このアルバムの3つのポイント
- リッカルド・シャイー2度目のシューマンの交響曲全集
- マーラー編曲版を使用
- ゲヴァントハウス管のサウンドを蘇らせたシャイーの手腕
リッカルド・シャイー2度目のシューマンの交響曲全集
指揮者リッカルド・シャイーは1988年から1991年に当時首席指揮者を務めていたロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮してシューマンの交響曲全集を録音しています。シャイーはこのときまだ35歳〜38歳。若かりしフレッシュさもありますが、現在のような深みはまだ感じられませんでした。
2005年からライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のカペルマイスターに就任したシャイーは、ミラノ・スカラ座の音楽監督に移る2016年まで、その任に就きました。世界最古のオーケストラのサウンドを復活させたとして、シャイーの手腕は高く評価されています。
マーラー編曲版で
シャイーはゲヴァントハウス管とベートーヴェンの交響曲全集、ブラームスの交響曲全集も録音しましたが、シェフになってからすぐに取り掛かった全集がシューマン。このときはグスタフ・マーラーが編曲したスコアを使っています。
シャイーとゲヴァントハウス管はマーラーの作品でも素晴らしい演奏を聴かせてくれましたが、そのマーラーが指揮者としてシューマンの作品を演奏するときにオーケストレーションをアレンジしたのがマーラー編曲版。
最近はオリジナル志向が強いのでマーラー編曲版での演奏は珍しいですが、かつては名指揮者のアルトゥーロ・トスカニーニもマーラー編曲版で演奏していたようです。
2006年と2007年に録音されたこのシューマン交響曲全集のアルバムは話題になりましたが、10年以上経過した今では廃盤に。再発売もまだされていないので、CDでは入手困難になっています。iTunesやストリーミングでは聴けます。
重厚感とフレッシュな情熱
シャイーがゲヴァントハウス管から引き出したのは重厚感。ドイツの名門オーケストラのサウンドが、シャイーが着任することによって活性化されたように思えます。そしてシャイーはオペラでのキャリアも長いので、ドラマティックな演奏が得意です。
コンセルトヘボウ管時代は、正直「無難」な演奏が目立ちましたが、ゲヴァントハウス管に移ってからは殻を破ったかのように、ほとばしる情熱をスパイスしています。それが近年のルツェルン祝祭管弦楽団の演奏でも効果を発揮しています。
4つの交響曲ともイキイキとしていて、演奏する喜びに溢れています。コンセルトヘボウ管のときはお硬い演奏で自発性が薄い気がしましたが、ゲヴァントハウス管はシャイーとのコンビを喜んで演奏している、そんな感じが伝わってきます。
マーラー編曲版ということで、例えば交響曲第1番「春」の冒頭などあからさまに違うところもありますが、全体的にはオーケストレーションがスッキリとしています。溢れんばかりのロマンがシューマンの良さだと思うので、このゲヴァントハウス管の重厚感あるサウンドでオリジナル版を録音してくれたらなお良かったのにと思いました。
まとめ
リッカルド・シャイーが巨匠への道を歩み始めた、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団との演奏。シューマンの交響曲をマーラー編曲版を使って伝統と革新を融合したような演奏です。あわよくば、シューマンのオリジナル版でこのコンビで録音して欲しいところです。
オススメ度
指揮:リッカルド・シャイー
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
録音:2006年8月30日-9月9日(第2番), 10月26-28日(第4番), 2007年2月13-16日(第1番), 5月30日-6月2日(第3番), ライプツィヒ・ゲヴァントハウス
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廃盤のため無し。
試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
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