヴィチュニー/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(1961年)
ブルックナー交響曲第5番 フランツ・コンヴィチュニー/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(1961年)
  • 旧・東ドイツの顔、フランツ・コンヴィチュニー
  • 首席指揮者を務めたゲヴァントハウス管との晩年の演奏
  • 恰幅のあるブルックナー

聴き放題は便利だけど

定額の音楽配信でいつでもどこでも音楽が聴き放題になり、すごい時代になりました。私はApple Music のサブスクに入っていますが、「クラシック」のジャンルをスマホでタップすれば、クラシック音楽の最新の録音も次々と聴けるようになっています。無名・有名の演奏家に関わらず、何回聴いても費用は掛からないので、聴けば聴くほど得になるので新しいものを片っ端から聴いているのですが、演奏レベルも高くて音質も申し分なく良いのですが、何か物足りない気分に。

そしてレトロな演奏を掘り起こそうかなと思い、タワーレコード (タワレコ)・オンラインで1時間ぐらいCD を検索していて見付けたのが今回紹介するアルバム。フランツ・コンヴィチュニー (Franz Konwitschny)がライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団を指揮した1961年6月に録音したブルックナーの交響曲第5番です。

モラヴィア生まれ(1901年〜1962年)のコンヴィチュニーは冷戦時代の旧・東ドイツで活躍した指揮者で、1949年から62年までゲヴァントハウス管の首席指揮者を務めました。東ドイツを代表する指揮者で、1962年7月にコンヴィチュニーが亡くなった際には東ドイツ政府が国葬するほどの重要人物でした。

こちらの記事ルドルフ・ケンペの『ローエングリン』の録音を紹介したときに触れましたが、レコード芸術2021年10月号でいぶし銀の指揮者特集をしていて、その中に東ドイツの指揮者が多くいます。コンヴィチュニーもその一人で、『東ドイツの”顔”的存在 演奏もその意味で王道』と見出しが付いています。

今回紹介するブルックナーの録音は1961年6月の演奏なので、亡くなる1年前の晩年のもの。ちなみにこの年(1961年)の4月にゲヴァントハウス管と初来日を果たし、ベートーヴェンの交響曲チクルスを演奏しています。

アナログ時代の埋もれた名盤を復活させるタワレコの独自企画盤シリーズがあり、今回紹介するコンヴィチュニー盤もタワレコとベルリン・クラシックス・レーベルがETERNA のオリジナルのアナログテープをリマスタリングして、SACD ハイブリッドで2020年8月にリリースしています。

先ほど同じレコ芸2021年10月号に『仕掛け人に聞く!「復刻技術革新」と「源流回帰」の潮流―なぜ「往年の名指揮者」に注力するのか?』という記事があり、タワレコの商品開発部兼バイヤーの方が記事を書いていますが、コンヴィチュニーのこのアルバムは「ETERNA のテープは他のレーベルと比較しても厳密かつ良い条件下で保管されており、経年変化に強かったことも幸いしました」と述べていて、「従来の2 枚組CD とはSN 比やレンジ、解像度など全てにわたって別物と言っても良い位で、音離れも良く余韻も豊かです。」と語るほどの出来栄え。

実際に聴いてみると、高音質で蘇っていて、60年代の演奏なのにまるで耳元で鳴っているかのようなリアルなサウンドです。音質で気になったと言えば第3楽章でトリオが終わって再び冒頭のスケルツォが繰り返される12:10あたりで少し割れてるぐらいです。

恰幅のある堂々たるブルックナー

1950年代、60年代は名指揮者とオーケストラによる個性的な演奏が多く、名盤を掘り起こすのが楽しいのですが、このコンヴィチュニー盤はさすがだと思いました。全体として恰幅がある演奏で、堂々たる響き。

第一楽章はトランペットが強烈に鳴っていて、まるでアメリカのオーケストラかと思うかのようなパワフルさ。特に7:44あたりや第4楽章の24:18あたりが最も力強いファンファーレになっています。現在の重厚で荒々しいサウンドのゲヴァントハウス管が1960年代にはこのような伸びがあって度量の大きい響きをしていたのは新しい発見。さらに注目すべきは弦のトレモロで、8:33あたりから長く続く弦の細かい動きが繊細なヴェールのような効果を生み出しています。

第2楽章はオーボエが切なさを誘うのですが、金銭的に恵まれない状況だった作曲当時のブルックナーが、この交響曲をこの楽章から書き始めたことを思い出しました。3:18以降の総奏では音質が良く楽器それぞれの動きが鮮明に分かります。

東ドイツの顔、コンヴィチュニーが晩年に指揮したブルックナー。堂々たる恰幅のある演奏で、60年以上前の録音ながら鮮明に蘇っています。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:フランツ・コンヴィチュニー
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
録音:1961年6月26ー28, 30日, ライプツィヒ・コングレスハレ

Apple Music で試聴可能。

特に無し。

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