このアルバムの3つのポイント
- ベームとウィーンフィルによるブルックナーの交響曲第3番
- 素朴で実直
- デッカ・サウンドとゾフィエンザールで
ベームとウィーンフィルによるブルックナー
オーストリア出身の指揮者カール・ベーム(1894-1981年)。ドイツ・オーストリア音楽を得意とし、モーツァルトやシューベルト、ベートーヴェンなどで根強い定評があります。派手さはないですが、小細工せずに音楽に向き合う姿勢は安心して聴くことができます。
アントン・ブルックナーについては交響曲を全曲は演奏していませんが、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と第3番「ヴァーグナー」(1970年9月)、第4番「ロマンティック」(1973年11月)、第8番(1976年2月)、第7番(1976年9月)があります。特に第4番は日本のレコード・アカデミー賞の交響曲部門と大賞(1974年度)を受賞したほどの、ベームの名盤の一つです。
第3番と4番がデッカ・レーベルでの録音でデッカが所有していたウィーンで音響の良いゾフィエンザールだったのに対して、第7番と8番はドイツ・グラモフォン・レーベルで場所もムジークフェラインザールに変わりました。これはウィーンフィルがデッカと契約があったためで、ヘルベルト・フォン・カラヤンも1960年代のウィーンフィルとの録音はデッカでしたね。
ヴァーグナーに献呈された交響曲第3番
第3番「ヴァーグナー」はブルックナーの交響曲で人気の一つで、副題のとおりブルックナーが敬愛するリヒャルト・ヴァーグナーに献呈した作品。第1楽章が下降する弦の旋律の上にトランペットの第1主題が始まる雄大な作品。そして第2楽章アダージョでの美しさ、第3楽章の引き締まったスケルツォ、第4楽章の爽快なフィナーレとい交響曲らしい形式もブルックナーの中でより熟成されてきました。
1873年に完成されましたが、ウィーンフィルに楽譜を送ったものの演奏されないまま終わってしまい、ブルックナーらしく1877年に改訂をおこない第2稿として完成。しかし「指揮がろくにできない」ブルックナー自身が指揮を担当することになったり、盛り盛りの演奏会の最後に演奏されて聴衆が聴き終えるのを待てなかったり、と色々重なってウィーンフィルによる初演は失敗。さらに3回目の改訂を1889年に完成させ、これが第3稿と言われます。
ブルックナーのどの版を使うかは学者による研究成果や、演奏家の意向に依り、第2稿を使ったのはサー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1992年)、ベルナルト・ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1963年、FC2ブログ)、同じくハイティンク指揮ウィーンフィル(1988年)、クリスティアン・ティーレマン(2020年11月)などがありますが、第3稿を使うのが多いです。ベームが使ったのも第3稿(1889年版)のノーヴァク版。
素朴で実直
ウィーンフィルの第3番の録音はハイティンク、ティーレマンなどがありますが、まろやかなウィーンの豊穣なハーモニーで演奏されています。
その一方で、このベームとの演奏は質素というか素朴で実直な感じがします。ブルックナーを足しも引きもしない、ありのままの姿という印象。第1楽章でもぎこちなく音楽を進め、響きを敢えてまろやかにしていないようです。決して器用ではなかったブルックナーのらしさが出た感じ。テンポも落ち着いていて、途中でルバートすることもありません。それでいて第2楽章ではうっとりするほど美しいのですが、第3楽章や第4楽章でもゆっくりとしたテンポで進んでいきます。最後までじわじわと熱量を帯びていく流れで、あまりドラマティックにはしていません。
奇をてらわないのがベームの良さですが、交響曲第4番「ロマンティック」での柔らかい牧歌風でウィーンの豊かな響きがあったのに対して、この第3番は少し物足りなさも感じるかもしれませんね。
まとめ
ベームがウィーンフィルと録音したブルックナーの「ヴァーグナー」。素朴で実直です。
オススメ度
指揮:カール・ベーム
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1970年9月21ー23日, ゾフィエンザール
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。
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